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第365話 長い一日の終わり

「物凄く有用な特技だな」

「そう……かな? 使い道なんてないよ」


 社交辞令だと思ったのか本当に価値のない能力だと思っているのか分からないが、クレアが微妙な反応をする。


「幾らでもあると思うが……」

「料理する時物凄く便利じゃない? 特にお菓子作りは分量と時間管理が命だから」


 相変わらずヴァネッサは甘味が好きだな。


「服薬する時間を厳しく管理しないといけない患者の看護で役立つから、治癒院で重宝されると思うよ」


 意外にも堅実な案を出したのはセレーナだった。前世の事を思い出したのか、少しだけ表情に陰りが見えるのが少しだけ気になるが……。


「……そうだな、二人の案以外だと薬師なら喉から手がでるほど欲しい能力だと思う。クレア自身が薬師になるつもりはなくても、調薬する際の時間管理を手伝う助手として働くつもりがあれば、引く手数多じゃないか?」


 話す話題が特に無かったことも手伝い、そのままヴァネッサとセレーナと俺が三者三様にクレアの特技を活かせる方法を語っていると、静かな嗚咽が聞こえてきた。


「大丈夫か……?」

「ごめん……気にしないで」


 一体何が――。


「失礼します」


 返事も待たずに慌ただしく給仕風の装いをした女性が部屋に入って来たが、彼女も夜鷹の一員だろう。


「間もなくヴィーダ王国第二王子、エリック殿下ご一行が到着致します。罪人を預かりに来ました」

「……クレアの事か?」

「はい。謁見中監視にご協力頂き感謝致します」


 舞踏会が中止になった際、セレーナの治療を終えたクレアに誰も近寄ろうとしなかったが……急に随分と強気だな。


「デミトリ、さん」


 扉を開けたままこちらに話しかけて来た夜鷹から視線を外しソファの方に振り向くと、クレアは既に立ち上がっていた。


「色々とありがとう。セレーナ、さんも私を治してくれてありがとう。エリック殿下とレイナ様に直接謝れないのは申し訳ないけど……気が向いたら、本当に申し訳ない事をしたって私が思ってた事、その、伝えてもらえないかな?」

「伝言ならちゃんと伝えると約束――」

「私が死ぬからって同情しないで! 約束なんてしなくてもいいよ……人伝で私が謝ってたって今更聞かされても、あの二人の心は晴れないよね? また迷惑は掛けたくないから」


 ……確かに今伝えても二人は良い反応を示さない可能性が高い。


「ちゃんと謝れないのも罰だと思うから……デミトリさんが大丈夫って思ったタイミングで、気が向いたらでいいから伝えてくれると嬉しいな……これも、かなり善意につけ込んだお願いだって分かってるんだけど」

「……今更その程度でお前の評価は変わらないから心配するな」

「ふふ、良くも悪くもって意味だよね? 本当にやさしいんだね……ありがとう」

「そろそろよろしいでしょうか??」


 言葉は丁寧だがきつめの口調で夜鷹に促されたクレアが扉の方へと向かう。


 慇懃無礼な対応をしている夜鷹の目が明らかに泳いでいる。反射の異能を放たれたら自分では対処できない、そう分かっているからこそ高圧的な態度になっているのかもしれない。


「それじゃあね、バイバイ」


――――――――


「待たせてごめんね」

「俺達は全然気にしていないが……」


 ようやく現れたエリック殿下達は全員疲れ切った表情をしていて、何があったのか聞くのも憚れる様子だ。情報共有は後にして、さっさと王城を後にした方がよさそうだ。


「移動した方が良さそうだな」

「そうだね! イバイ、待機中の王家の影に伝言をお願いできるかな?」

「承知致しました。私は彼等と共に合流地点に向かいます」

「色々と苦労を掛けるね、頼んだよ」

「……お供します」


 ずっと俺とヴァネッサとセレーナを監視していた部屋の給仕に扮した夜鷹の人間がイバイと共に部屋を出た後、恐らく部屋の扉の前で護衛をしていたアムール王国兵がこちらに話し掛けてきた。


「城門までご案内いたします」

「よろしく頼むよ」


 舞踏会が終わったというのにアムール城の廊下は未だに人の交通量が多い。全員切迫した様子でぎりぎり走らない程度の速さで移動しているが……事態が収まるのはまだまだ先だろう。


「ふぅ……」


 イバイが不在だからか、人目を気にする気力すら沸かないのか分からないがエリック殿下が珍しく人目もはばからずため息を吐いた。


「……城を出るまでの辛抱だ」

「そうだね! 最後の最後で足元を掬われるのが一番損だし、気を引き締めるよ」


 無理をさせるつもりで言ったわけではなかったんだが……。


 想像以上にエリック殿下は疲れているみたいだ。数週間前までは留学生として政からは離れていたのに、問題の連続と他国の王との謁見……王都を出たら少し休んだ方が良さそうだな。

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