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第254話 貴族嫌いな田舎娘

「エリック殿下、申し訳ない……」


 エリック殿下の護衛として学園に同行した初日にして、完全にアムール王国の第一王子と敵対してしまった。今となってはなぜ自分があそこまで攻撃的な言動をしたのかが分からない事に、違和感と言い知れぬ不安を抱く。


「気にしなくてもいいよ! 今までもクリスチャン殿下の言動に引っ掛かる所があったんだけど……今日は特にひどかった。デミトリとのやり取りを見て、なんとなくその理由がなんだったのか分かった気がするから」

「そうか……そう言って貰えると助かるが……」


 自分のしたことに対して自戒の念を抱いている俺を見て、逡巡した後エリック殿下が言葉を選ぶようにゆっくりと話し始めた。


「僕もあの提案にはかなり頭に来たから、口が裂けても許してあげてとは言えない。だけど、一応彼も本当に危険な魔物の相手をさせようとするつもりじゃなかった……その可能性が高いとだけ言っておくね?」

「……どうせ口調を直せという自分の要望が通らず、思い通りにならなかった事が気に食わなかったから少し脅してやろうとでも考えていたんだろう?」


 俺の指摘にエリック殿下が曖昧に笑ったが、彼の反応からしてそう言った行動は日常茶飯事だったのだろう。


「大方、今までその手口を使った相手は学生平等とは言え第一王子だからと引き下がっていたが……俺はクリスチャン殿下がはったりのつもりで売った喧嘩を買ってしまった。それで引っ込みがつかなくなったんじゃないか?」

「はは、本当に話が早いね! それだけ頭の回転が速くて学がないって言うのは謙遜が過ぎるんじゃないかな?」


 ――頭の回転の速さと博識さは比例しないからな……


 言葉を呑み込みハルピュイアの死骸を仕舞い、クリスチャン殿下の側近に掛けた水を魔力操作で集めて凍らせて、尿が混じっているのを思い出し氷球の周りに新たな氷の膜を作ってからこちらも収納鞄に放り入れる。


 ――後で捨てないといけないな……


「思ったけど、デミトリの理詰めの仕方は兄さんに似てるね! 昔こっぴどく怒られた時の事を思い出したよ……」

「アルフォンソ殿下と……? 俺は殿下に遠く及ばないと思うが……先程クリスチャン殿下に言った事も理屈がおかしい部分も多かった」

「え~? そんな事ないと思うけど――」

「確かに、お兄さんは勢いでごり押してたけどクリスチャン殿下が冷静だったら危なかったかもね!」


 急に会話に割って入って来た声の方に振り向くと、アルセとセレーナがそこに立っていた。


「会話の邪魔をしてしまって申し訳ありませんエリック殿下、デミトリ殿。揉めているようだったので必要であれば仲裁しようと思い少し距離を置いて見守っていたのですが……」

「き、き、き――」

「き?」


 エリック殿下がセレーナに聞き返されて完全に停止してしまったので、不敬だと思いつつ肘で彼の脇腹を突く。


「うっ! あ、気にしなくてもいいよ!」

「気を遣ってくれてありがとう、アルセ殿」


 ようやく言葉を発したエリック殿下に注目を集めないためにすぐさま俺も被せ気味に話し出したが、セレーナはそれが面白くなかったようだ。


「……私も来たよ?」


 アルセの方を見ると、ぎこちなさそうに首を縦に振った。完全に善意のみで動いたわけではないかもしれないが、助けに来ようとしたのは本当なのかもしれない。


「……ありがとう、セレーナ」

「どういたしまして!」

「あ、えっと、やっぱりし、知り合い……だったの?」


 エリック殿下が何かを悟ったような表情をしているのですぐに誤解を解くために訂正する。


「知り合いじゃないから安心してくれ」

「私のことを知ってて、会った事があるのに?」

「……出会った状況を思い浮かべて、その状況下で遭遇した人間同士が互いを知り合いと呼ぶ間柄になるのが一般的かどうか、一度ちゃんと考えてくれ」


 セレーナはむすっとしたが、それ以上反論はしなかった。


 ――エリック殿下が彼女の事が気になるのであれば、俺は話さない方がいいな……


「俺の事はともかく、エリック殿下にはちゃんと自己紹介を済ませているのか? ほとんど授業に出ていないんだろう?」

「……はじめまして」

「セレーナ……!」

「……セヴィラ辺境伯領出身のセレーナです。よろしくお願いします、エリック殿下……」


 アルセの促しでやっとちゃんとした自己紹介をしたが……急に静かになってどうしたんだ?


「初めまして。僕はヴィーダ王国第二王子のエリック。よろしくね?」


 俺とアルセにはあれ程馴れ馴れしく話していた癖に、なぜセレーナは急に黙り込んだんだ……


 自己紹介を終え、会話が一切続かないエリックとセレーナから一歩身を引きアルセに小声で話しかける。


「アルセ殿、彼女はいつもああなのか?」

「……貴族や、特に王族が苦手らしい。小さな村の出身だから無理もないが……」

「学生平等とは言っても、先程のような事があるからな……警戒しておくことに越した事はないが、あそこまで行くと学園で過ごすのに支障が出ないか?」


 アルセは腕を組みながらゆっくりと頷いた。


「詳しくは教えて貰えなかったが、授業に出席しない原因の少なくない部分はそこに由来しているらしい」


 貴族嫌いか……一朝一夕でどうにかなる問題ではないな。

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