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第391話 Sランク冒険者

 それにしても、魔族か……。話を聞けば聞く程、魔王と魔族の脅威が測り切れない。


 ユウゴが戦っている魔族達やいつか戦う魔王が幽氷の悪鬼と同等か、それ以上の力を持った化け物なら……ガナディア王国の使節団がヴィーダ王国と交渉している内容の意味が分からない。


 国が滅ぶ可能性があるなら悠長にヴィーダ王国と交渉なんてしないだろうし、イゴールの死を理由に二の足を踏まず国内の最高戦力をユウゴの旅に参加させるだろう。


 だとすればガナディア王国は魔王の脅威は然程大きくないと判断していてヴィーダ王国の協力を得られれば儲けもの程度にしか思っていないのか? 最悪ユウゴ一人でも何とかなると言う確信を持っていなければ今回の様な愚策を講じている事の説明が付かない。


 最悪なのはガナディア王国が魔王と魔族の実力を見誤っていて、勇者であるユウゴの存在を軽んじて外交の駒としか考えていない場合だが……流石にそこまで馬鹿だとは信じたくない。


「魔族の被害は酷いのか?」

「何個か都市が落とされたって聞いたから結構やばいと思う……天啓を授かってここに向かう直前、ヴィーダ王国が抱えてる戦士を旅に同行させられないなら、冒険者ギルドに依頼するのを手伝ってくれって使節団の代表が言い始めてた位だから――」


 ガナディア王国の状況はそれ程悪いのか……? 尚更最高戦力である勇者を使節団に同行させて国から出してしまった意味が分からない。


「――ガナディアには冒険者が居ないって聞いた時はびっくりしたよ、異世界には当たり前に冒険者ギルドがあるって思ってた」


 確かガナディア王国は冒険者ギルド非加盟国だったはずだ……白金級パーティーに依頼を出したくても出せない状況なら、ヴィーダ王国を頼る点については一応理解できる。


「人数は限られるが、最高の等級に到達している冒険者達ならもしかすると魔王討伐の戦力になるかもしれないな」

「そう、かな……自分で言うのもなんだけど、俺と同じ実力の人間が普通に冒険者をしてるイメージが湧かないんだよね」

「流石に勇者と同じ実力の人間がいるかどうかは分からないが……可能性があるとしたら白金級の冒険者だろうな」

「白金級……? Sランクみたいな?」


 異世界から召喚された上にガナディア王国には冒険者ギルドが無い。ユウゴにも分かりやすいように冒険者の等級を説明する。


「冒険者の等級は下から青銅級、鉄級、銅級、銀級、金級、白銀級と続き最高の等級が白金級だ。アルファベットに変換すると、丁度青銅級から白銀級がFからA、白金級がS相当になるんじゃないか?」

「デミトリさんってもしかして――」

「何を期待しているのか分からないが俺は銀級だ。ユウゴに分かりやすく言い換えるとCランクだな」

「ええぇ、嘘だぁ!? 使節団の代表もしつこく『二つ名持ちである幽氷の悪鬼を勇者の旅に同行させたい』って言ってたのに……」


 ……他に何人二つ名持ちの冒険者が居るのか知らないが、名指しで俺を指名しているのは確実に裏がありそうだな。


「嘘じゃない。Sランクの冒険者と面識は無いが、確か王都を拠点にしている二つ名持ちの白金級冒険者が一人居たはずだ。」

「ヴィーダ王国の王都でも、デミトリさんの知ってる範囲だと一人しか拠点にしてるSランクの冒険者が居ないんだ……なんて二つ名なの?」

「確か――」

「勇者ちゃん!」


 雪原には不釣り合いな肌色の何かが空から降り、俺とユウゴとアルセの間で三点着地して周囲に雪を撒き散らす。


「私が来たからには安心して! 一緒に魔王をけちょんけちょんにするわよ!」


 紐パンツとしか形容できない鉄製の何か()()を着た奇抜な格好をした筋肉質の男が、白い歯を見せつける様な豪快な笑顔を浮かべながら力強くユウゴに向かって親指を上げた。


「……発情バイクロップスと呼ばれている男だ」

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― 新着の感想 ―
・・・バイセクシャルとサイクロプス?
……別の意味で心配な同行希望者。
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