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第124話 舞い込む面倒事

 職人街に向かう途中、繁華街を経由して冒険者ギルドを訪れた。相変わらずギルドに屯している冒険者達の視線が痛かったが、ヴァネッサと納品窓口に向かった。


「お、デミトリじゃねえか。またタスク・ボアの納品か?」

「今日は違うな。俺が倒したクラッグ・エイプの素材がギルドに届けられてるはずなんだが、知っているか? 全部ギルドに卸したいんだが」

「マジか! ギルドとしては助かるが本当にいいのか?」


 討伐依頼の出ていない魔物や魔獣の素材は、買い取り額が減ると講習でイムランから聞かされていた。


 ――確か冒険者に依頼の受注を優先させるのと、流通を調整しないと市場が乱れるかららしいが……相変わらずギルドの影響力の規模感がおかしいな。


「ああ、ギルドの査定額で問題ないから引き取ってほしい」

「分かった、査定書を持ってくるからちょっと待ってくれ!」


 大急ぎでカウンターの奥に向かった職員が向かって行く。


「素材は全部売っちゃってよかったの?」

「持っていても使い道がないからな。防具の素材としては優秀らしいが……」


 素材を持っていても、防具に加工して貰うのに金が掛かる。結局先立つものがなければ宝の持ち腐れだ。


「待たせたな! こいつを受付に持って行ってくれ!」

「ありがとう」


 職員から査定書を受け取り、受付に向かう。習慣で一番右の窓口に並び、順番が回って来たのと同時に受付にリアが俺達を見て大きな溜息を吐く。


「……どうしたんだ?」

「やっぱり女じゃない」


 『どうせ酒か女でしょ』


 先日口座残高を見られた後、リアに言われたことを思い出す。


「ちが――」

「冒険者ギルドへようこそ!ご用件は依頼の発注でしょうか、それとも受注でしょうか?」

「……素材を売ったから、査定書を確認してほしいのと憲兵の捜査に協力した実績が認められたはずだ。報酬の確認をお願いしたい」

「分かったわ、冒険者証を頂戴」


 リアが俺の冒険者証と査定書と受け取り、内容を確認してから査定書を横に置き机の上の資料に置いてある大量の書類を漁り始めた。


「デミトリが関わってたのは……これね。不正を働いたバレスタ商会の商会長捕縛捜査への協力が実績として認められるわね。憲兵からの依頼で三日間待機を依頼されたから、十万ゼルが口座に踏み込まれるわ」

「額がおかしくないか?」


 三日間待機しただけで、十万ゼル支払われる意味が分からない。


「やっぱり少ない?」

「いや、逆に多すぎるんだが……」

「銀級冒険者なんだからこれでも少ないでしょ」

「どういうことですか?」


 俺とリアのやり取りを見ていたヴァネッサが質問する。


「銀級のパーティーが月にこなす依頼の平均報酬額が大体二百万ゼルなの。毎日依頼をしてるわけじゃないけど、一日あたり六万ゼル以上の稼ぎになるわ。三日間も待機してたし、これからすぐに依頼を受けられるとも限らないから十万ゼルだと稼ぎが減るでしょ?」

「俺は、実質二日程度しか待機していないが……」

「それでも三日分振り込まれるわ。稼げたはずの報酬額すら満額支払われないのに、依頼した待機日数よりも早く事が片付いたからってそこまでけちけちしてたら……冒険者は誰も待機依頼を聞いてくれなくなっちゃうでしょ?」


 リアの説明を聞き、そもそもソロ活動を前提に考えている自分の認識が間違っているかもしれないと気づく。


 ――冒険者パーティーは大体三人から四人で組む場合が多い。三日で十万ゼルはソロで活動している俺からしてみれば高額だが、四人で割った場合を考えると……依頼を受けられなくて実入りが減る事も考えたら、確かに少ないのかもしれない。


「……分かった、説明してくれてありがとう」

「どういたしまして。クラッグ・エイプの素材の売却額はそのまま口座振り込みで良い?」

「それで頼む。後、口座から三十万ゼル引き下ろしたいんだが――」

「前も言ったけど、お金が入ったらすぐに使う癖は直した方がいいわよ! ちゃんと貯金しなさい!」


 ――いつ王都に行くか分からないが、手持ちがないと宿を延長する場合宿代が払えなくて困るのと食費が必要なだけなんだが……


 呆れながら報酬の入金処理をするリアを見ていると、ヴァネッサに掴まれた左手に鈍い痛みを感じる。


「仲が良いんですね?」


 無意識に身体強化を発動しているのか、ヴァネッサの手を握る力が段々と強くなっていく。


「デミトリはタイプじゃないから心配しなくてもいいわよ。三十万ゼルの引き落とし処理をしてくるから、ちょっと待ってて」


 そう言い残し、リアが建物の裏に消えて行った。


「……タイプじゃない……!?」


 一拍遅れて反応したヴァネッサが、敢えて聞かなかった振りをしていた心を抉る発言を繰り返す。


 ――ラーラに髪型について指摘された時もそうだったが、ヴィーダ王国では異性が好ましくない容姿をしていたらはっきりと伝える国風なのか……?


「デミトリ……私はデミトリの事をかっこいいと思うよ」

「……やめてくれ……慰められると余計心が痛む……」

「別に慰めじゃ――」

「はい! 冒険者証と三十万ゼル。計画的に使うのよ」

「……そうする」


 受付に戻って来たリアから金と冒険者証を受け取り、ギルドを出ようと出口に向かって歩き始めると行く手を四人の冒険者に阻まれた。


「君、見かけない顔だがこれはどういう事だ!?」

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