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第320話 選手控室

「何か企んでるって分かってるのに……」

「俺もゴドフリーとセレーナの件が無ければ出場しなかったが、こうなってしまった以上どうしようもない」

「ピー……」


 ヴィセンテの剣も奪われたままにする訳にもいかない……。


「私とシエルは、エリック殿下と一緒に応援してるから!」

「ピ!」

「ありがとう、頼りにしてる」


 何が起こるのか分からない為ヴァネッサ達にも、エリック殿下とイバイにもわざわざ観戦に来てほしくは無かったがそうは行かなかった。


 殿下はアムール王家の出方次第では俺を預かる人間として対応するために、そしてヴァネッサはトリスティシアと話して吹っ切れたのか、自分が俺の近くにさえいれば神呪の影響で周りが俺達に都合よく狂い動いてくれるかもしれないと観戦を申し出てくれた。


 本当は全員に留学生寮で待っていて欲しかった。クリスチャンは頭はあまり良くないが、権力を持った馬鹿とそれを止めないアムール王家が何をしでかすつもりなのか全く読めない。


 それを踏まえた上で、情けない話だがカリストの件もありクリスチャンがどんな人間を俺の相手として用意したのか分からない。必ず勝てるという保証がどこにも無いため、観戦を申し出てくれた後恥を忍んで逆に見守って貰って欲しいとこちらからお願いさせてもらった。


「それでは出場者の皆様は受付で出場手続きをしてから選手控室に集まって下さい!」

「もう向かわないといけないな……行って来る」

「頑張って!」

「ピー!」

「ヴァネッサ嬢達の事は任せてください」


 ヴァネッサ達の事をエリック殿下とイバイに任せ受付に向かい、署名済みの誓約書を渡してから闘技場の無駄に長い石の回廊を進み選手控室へと向かう。


 受付近くには観客席に繋がる通路があったため武闘技大会を観戦しに来た客で賑わっていたが、選手控室に繋がる廊下は一通りが極端に少ない。先程の熱気から一転して緊張感の漂う冷たい石造りの道を歩いて行くと、選手たちが控える大部屋に辿り着いた。


 雑多に配置された長椅子とテーブルに腰を掛けた出場者達を見渡す。武具の手入れをする者、静かに瞑想する者、そして知り合い同士なのか集まって談笑している者達。それぞれが十人十色の方法で試合に備えている。


「俺、この大会が終わったら告白するんだ」

「俺も――」


 気づかぬ内に張り詰めていた緊張感が、近くに座っていた男達が発した前世で言う所の雑な死亡フラグを聞いたことによって萎んでいく。


 自分は死ぬかもしれないと最悪の場合を覚悟して出場してるのが急に馬鹿らしくなってきた……どこまで行ってもアムールはアムールらしい。


 呆れながら控室の入口に近い椅子に腰を掛けようと動いた瞬間、部屋の奥から特徴的なシルクハットを被った男がこちらに向かって歩いて来るのが見えた。


「やあ!」

「……カリスト、アムールを出るんじゃなかったのか?」


 平静を保とうとゆっくりと言葉を選びながら声を掛けてきたカリストに返答したが、俺を嵌めようとしていた相手を目の前にして心の内で沸沸と怒りの火種が燃え始めたのが分かる。


「そうなんだけどさ! 急に第一王子に武闘技大会への参加を強制されて国を出られなくなっちゃった。『元パーティーメンバーならベルナルドの失態の責任を取れ』って理不尽じゃない!?」


 クリスチャンとかかわりがある事を隠すつもりが一切ないカリストの態度に呆気にとられ、言葉が詰まる。


「……そういえばパーティーを追放されたと言っていたが、相手はベルナルドだったのか」

「うっ、記憶力抜群だね。まぁ事実なんだけど……そんな事より! あいつデミトリの事殺そうとしてるよ!!」

「そうだろうな」

「そうだろうなってなんでそんなに冷静なの!! 死んだら人生楽しめないよ!!」

「ちょっと、周りの注目を集めてるから声を抑えてくれ」


 カリストの大声に不快感を露にした選手達に睨まれ始めたので、付いてくるように合図をして席を立ち人のいない入り口付近に移動した。


「とにかく棄権した方がいいよ、危険だから……なんちゃって」

「俺には武闘技大会に参加しなければいけない理由がある」

「分からず屋!」

「大体クリスチャンに指示されたと言う事は、お前は俺を殺せと言われたんだろう? 棄権させてどうする」


 俺と戦う事を想像したのか、カリストがガタガタと震え出す。


「無理無理無理無理カタツムリ、僕がデミトリと戦って勝てるわけないでしょ! 支援職だよ!?」

「なるほど……俺を倒せないから棄権させたいのか。そうすればお前の面目は保たれつつ、誓約書に施した細工で仲間も手に入り一石二鳥とでも考えているのか?」

「え、そ、ちがっ――何で知ってるの!?」


 忙しい奴だな……他の選手達から距離を取ったのにもかかわらず鋭い視線で刺すようにカリストを睨む人間が三人ほどカリストの背中越しに見える。恐らくだが、彼等もクリスチャン殿下に声を掛けられた者達だろう。


「説明する義理はない。とにかくこんなに注目を集めておいてどうするつもりだ? お前と同じくクリスチャンに俺の始末を指示された者達に気付かれているぞ」

「ぐっ、それも覚悟のうえさ! なんだかまたすごい勘違いされてるみたいだけど保身八割かもしれないけど、二割位は助けてくれた恩返しのつもりで共有しに来たんだからね!?」


 あの溝から引きずり出してやった件か。


「あの件はちゃらだと言っただろう。それに不意打ちで仲間に引き入れようとした癖に、二割の恩でそんなに堂々と言われてもな……」

「あれは君が棄権しないなら死なない様に支援するためで……! それに恩も借金も返さないで有名な僕が動いたんだよ!? 二割でもすごいよ!!」

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 恩も借金も返さないことで有名って、自分で堂々と言うことか。状況次第で容易く裏切る妖怪ネズミ男のような小悪党みが増してきたが、これも演技なのかどうか、考えるのが面倒。 絡まれ…
デミトリが何したいのかよくわからん。 クリスチャンがカリストに首輪つけてるのはわざわざ確認する必要ないし、 カリスト小物すぎてその場しのぎの嘘つくからカリストから得られる情報の信頼性ゼロ。 カリストの…
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