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第442話 ゴブリン討伐

 ゴブリンが小躍りしているのか、落とし穴の上を橋渡っている倒木に積もった雪が頭上に降って来て思考を邪魔する。


「コンナコテンテキナワナニハマルバカダッタケド、ウデップシハツヨカッタシ、シンカポイントモタマルカモ! ハヤクヒトガタニシンカシテ、モンムスハーレムヲ……」


 妄想を垂れ流していたゴブリンの視線が、音もなく落とし穴から上昇した俺の視線と交わる。緑の肌でも分かる程青ざめながら、倒木の上で硬直したゴブリンがガクガクと震え出した。


「泳がせてみたが意味が無かったな」

「ナ、ナ……!?」


 ゴブリンの視線がゆっくりと俺の足元へと移り、俺が立っている氷の足場を見つけた瞬間唾を飲み込もうとしたのか、汚い嚥下音が鳴る。


「コ、コロ、コロサナイデ!」

「ゴブリンの巣は存在しないんだな?」

「ッ……! ゥ……」

「先程まであんなに元気だっただろう、どうしたんだ?」

「チ、チガ……コレ、ハ」

「はぁ……」


 苛立つ気持ちをそのまま魔力に乗せると、魔力の揺らぎを感じ取ったゴブリンの体がびくりと揺れる。


「ヒッ、タスケテ……!」


 薄緑色のゴブリンの足を伝って倒木に滴った液体が、冷たい空気触れ不快なアンモニア臭のする湯気を放つ。


「デ、デキゴコロ、ダッタンダ! ハヤクシンカ、シタクテーー」


 ぐだぐだと言い訳を連ねているが……これ以上聞いても時間の無駄だな。


「ウッ!?」


 俺が氷の足場を落とし穴の淵まで移動させている隙に逃亡を図ったゴブリンが、気付かれないように凍らせた倒木の上で滑り転倒した。


 なんとか片手で枝を掴んで落とし穴に落ちてしまうのを防いでいるが、あの調子なら落ちてしまうのは時間の問題だな。


「ヤ、イヤダ!! タスケテクレ!!」

「……」

「タノム!! ナンデモイウコトヲキクカラ!!」

「……今まで何人殺したんだ?」

「エッ……!?」


 落とし穴の外周を歩きながら、命懸けで倒木の枝に捕まるゴブリンと目が合う位置まで移動する。


「ホ、ホントニコンカイノハデキゴコロデ、ダレモコロシタコトガナイ!!」

「俺みたいに『話が分からない』相手はどうしたんだ」

「ニ、ニゲタ! コロシテナイ!」

「……それにしては随分と質のいいナイフを持ってるな」

「ア……」


 俺が落とし穴の底に視線を落とすと、そこに何があるのか思い出したのかゴブリンが更に焦り出す。


「チガウ、ゴカイダ!! コノアナハ、タマタマミツケタダケデ、オレハダレモコロシテナイ!!」

「さっきの言い振りからして、仲間に指示を出して殺させた場合でも経験値が稼げて、直接手を下さずに罠で殺しても経験値を得られるんだろう? 嘘をつくならーー」


 見えるように水球を生成して浮かべると、血眼になった瞳を涙に濡らしながらゴブリンが叫び始める。


「サイキンハコロシテナイ!! ソレニ、シカタナカッタンダ!! マモノヨリモ、ニンゲンノホウガ、ケ……」

「……け?」

「ケイケンチガオイシカッタカラーー」

「クズが」

「ギャァァアアアアアアア!!!?」


 放った水球がゴブリンの命綱だった左腕を千切り、聞くに耐えない悲鳴を上げながらゴブリンが落とし穴の底に落ちていく。


 鈍い衝突音がした後穴の底を覗くと、先程落とし穴に落ちた時に見た冒険者達の死体の上で踠いている。運悪く致命傷を避けてしまったのか、木製の槍に腹部を貫かれたまま必死の形相でこちらを見上げながら叫び出した。


「イ、ヤダ、シニ……! シニ、タク……ナイ!!」

「それはお前が嵌めた冒険者達も同じだっただろう……」


 まだざっくりとしか確認していないが……落とし穴の底にある遺体の数と、地面に染み込んだ血液や投げ捨てられた装備の数が合わない。今確認できているよりも多くの人間がこのゴブリンの犠牲になっているはずだ。


 女性用の装備が捨てられているのに男の死体しか見当たらないのは……止めよう、今はこいつをどうするのかを考える事を優先しよう。


 『最近』は殺してないと言っていたな。確かに穴の底の遺体は、風化具合から死後数日程度じゃない事が専門家ではない俺でも分かる。ただ、遺体を移動させている可能性も零じゃない……。


 出来ればゴブリンが今回の依頼の調査対象だった行方不明者と関係ない確信を得たいがーー。


「ゴボッ……! ナン、デモス、スルカラ!」


 こうなってしまったらもう何を聞いても意味はなさそうだな。助かる為なら、行方不明者と関係なくても自分が殺したと自供するだろう……。


「……クソ、まだ呪力に引っ張られてるのか? 易々と殺すべきじゃ無かったかもしれない」

「ジャ、ジャア! ダズ、ケ……テベッ!?」


 どこにそんな力が残っていたのか分からないが、首を大きく傾け頭上から降らした氷槍が頭を貫くのを逃れたゴブリンが信じられないものを見るように俺を見つめる。


「ナンデ……!? オレハ、ヒ、ヒドダゾ……! コノヒドゴロジーープギャッ!?!!」


 改めて生成した氷槍に頭部を貫かれたゴブリンの身体が数秒激しく痙攣した後、急激に動きが弱まっていき数秒後には完全に動かなくなった。


「人殺しか……お互い様だろう」

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