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第308話 危険な支援魔法?

 砂糖を混ぜすぎて最早紅茶風味の砂糖汁と化した半固形の物質をスプーンで掬い、口に運びながらカリストが唸る。


「はぁ~、セレーナにも断られたし、ヴァネッサみたいなかわいこちゃんを連れてるデミトリにも無理って言われたらもうアムールは諦めるしかないかも」

「……それが賢明だろう」


 本人を目の前にして良く言えるな。ようは綺麗な女性と組みたいだけじゃないか……


「追放された後中々お誘いが来ないから焦ってたけど、やっぱり自分から声を掛けずに僕の価値に気付いて拾ってくれる美女を待つのが正解なのかな……?」

「俺達に聞かないでくれ……」

「追放されたのがあなたのせいじゃなくて実力を見誤ったパーティーの誤解が原因だって思われたいなら、溝に嵌ったり私達に付き纏ったりしないで依頼を頑張るべきじゃないですか? 冒険者として活躍しないと周りからの評価は何も変わらないと思いますよ」

「くぅ~! 辛辣ぅ~!! でも一理あるかも~」


 ヴァネッサの指摘に軽く返事しているカリストを無視して、冷め始めたコーヒーを一気に飲み込む。


 ――異世界人特有の、今世の事を一種の物語と断定して行動してしまうのは転生させた神の誘導が原因なのか? ヴァネッサはそういった傾向が見られないし、俺はそもそも前世の記憶を封印されて転生させられたが……


 カリストと話しても疑問を解消できそうにもない。俺に出来る事と言えば、面倒事の種になりそうな彼をヴィーダから遠ざけつつ、万が一敵対した時に備えて情報を集める事位だろう。


「……追放されても今までソロで何とかなっていたんだろう? 実力があるなら、パーティーに拘らずソロで冒険者を続けるのも手じゃないのか?」

「やだよ! 僕の力はソロ向けじゃないんだ! 仲間が多ければ多いほど僕への還元率―― さ、サポートしやすいし!」

「……そうか。いずれにせよ俺達には関係のない話だな……珈琲を奢ってくれた事に関しては礼を言う。これでちゃらだと思ってもらって良い」


 ヴァネッサが珈琲を飲み終わったのを見計らって立ち上がる。まだどろどろの液体をちょびちょびと掬いながらスプーン事舐めていたカリストが空になった俺達のカップを見て焦り始めた。


「え、もう行っちゃうの!? もう一杯奢るよ?」

「結構だ……引き留められたから付き合ったが、俺達も予定がある」

「そんなぁ~」

「じゃあな、カリスト」


――――――――


「ヴァネッサ、トワイライトダスクと会う予定はあるか?」


 カリストを残してカフェを去り、後つけられないように足早に大通りを歩き、適当な路地に入ってすぐヴァネッサに確認する。


「明日ジェニファーさんとイラティさんに会う約束をしてるけど、急にどうしたの?」

「心配ないと思うが、アムール出身ではない俺と同じ理由でカリストに接触されたら絶対に仲間になる事も、あいつの能力の対象になる事も断るように伝えてくれないか?」 

「私から言わなくても断りそうだけど、分かった。絶対に伝える」


 二つ返事でそう答えてくれるのは嬉しいが……。

 

「理由は聞かないのか?」

「あいつ胡散臭いし、デミトリがそこまで言うならちゃんとした考えがあるんだよね?」

「ああ……あくまで推測だが、奴の能力は危険かも知れない」

「ピー?」

「能力? サポートしてたって言ってたよね? 詳しくは何も話してなかったと思うけど……?」


 手を顎に当てながら首を傾げたヴァネッサと、同じ方向に首を傾げた彼女の肩に乗ったシエルを見て苦笑してしまう。


「『サポートがなかったことにされた』と言っていたから、仲間の戦闘を補助するような支援効果のある魔法か異能を持っている可能性が高い」

「支援魔法がそんなに危険なの?」

「問題はその後口走っていた『還元率』という単語だ……何をどう還元しているのかは分からないが、俺が学園で戦ったベルナルドは金級冒険者にしてはあまりにも弱すぎた」


 俺が言いたい事が何なのか気づいたのか、ヴァネッサの表情が徐々に曇っていく。


「まさか……」

「俺と戦った時のベルナルドの実力が、カリストの支援を受けていない素の実力だった可能性も勿論あるが……最悪の場合を想定すると、カリストは支援を掛けた対象の力を何かしらかの形で奪う能力を持っているのかもしれない」

「うわぁ……だからあんなにパーティーを組みたがってたんだ。ただの女好きだと思ったけど」

「女好きも間違ってはいないと思うぞ……? とにかく、俺の予想が万が一当たっていたらと思うとトワイライトダスクには奴と関わって欲しくない」


 今思えば暇すぎて俺達にちょっかいを出してしまう程乗り気じゃない夜間警邏の依頼をカリストが受けたのも、セレーナを自分のパーティーに勧誘するための口実に過ぎなかったのだろう。


 セレーナの性格から恐らくカリストの申し出を歯牙にもかけず、別行動をした結果俺達に遭遇したのかもしれない。


「分かった、トワイライトダスクのみんなには私がちゃんと言っておくね!」

「ありがとう」

「そうと決まれば、気を取り直して本屋に行こう!」

「ピー!」 

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うわぁ条件付き強奪系かあ あるいは貸与系か 薬師と同類確定か…
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