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第438話 マジェンタ・コボルド

「少なくともチュパカブラみたいな化け物は元々この周辺に棲息していたわけではない、か……」


 確認のために取り出していたダニエラに渡された資料から視線を外し、雪が積もった地面を見下ろす。


 狩の心得はないが、ガナディアで斥候をしていた時の経験でなんとなくだが地面の状況を読むのには慣れている。


 森に入ってから確認しながらヒエロ山の麓を目指しているが、まだ枯れていない低木に生えた葉が草食獣に噛まれた形跡もなければ生き物の足跡も見当たらない。


「グルルルル」

「お前達は一体何を食べてるんだ?」


 返事が返ってこないことを理解しながら俺のことを囲んだコボルド達と対峙する。資料で少数ながら森に棲息していることは知っていたので遭遇した事自体は驚きはしないが……。


「ピンクの毛並みは流石に目立ちすぎるだろう」

「ワオーン!!」


 後ろ足で器用に立ち上がり吠えながら威嚇してきた個体に注目している隙に、別のコボルドが背後から迫って来るのが分かる。


 固まりきってない新雪がコボルドの重さに潰される僅かな音を頼りに、飛び掛かられたのと同時に振り向き爪を避けながら人のように発達した毛深い両手を掴んだ。


 空中で勢いを殺されたコボルドが間抜けな表情を浮かべながら、一泊置いて下半身を地面に落とす。


「ワウ!?」

「丸腰で攻撃を受け止めるのは心臓に悪いが慣れるしかないな……」


 ダニエラが用意してくれた資料上でコボルドの討伐指定等級は銀級と記されていた。冒険者ギルドが保有する何十年にも渡る討伐記録を元に危険度を設定しているらしいので、基本的に信頼しても良いと頭でわかっていても正直怖さがある。


『恐怖を抱くのは当然よ! その恐怖を認めた上で、乗り越える勇気を養うには……」

『養うには??』

『とにかく戦って、戦って、戦いまくるのよ!!』


 あの時は全員徹夜をしていて少し変になっていた可能性を否めないがレオの言う通りだろう。今までの戦い方と違いすぎて違和感が凄いが、肉体の限界を確かめる為にはとにかく実戦経験を積むしかない。


「グルルルゥォオ!」

「おっと」

「キャン!?」


 大きな口を開いて噛みつこうとしてきたコボルドの攻撃を避けず、身体強化を掛けながら頭突きをすると予想外だったのかコボルドが鳴きながら後方に飛び退く。


 最初に吠えたコボルドが一部始終を見てどうすれば良いのか分からなそうに立ち尽くしているが、攻撃に加わってもらわないと練習にならない。


「コボルドは元々この森に棲息していたし、チュパカブラのような外来種が現れた時現状の生態系を守る抑止力になるかもしれないな……おい」

「「グルルル??」」

「俺の練習に付き合ってもらう代わりに無闇に傷つけないし命も奪わない……だから全力で掛かって来てくれ」


 ダメ元で説明したが、やはり伝わってはいないみたいだな。二匹のコボルドが困惑した様子で互いを見てからこちらに視線を戻した。


「説明してもだめなら……こちらから行くぞ」

「「ワウ!?」」

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― 新着の感想 ―
闘いを通して絆が芽生えそう(テイムに成功?)。 このコボルドたちはデミトリのことを兄貴と慕うのだろうな
デミトリ、天然入り過ぎ……。コボルトが困ってるじゃないか。
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