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関話 兄弟喧嘩のちプチ封印

「何しにきたの……?」

「フィーネ、もういいだろ? いい加減お兄ちゃんの言う事を聞いてくれ」


 私の神力が暴走した時に崩壊した瓦礫が撤去されて、私が依代にしてる大樹以外まっさらになった学園の中庭の中心にお兄ちゃんが立ってる。


「フィーネがこんな国を守護する必要なんてない」

「それは……自分勝手」

「俺の神呪程度で滅びの道を歩む国なら、自業自得だ」


 お兄ちゃんの神呪に触れて、正気でいられる人間の方が少ないの自分でもわかってる癖に……。


「私がアムール王国の守護神を辞めたら……お兄ちゃんも困るよ?」

「何を――」

「私がこの国を離れて解呪もやめたら……この国は多分滅びる」

「そうだな?」

「そうなったらデミトリ……トリスの愛し子が困るからお兄ちゃんはもう私と会えないね」

「な!?」


 私が約束の事を知ってないと思ってたのか、お兄ちゃんの目が泳ぎ始める。


「なぜあの約束の事を――」

「トリスとミネアが教えてくれたよ?」

「あいつら余計な事を……!」


 余計な事か……私には、また秘密にするつもりだったのかな。


「フィーネ、この国が滅んだ所でトリスの愛し子は困らない。ヴィーダ王国とはもう敵国のようなものだし、むしろ滅んでせいせいするはず――」

「ルーシェ公爵夫婦」

「……?」


 本当に私と……辛うじて自分の愛し子のクレアのことしか見てないんだね。


「冒険者ギルド受付のマチス、職員のファビアン」

「一体何を――」

「事後処理のために学園に残ったエリックの従者団、トリスの愛し子と親交が深いトワイライト・ダスクの冒険者達」

「……フィーネ、お兄ちゃんにも分かるようにちゃんと説明してくれ」

「アムールに居てこの国に何かあったら……デミトリが。トリスの愛し子が困る人達だよ?」

「それは――そんなことを言い出したらキリが無いだろ! あのデミトリとか言うガキが生きてる間ずっとアムールを守護するつもりか!?」

「私の恩人を見下す様な言い方……やめてほしいな……!!」


 どうしてお兄ちゃんは……!


「フィーネ」

「私の愛し子を助けてくれた恩人に手を出したら……絶交だからね?」

「!?」

「私は恩返しが終わるまで……守護神を辞めるつもりはないから」


 少なくともトリスが色々ときな臭いって言ってた……ガナディア王国とのあれこれが終わるまでこの国が滅ぶようなことがないようにしないと。


「最近見限りかけてたから少し手を抜いてたけど……私はこれから解呪に専念するから忙しいの。バイバイ」

「フィーネ!! 待っ――」


――――――――


「クソ……」


 フィーネが消えて、いくら呼びかけても姿を現してくれる気配がない。


「トリスの愛し子、か……」


 俺のせいで捕まったフィーネの愛し子を助けてくれたから、あのデミトリとか言うガキの事は一応評価してる。異能を渡した駒を倒されたり、フィーネが国を見限る計画の邪魔はされたが……。


 あいつが居る限りフィーネが守護神を辞めるつもりがないとなると困る。


「ふー」


 落ち着け、方法はあるはずだ……トリスとの約束が厄介だが、要はあのガキを困らせなければ何をしてもいいはずだ。


「そうだ……! この国を滅ぼした方があのガキにとって得になるように――」

「やあ!」

「!? フリクト……? それにサシャまで、何の用だ?」

「話はトリス達から聞いたよ! 一人だと暴走しちゃいそうだから僕達と一緒にいようか」


 あいつら言いふらし過ぎだろ!!


「ちっ、お前らには関係ないだろ!」

「デミトリの事は僕達も気に入ってる。余計な真似をされたら困るんだ」

「……フリクトも授けてた神呪の件でトリスにしこたま怒られてた癖に……」

「しーっ! 次の強敵を倒したら解呪するって納得してもらったから僕は良いの」

「呆れちゃうわ……あの剣幕のトリス相手にすぐに解呪したくないってごねられるのはフリクト位よ?」


 授けてた神呪? フリクトも怒られた??


「何の話――」

「問答無用!」


 話について行けず反応が遅れ、フリクトに羽交い締めにされた隙にサシャが放った水流に飲み込まれる。水から解放された先は、暗い深海の底を切り取った様な空間だった。


「……サシャの領域か」

「本当はフリクト以外あまり招待したくないんだけどね。しばらくここで大人しくしてなさい」

「ディータスが余計なことを考えたり妹に執着ちゃうのは一人で閉じこもってるからだ! 僕と戦って、拳で語り合おう! そうすれば煩わしい思考から解放されるよ」

「ふざけんなこの脳筋が、お前が戦うのが好きなだけだろ!! 大体お前だってサシャに付き纏――」

「問答無用!!」

「ぐはっ!?」

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