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第117話 王都への誘い

 ――様子見でセイジを使って俺にちょっかいを出したつもりが、窮地に追い込まれて開戦派も焦っているのか……


「このまま君をメリシアで保護するよりも、いっそのこと王都で王家が保護したほうが良いかもしれないという話は前から出ていた。君はヴァネッサを守るために彼女の傍に居たい、そしてヴァネッサに監視魔法を掛けられたくない。二人一緒に王家の影になってしまえば、我々も君を開戦派から守りやすくなって一石三鳥だと思わないか?」


 ――ニルの話し振りだと……それ以外に監視魔法を回避する方法がなさそうだな……


「……ガナディア人の俺が王家に保護されて、王家の影に所属するとなると……俺が王家に取り入って国を陥れようとしていると開戦派が騒がないか? 余計収拾がつかなくなるだけだと思うが……」

「そう言った懸念もあって、当初デミトリの事を王都から程遠いジステイン伯爵領で保護するつもりだったんだが状況が変わったんだ。君が教会に襲われて保護先をオブレド伯爵領に変えざるを得なかった時点で、君を王都に招くべきか議論されていた」


 ――一国の行く末を考えているんだ、俺が予想する様な事は王家側も大体想定している可能性が高いな……


「それでも君の事を王都で保護する事に躊躇していたのは、主に二つの理由からだ。一つ目は開戦派を刺激したくなかったからだが、事が動き始めている以上それはもう気にする必要がない。二つ目の理由は君がガナディアから来た諜報員かどうか判断がつかなかったからだが、それも問題なさそうだ」


 ――ジステインの異能で確認したのにまだ疑っていたのか……? そうか……ジステインが万が一開戦派と繋がっていたら虚偽の報告をするかもしれない、と騒ぐ保守派がいてもおかしくないか……


「……諜報員かどうか分からないのは、今も変わらないんじゃないのか?」

「エスペランザから上がって来た報告だけでなく、メリシアでの君の行動は逐一上に報告していた。君の行動と関わった人間からの評価を考慮すると、王都に招いても概ね問題なさそうという意見は既に出ていた。それでも一部の保守派は異を唱えていたんだが――」


 今まで俺の事を見て話していたニルが、ヴァネッサの方に視線を移す。


「――ヴァネッサの事を命懸けで守る気概があるなら問題ないだろう。言い方は悪いが、彼女の身の安全さえ保障されれば君が王家に仇なす事はないだろう?」

「本当に言い方が悪いな。要するに保守派は俺が裏切らない保証……人質がいれば俺が王都で保護されることに賛同するという事だろう?」


 ニルは何も言わない。沈黙が答えと言う事だろう。


「……王家の影になった場合、ヴァネッサに監視魔法やそれ以外の魔法を掛ける事は絶対にないんだな? 魔力を封じたりもしないな?」

「しないな」

「王家の影の業務内容が良く分からないが……やりたくない事を、無理やりさせられないか?」

「殺しや拷問ではなく、デミトリが心配してるのは色仕掛けとかだろう?」


 ――敢えて直球の表現を避けていたんだが……


「王家の影と言っても、諜報活動以外を任される者も多い。王家に仕える侍女や騎士の中にも、王家の影の者がいる。もちろん配偶者や恋人のいる者も多いし、本人の意思を無視して無理やり望まない業務はさせない。君のパートナーにそういう仕事は任せないから安心してくれ」


 咄嗟に訂正しそうになったが、ヴァネッサの身を守る口実になるなら勘違いされたままでいいので口を噤む。


「デミトリ、だめです……」

「ヴァネッサ?」

「私のせいで、この国に縛られたら嫌です」

「……だが、これ以外に方法が……」


 深刻な表情でこちらを見つめるヴァネッサと顔を合わせていると、横から大きな溜息が聞こえてくる。


「二人で盛り上がっている所悪いが、本当にそこまで深刻に捉えなくても良い。信じてもらえるか分からないが……私は基本的にメリシアを拠点にしているが、年に一度一月の長期休暇を貰って国内を旅している。去年なんかは、長期休暇中に妻と隣国のアムールに観光に行ったし、定年後は田舎で余生を過ごすつもりだ」

「「え」」

「開戦派の件が片付くまでは少し不自由を強いられるかもしれないが、片付いた後は割と自由に過ごせると思うぞ?」


 王家の影と言う物々しい役職なのに、想像以上に自由を許される事に困惑してしまう。


「……考えてみてくれ。魅了魔法の使い手を囲い込むために王家の影に引き入れて、その後不遇な扱いをしたあげく反旗を翻されたら意味がないだろう? 魅了魔法の使い手じゃない王家の影も同様だ。王家に一番近い位置で働く者を不当に扱っていたら、忠誠を得るどころか寝首を掻かれるだけだ」


 ――言われてみれば、そうかもしれないが……


「いずれにせよ、ヴァネッサが魅了魔法をある程度制御できる様になるまで王都に招くことができない。すぐに決断する必要もないから、ゆっくりと考えてみてくれ」

「分かった……ヴァネッサもそれでいいか?」

「はい……」

「よし! それじゃあ、魅了魔法の制御の指導を始めようか」

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― 新着の感想 ―
ええぇ・・・? どういうこと? どうしたいの? これも神呪の影響なの? それとも魅了魔法にやられてんの? メリシアに到着してからのデミトリの意思・行動があまりにも場当たり的すぎるように感じる 「デミト…
やっかいな亡命者の身分で亡命先の貴族から援助や過剰な便宜を図ってもらっているくせに、危険極まりない魅了魔法の人間を何の制約も無しに野放しにしてくれとかよく言えたなこの主人公
同じ感想持った人がいたんだな。 魅了魔法云々の話っている?と思いました。 エピソードのひとつとしてあってもいいけど何話にも渡って続くとしつこい、胃もたれする。 ちゃんと一字一句読んでましたがエピソード…
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