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閑話 デミトリの手紙

「デミトリはなんて?」

「やっぱり私達に会いに来ようとしてたみたい……理由は良く分からないけどエリック殿下達に止められてるらしいよ」

「エリック殿下に……?」


 何でそんな事をするのか全く心当たりが無いのか、ナタリアさんが首を傾げながら額に手を当てて難しい顔をしてる。


「変に時間が経っちゃって、セレーナにもちゃんと謝りたいのに申し訳ないって」

「私に……?」

「ヒエロ山で別れた時に言った事をずっと後悔してるみたい」

「……そっか。そんな事気にしなくても良いのに」


 セレーナは苦笑してるけど、心なしか肩の荷が下りたみたいで安心する。


 デミトリは『手紙で謝罪を済ませるつもりはない』からって、私にセレーナの事を気にかけて欲しいってだけ手紙に書いてたから、勝手に教えちゃったのは申し訳ないけど……会えない状況が続くなら早めに伝えてあげた方が良いと思った。


「それにしても飛べるようになったんだね? 凄いよシエル! 手紙を届けてくれてありがとう」

「……ピー」

「……元気が無いけどどうかしたの?」


 急に窓の外に現れて私に手紙を渡してから今に至るまで、ずっ膝の上で体を丸めて静かにしてたシエルの背を優しく撫でる。こんな状態のシエルは見た事無い。


 すぐにデミトリに返事を書こうと思ってたけど……。


「ナタリア、久しぶりに会えたし今日はシエルを泊めてもいいかな?」

「え!? ええ、勿論構いませんわ」

「なんだか様子がおかしいね?」

「何かあったのかな……? 手紙には何も書いてなかったけど……」


 ナタリアとセレーナと目が合う。二人共も私と似たような事を考えたのか、複雑な表情を浮かべた。


「ここまでシエルさんが落ち込んでるのにデミトリさんが手紙の中で触れてないと言う事は……」

「何か問題が起こって、多分シエルも関わってたけどデミトリの中では解決したって認識なのかな?」

「手紙に書かなかったのは心配を掛けたくないからだと思うけど……問題が解決してるはずなのにシエルが落ち込んでるのは、シエルが何か失敗してデミトリは問題ないって言ってくれたけど納得できてないの?」

「ピー……」


 図星を言い当てたみたい。シエルが小さく鳴きながら顔を上げた。


 デミトリの性格的に、私達の想像通りなら本当にシエルは悪くないって思ってそうだけど……。


「デミトリさんは、その……」

「相手の事を思って行動してるけど、極端すぎて逆に無神経な時があるから落ち込むのも仕方ないよ」


 ナタリアとセレーナがシエルに同情しながら撫で始めたけど――。


「まだ、そうと決まった訳じゃ――」

「一番付き合いが長いヴァネッサちゃんが一番そうかもしれないって思ってるんじゃない?」

「……いつもすごい気を遣ってくれてるもん」

「気を遣い過ぎてきつめの言い方で戦力外通告したり?」

「それは……」


 ちょっと言い返すのが難しいな……。


「デミトリさんの事は一旦置いておいて、シエルさんが今夜泊まるなら奮発してお菓子を食べましょう!」


 いつもはそんな贅沢なんてしないのに……多分空気を変えようとしてくれたナタリアが、明るくそう言いながら立ち上がって、そのまま使用人に伝えに行っちゃった。


「ナタリアちゃんが返ってきたら、いい加減部屋で軟禁状態なのにも飽きて来たからこれからどうするのか決めよっか?」

「セレーナ……そうだね。お菓子を食べながら作戦会議しよう」

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