フランクかお姉様か
「いただきます…」
角度が難しいな。
丼に顔を近づけるのは意地汚いし、
遠すぎると運ぶ途中に落としてしまいそうだ。
片手で持つにはこの丼はやや大きい。
いい感じの角度を見つけるしかないか。
だとすると桃子猫は髪が垂れて掛かるんじゃ…。
『パチン』
あ、纏めた。
ポニーテールの桃子猫は新鮮だ。
「…イル?」
「…あー」
掛かるほどの長さもないが、
一応あった方がいいのかもしれない。
「欲しいです」
伸ばした手を避けられ、背後に回られる。
着ける気だ。
『パチン』
「…」
その様相は、まるで締め切り前の漫画家のよう。
こうなると思った。
「…フ」
着けた側が笑うんじゃないよ。
床食いのお手並み拝見。
「アム」
少し背を傾けて、少し運ぶ。
確かに良さそうな食べ方だ。
「んマ〜」
早速感想を零している。
どれ一口。
「…美味しい」
時間が経って蒸れたせいで、
天ぷらの衣がシナシナになってしまっていたが、
それで逆にタレとの相性が良くなっている。
中の具材にも染み込んでいて、新感覚の天ぷらだ。
「デショ?」
「うん!」
無心で食べ進めてしまうくらいには、
本当に美味しい。
無心だからこそだろうか、無音が目立つ。
桃子猫の箸が進んでいない。
「どうしました?」
気に入らない具材でもあるのだろうか。
「ソノ…初めてウンって」
「うん?…ああ」
少々返事がフランクになったことか。
「以前も言ってませんでしたっけ?」
「言ってナイ。んー、もっとコウ、仲良く?話ソウ」
「でも、お姉様にそういうのは失礼かと…」
「アー」
逃げの口実に使わせてもらう。
自分から要請した手前、
お姉様関連のやり取りは
反故にしずらいだろうそうだろう。
「ンー、ナルホド、確かに、ワカッタ」
納得してくれたようだ。
箸を進める。




