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第302話 薬師ギルド

「とにかく、そう言う事が起こらないようにアムールの薬師は国が運営してる薬師ギルドに所属する事が義務付けられてるの」

「高級ポーションを買いたいんだが……」

「そうなると薬師ギルドに直接依頼に行くしかないわね。治癒院は原則として怪我や病気をしてないと薬類は出さないし、冒険者ギルドにも高級ポーションは置いてないと思うわ」

「ありがとう、そうする」

「これから行くのかしら? 薬師ギルドは――」


――――――――


「ここがジュールの薬師ギルドか」

「ピー?」


 商業区の外れに建てられた、立派な木造の建物をシエルと一緒に見上げる。掲げられた木製の看板にはでかでかとジュール薬師ギルドと書かれ、ポーションを入れるような瓶の意匠が彫られている。


「シエル、少しの間ポケットの中で待っていてくれ」

「ピ!」


 シエルの事を肩から降ろし、上着の内ポケットにそっと移動させる。今日はほとんどの時間を俺の肩に乗って過ごしていたからか、心なしかいつにも増してシエルは機嫌が良さそうだ。


 登校初日の段階で一部の生徒達にシエルの存在はバレていたが、噂程度であれば隠し通せると思い基本的にはポケットの中で過ごしてもらっていた。たが、あの決闘騒ぎでエリック殿下が所属している組の生徒達全員に俺がシエルを連れている事を目撃されてしまった。


 完全にシエルの存在がバレてしまったので今更隠しても意味はないと思い今日は肩に乗せて街中を移動していたが、流石に薬師ギルドに堂々とシエルを肩に乗せながら入るのは躊躇してしまった。


 薬品を取り扱っている都合上、幾らテイムされていても堂々と魔獣を肩に乗せて訪問なんてしたらいい顔はされないだろう。


 ギルドの扉を開くとその先には建物の大きさからは想像できない、不釣り合いな程小さな部屋が広がりその奥には固く閉ざされた扉と無人のカウンターが設けられているだけだった。


 メリシアでラーラの薬屋を訪れた時と似た薬品の刺激臭に鼻腔を刺されながらカウンターまで進み、置いてあった呼び鈴を鳴らしてみる。


 ――個人客の対応はあまりしていないんだろうな……


 治癒院や冒険者ギルド……それ以外だと恐らくアムール王国軍などもそうだろうが、薬師ギルドが薬を卸している先はいずれも大きめの組織だ。個人客の対応は稀で、この小さな部屋の先にあるであろう作業部屋などで日夜ポーション類の生成をしているに違いない。


 しばらく待ってみたが誰も現れなかったため、もう一度呼び鈴を鳴らした瞬間カウンター奥の扉が勢いよく開いた。


「一回でいいだろうが呼び鈴鳴らすのはよぉお!!」

「……すまない」


 額の血管がはち切れそうなほど激怒している白衣を纏った女性が、ずかずかと扉からカウンターまで歩き座った。顔に張り付いていたべたついた金色の髪を乱暴に後ろに流した後、腕を組みながらこちらを見上げて来た。


「要件は!?」

「高級ポーションを二本買いたい」

「変態に売る薬はねぇ!! 帰れ!!」


 怒鳴られている意味が分からず思考が停止する。取り敢えず何か誤解されているようなので、首から下げている冒険者証を取り出した。


「何か勘違いしていると思うが俺は冒険者だ。中級ポーションでは間に合わない怪我をした時用に――」

「建前は良い!! どうせ夜通しヤルための気付け薬にするつもりだろうが!!」

「は?」

「冒険者ギルドの売店で買える中級ポーションじゃ物足りねぇとは相当な変態だな!! ご苦労なこった!!」


 何を言っているんだこいつは……


「こっちは三徹してるのにまだ作業が終わってなくて気が立ってるんだよ……さっさと帰れよ……」


 急に頭を抱えて嘆き始めたが頭を抱えたいのはこちらの方だ。王都で高級ポーションを購入できるのが薬師ギルドだけなので我慢しているが、あまりにも礼を失した振る舞いに苛立ちが募っていく。


「……どうしても売ってくれないのか?」

「しつけぇな!!!! 高級ポーションが必要になるって納得できる内容の依頼票か、銀級以上の冒険者じゃなきゃ受注できない討伐依頼対象の討伐証明でもなきゃ売らねぇよ!!」

「これでいいか?」


 カウンターに、収納鞄から取り出したクァールの魔石を置く。


「金持ちのぼんぼんかぁ? でけぇ魔石だけど金さえ出しちまえば誰でも買えるだろうが」

「それは討伐証明の素材も同じことだろう……」

「あぁん!?」


 一応薬師ギルドに配慮して魔石を取り出したつもりだが、納得してもらえないなら仕方がない。話にならないのでハルピュイアの死骸をカウンターに放り出す。


「っ!? てめぇなにしてんだよ!!」

「お前が難癖をつけてくるから討伐証明になるものを出しただけだ。これでも文句を言うのか?」

「早く仕舞えよ!! 薬を作る環境は繊細で――」

「ポーションは売ってくれるのか?」

「ふざけんなよ!! 今すぐ仕舞わねぇと出禁にするぞ!?」

「さっきから何の騒ぎですか!?」


 受付の奥からまた別の薬師が現れ、カウンターに乗せられたハルピュイアの死骸を見て絶句した後顔がどんどん赤くなっていく。


「今すぐ出て行ってください!!!!」

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― 新着の感想 ―
ほんっとにこの国ストレスしかたまんないな。 暴力と権力に訴えた方がいろいろはやいっしょ…
基本変なのしかいないw
これきっちり国際問題にしないなら滅ぶべき。
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