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意趣返し


結構我慢していたのだろうか、長く籠っている。

その間に考えついたことがある。

桃子猫は寝てる人間には触るものだと言っていた。

語弊があるかもしれないが、

だいたいそんなニュアンスだった。

そして今私は、ベッドで仰向けに寝転んでいる。

緩慢な呼吸に慣れ、

触られても動じないシミュレーションをした。


『ガチャ』


来た。

さあどうする。


「ン…」


激しい足音などはなく、ゆっくり近づいてくる。


「…」


何となくだが、

顔が近づいてきて間近で

見られているような気がする。

それ以外は何も無い。

あれだけ言っておいて自分は触らないのか。

こんな無防備な、

あるいは展開的に触れと

言っているようなこの状況で。

触りたくない要素でもあるのだろうか。

汗かいたし匂いがきついとか?。

心配になってきた。


『ギュ』


手を握られる。

なんだようやくか。

それにしても、大分安牌を攻めたものだ。

何度も握られ、揉まれたり指の間に指を通してくる。

なんというか、

触覚だけというのはいささか

官能的な情緒が出てくる。

握手とか恋人繋ぎとか、そういう範疇を超えた手技。

友情、劣情、嘲り、様々な思惑が伝わってくる。


「ッ…」


何か、手を指で掘り進めるような動き。

摩擦による発汗もあいまり、

度し難い水音が聞こえ始める。

そして顔が近づいてきてるのか、

顔の付近が生ぬるい空気で満ちる。

それが呼気と分かった時には、

既にソーシャルディスタンスを貫通していた。


『ムニュ』


柔らかいものが頬に触れる。

若干湿り気を帯びているような。


『チュッ』


離れた時の、独特な音。

これは、キスされたな。


「フフフ」


いつの間にか、顔が耳の方にきている。


「顔、赤イヨ」

「ッ!」


もはや限界、即座に布団から離れる。

気づいていたか。


「ンフフ」


それでいて反応を楽しむとは、

本当にいい趣味している。

そして図らずとも、また壁際。

謀られた可能性も否定しない。

また追い詰められる。


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