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第398話 寝れない夜

 レオに言われた事に心当たりが一切無いわけではないが、言われている程だろうか……?


「……そんな事は――」

「本当に無い? 最悪の場合、自分の命を勘定に入れて敵を倒せれば良いって考えてないかしら」


 胸の奥に固く結ばれた塊が出来たかのような、精神的な物とは思えない異物感に苛まれながらレオの問いに対しての返答を考える。


「……簡単に死ぬつもりは無い」

「勿論、大前提として生き残るために最善を尽くしてる事は否定しないわ。私が言ってるのはそう言う事じゃないのは分かってるでしょ?」

「……最善を尽くした上で、どうしようもなければ命を掛けるしかない場面に遭遇してしまう事もあるだろう」

「必要に駆られて命懸けで戦うのと、はなから命を投げ捨てる覚悟を決めてるのは似て非なる物よ。そんな事仲間は望んでないし、あなたを大事に思ってる人達の気持ちを踏みにじる行為よ」


 レオの鋭い指摘にぐうの音も出ない。


「……一旦この件は置いておいて、自分が弱いと思ってるのは否定しないのね?」

「いや……正確には違うな」


 今一度レオに指摘された事を整理しながら深呼吸して考えを纏める。


「強さの基準だが……レオちゃんの様な豪傑や、勇者の力を持っているユウゴと比べるだけ無駄だろう?」

「『無駄』って、また勝手に自分の限界を決めつけてるのは聞き捨てならないけど続けなさい」

「うっ……並の冒険者程度の実力があるのはちゃんと自覚している。自分の事を弱いと思っていると言うより、特別強くはないと思っていると言った方が正しいかもかもしれない」

「呆れちゃうわね……ソロで銀級の時点で、貴方は最低でも金級のパーティーに所属しても遜色ない実力を持ってるのよ?」

「……は?」


 流石にそれはおかしくないだろうか、幾らソロで活動する事がパーティーよりも難しいとは言え……。


「本当に自覚が無いのね……例えばの話だけど冒険者がやむを得ない理由でパーティーを抜けたり、パーティーが解散してソロになった時、特例中の特例を除いて皆降級するの。理由は説明しなくても分かるわよね?」

「……通常三人から四人のパーティーを組んでいるから、一人では依頼をこなすのが難しいからだろう」

「その通りよ! 逆に言えばソロで銀級として活動しても問題ないって冒険者ギルドに太鼓判を押されてる時点で、デミトリちゃんは並の金級冒険者よりも強いのよ?」


 理屈と筋は通っているが、本当にそうなのかと疑うもやもやが晴れない。金級の冒険者か……。


 確かアムール王国で手合わせしたベルナルドが金級の冒険者だったはずだ。奴の魔力が暴走するまではやけに手ごたえが無く感じたのは、カリストの支援魔法の影響を受けていなかったからではなく、純粋に俺が金級に相当する実力を持っていたからなのか……??


「私が昇級試験を受けないかって提案したのも、鬼と戦える実力があるなら白銀級のパーティーでも通用すると思ったからよ?」

「白銀……!? それは流石に――」


 白銀級と言えばレオが到達している最高峰の白金級の一歩手前だぞ……??


「私の冒険者証に賭けて今言った事に嘘偽りないと誓うわ」


 白金級のレオがそこまで賭けるのであれば、これ以上疑うのは失礼だ……自認していた戦闘能力とレオからの評価の乖離に未だに違和感を拭いきれていないが、俺が間違っていたのだと認めて認識を改めていくしかない。


「……分かった」

「理解してくれたみたいで嬉しいわ。日々鍛錬と戦闘を続けて成長してるのに、いつまでも自分の実力を誤認してるのは本当に危ないんだから……取り返しのつかない事になる前に認識を変えて貰えて良かったわ」

「取り返しのつかない事??」

「普通に戦えば勝てる相手とか先手必勝で潰せる敵でも、実力を誤認してたらどうしても後手に回るでしょ? 安全策を取ったつもりだったのに不用意に戦いを長引かせて、逆に敵に好機を掴む隙を与えちゃったら元も子もないじゃない」

「その通りだな……」

「デミトリちゃんの性格だと、それが原因で自分が傷付く分には自己責任だって割り切っちゃいそうだけど――」


 図星を突かれてレオから視線を逸らす。


「――あなたが傷付いたり死んでしまったら仲間は悲しむし、それが原因で仲間にまで被害が及んだらどうするの?」

「……すまない、そこまで考えが至っていなかった」

「謝る相手は私じゃないでしょ!!」

「っ!? ……アルセ殿、改めて申し訳なかった。気づかぬ内に、貴殿だけでなくエリック殿下やヴァネッサ達にも……嫌な思いをさせていたに違いない」

「……私の方こそ、勝手に色々とレオ殿に相談してしまってすまない。私はこの後セヴィラ辺境伯領へと向かうだろう? 別れた後デミトリ殿が無茶をしないか心配だったんだ……」


 申し訳なさそうにそう言ったアルセを見て罪悪感で心が埋まる。そこまで心配させてしまっていたのは本当に申し訳ない事をした……。


「と言う事で、今晩私がみっちり色々と教えてあげるわ」

「「「みっちり……??」」」

「本当はもっと時間を掛けてあげたかったんだけど、私とユウゴも明日には王都に向けて発つじゃない? 荒療治になっちゃって申し訳ないけど、教えられることをなるべく叩き込むわよ!」


 妙に張り切っているが、まさか夜通し手合わせをするつもりではないだろうな……?


「どうしてそこまで――」

「おかしな質問ね? 貴方達の事を気に入ったからよ?」


 ここまで真っ直ぐ言われてしまうと流石に恥ずかしいな。


「なるほど……」

「これはモテちゃうね……」

「アルセ様、ユウゴ、哀愁漂う言い方はやめて頂戴……褒められてるはずなのに悲しくなるから」

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― 新着の感想 ―
あのー、だからレオちゃんや。 デミトリは悪鬼と死闘後なのよ((泣)) でもレオちゃんがモテるのは間違いない。
最後www その通りだと思うw
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