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第340話 詰んでいく王子

「デミトリ!」

「ピー!」

「お疲れ様デミトリ!」


 釈然としない気持ちで控室に戻るとヴァネッサ達に出迎えられた。ニルに会った時もそうだったが、見知った顔を見ると武闘技大会と言う非日常から現実に引き戻されたような感覚に襲われ安心するのと同時に、一気に蓄積された疲労が押し寄せて来る。


「ニルさんがポーションを渡したって言ってたけど、怪我は大丈夫!?」

「ああ、疲れがたまってる位で体自体は健康そのものだ」

「エリック殿下、ヴァネッサ嬢、デミトリ殿。積もる話もあると思いますが一旦この場を離れた方が良いと具申致します」

「イバイの言う通りだね、馬車の中でも話は出来るし留学生寮に戻ろう!」

「ピー!」


 随分とエリック殿下と仲良くなったな……? 喜ばしい事だが何かきっかけがあったのだろうか?エリック殿下の号令に合わせて翼を広げて鳴いたシエルの頭を撫でる。


「アムール国王が優勝賞金の件で係に話を聞けと言っていたが――」

「あれは無視しちゃっても大丈夫だよ、とにかく帰ろう!」


 一応形式上ああ言っただけだったのか……? エリック殿下が大丈夫だと言うのであれば問題ないだろうと切り替え一同で控室を出た。


 すっかり日も暮れ、明かりの乏しい暗い石造りの廊下をイバイの先導に付いて行きながら進む。


「イバイ殿、出口から遠ざかっていないか?」

「闘技場の入口は今帰宅する観客で込み合っているので、関係者用の裏口を目指しています」


 イバイの言う通り後方の入口付近からは賑やかな観客達の話声が微かに聞こえてくる。優勝したとはいえ俺はかなり嫌われているみたいだし、観客を避けて闘技場を出られるのであればそれに越した事はないだろう。


「こちらです」


 イバイが案内してくれた扉の先に見えた馬車の御者台には見知った黒ずくめの男が座っていた。


「エリック殿下、想定通り繁華街の中央通りと闘技場前は通行が困難な状態です。遠回りになってしまいますが、商業区経由で学生区を目指しても問題ないでしょうか?」

「うん! 頼んだよ、ニル」


――――――――


「勝てるって信じてたけど……本当に無事でよかったよ」

「かなりぎりぎりの戦いだった。覚悟はしていたものの、対戦相手全員が何かしらの能力を持っているのは想定していなかった」


 そもそも異能の様な特殊能力を持った人間の数は少ないはずだ。クリスチャンはよくもまああれだけの人間を集めたものだ……たまたま大会に参加していた人間もいるだろうが、裏で少なくとも俺の当たった対戦相手はフィルバート以外王子と何らかの取引をしていたのが判明している。


「二回戦の対戦相手が投獄される直前まで国際指名手配されてた邪眼のレイモンドだったし、馬鹿みたいに国中の異能者をかき集めたみたいだね」

「国際指名手配??」


 エリック殿下の発言にヴァネッサが首を傾げる。



「レイモンドは元々ハラーン王国の人間らしいよ? 猟奇事件を何件も起こしてアムールに逃亡した末にセレーナに捕まったみたい。石化の邪眼なんて物騒な能力を持ってるのにセレーナが捕まえたって聞いた時は本当に驚いたよ」


 石化の邪眼……恐ろしい能力だった。セレーナに効果が無かったのは加護の影響か、もしかすると石化した個所から無理やり再生したのかもしれない。


「再生魔法……そう言えばニルからセレーナの身柄を保護したと聞いたが――」

「今は護衛付きでセヴィラ辺境伯邸に匿って貰ってるよ。セレーナは元々セヴィラ辺境伯領出身でアルセが目付け役を担ってたからね」

「そうか、アルセの家なら安心だな……」

「身の安全はね……ゴドフリーの件でかなり精神的に参ってるのが心配だけど」

 

 ……ゴドフリーの第一発見者はセレーナだった。まだ存命の内に会えていれば少しは救いがあったかもしれないが……。


「セレーナの事も心配だが、まずは諸々問題を片付けておいた方がいいだろう。ニルから聞いたが、セヴィラ辺境伯家とルーシェ公爵家の離反はもう承諾されているんだろう?」

「うん! 正式な発表は来週の舞踏会でアムール王が発表する事になってるけどもうアムール王家の許可と両家の承諾を得てるよ。表向きはそれでクリスチャン殿下が起こした学園での決闘騒ぎは決着が着くように両国で認識を合わせたから」

「表向きは……?」


 悪い笑顔を浮かべながら、エリック殿下が淡々と答える。


「元凶のクリスチャンがお咎めなしなのは納得いかないから、僕の命を危険に晒した罰として彼の私財の没収と僕への譲渡も賠償内容に含ませておいたんだ。でも表立ってそんなことしたら双方印象が悪いでしょ?」

「まぁ、事情をよく知らない人間なら色々と邪推できてしまうかもしれないな」

「だからクリスチャンは今回の件の反省として自主的に私財を全てアムール王家に返納するんだ。アムール王家も、誠意を見せるためにそのお金を今回迷惑を掛けたデミトリに優勝賞金として自主的に渡したらかどが立たないでしょ?」

「自主的に……」


 急に降って湧いたような優勝賞金の話はそう言う事か。第一王子の活動費として国家予算を幾分か割り当てているだろうし、そこまで重い罰になるとは思えないが。


「ちなみにクリスチャン殿下は季節毎に私服を有名なブティックで新調したり、クレア嬢に渡す為に高額な贈り物を買い漁ったり、無駄に豪華な茶会を主催するために活動費を使い込みすぎて本来割り当てられるはずの国家予算も凍結されてる状態だから私財を失ったら無一文に近い状態になるんだ」

「……やけに詳しくないか?」

「実際に学園で傍に居て見てたのもあるけど今回の交渉相手が色々と教えてくれたからね」


 アムール王家の人間か……。あの腑抜けた王ではないとは思うが一応確認しよう。


「……色々と交渉していたと聞いたが、相手はアムール王なのか?」

「まさか! エステル王妃とニコル第二王子だよ!」

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― 新着の感想 ―
答え合わせタイム。 あらまぁ、やっぱり交渉相手は実務最高権力者か。 陛下はハリボテお神輿なのね。 さて先ずは私財没収された馬鹿坊の処遇はどうなるか。予算が凍結なら、……病気療養かな。
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