王の定型文
「方針を伝えます!」
誰一人振り向かないのは、耳を傾けてくれている証。
「遊撃部隊の皆さんは雑魚達を掃討、
後衛が遠距離から杖持ちを直接狙います!、
八八さんは後衛を守ってください!」
吐ききった息を吸い込む。
「桃子猫さんにはボスとの一対一で、
大火球を逸らしつつ時間稼ぎお願いします!」
「ウン!」
桃子猫は正面、遊撃部隊は左に走る。
当然の事ながら、
空いている右方面から火球が飛んでくる。
「お願いします!」
『任されました!』
八八の大盾が難なく火球を弾く。
「プティーさん!私達も」
弓を引き絞り矢を放つ。
火球の残弾が分からないので節約する。
『はい!投石!』
杖持ちを狙った直接攻撃は、
敵味方の障害を通り越して直撃する。
魔法を相当練習したのだろうか、
杖によって強化された投石は
上手く放物線を描いていた。
負けていられないな。
続けざまに矢を放つ。
『投石!』
杖持ちは順調に数を減らしつつある。
桃子猫は王スケルトンの注意を引きながら、
その上カウンターも入れている。
最適解を見つけてしまえば早いものだったな。
『カン!』
丁度王スケルトンを見ていた時に、
奴は錫杖で地面を突いた。
『おお!死んでしまうとは情けない!
復活せよ!勇者たちよ!』
『カタカタカタカタカタ』
杖待ちや遊撃部隊が倒してくれた雑魚達が、
一斉に起き上がる。
よくある雑魚を無限に召喚するタイプのボス。
厄介なのは、
復活するのが無視できない雑魚ということ。
王スケルトンと雑魚の対処は
並行して行わなければならない。
ただそれだとジリ貧は必死。
王スケルトンに火力を注いで短期決戦に臨みたい。
「プティーさんはこのまま杖持ちを狙ってください、
私はボスを狙います!」
『わかりました!』
狙うと言っても、中途半端に攻撃すれば
ヘイトがこちらに向いて八八の負担を増やす。
ボスの周りを高速移動する桃子猫に、
当たらない保証は無い。
絶対に当たる取っておきのタイミングで、
火球矢を打ち込みたい。
一発分くらいは出せるはず。
まずはボスの行動パターンの把握。
接近戦は杖による薙ぎ払いやつかみ攻撃が主。
ただその密度や角度はその時によって
まちまちであり、楽に反撃はできない。
桃子猫が張り付いてくれているおかげか、
大火球は飛んでこない。
だとしたら、狙うのはあのタイミング。
いつでも発射できるように矢じりを杖の先にかざす。
その体勢で桃子猫を見つめる。
少しでも私が視界に入って、意図が伝わればいいが。
桃子猫が見事な跳躍でボスを飛び越した時、
一瞬目があった。
振り返りざまにこちらに手を振った。
意図が伝わった合図か、お茶目が出ちゃったか。
確かめようはないので、ただ信じるしかない。
雑魚の数が減ってきた。
来る。
『おお!死んでしまうとは「火球」




