安息
意識が戻る。
「開ケテ」
「ん…」
久しぶりの光を眩しく感じる。
だが慣れてみると、妙に薄明るい一部屋。
中央に据えられた大きめのベッドが目立つ、
それ以外は何の変哲もない部屋。
「ヨッコイショ」
桃子猫が先にベッドに潜り込んだ。
何をする気だろう。
というかなんのためにここに来たのだろう。
「あの…『パタパタ』
布団の中から端っこをはたいている。
中に入れということか。
「よっこい…う…」
アバターが三角形なせいで上手く登れない。
「どうしましょう」
「デフォルトのアバターでイイカラ」
結局最初のアバターに戻った。
「よっこいしょ」
布団に潜る。
ゲームする前と状況が似てしまった。
「何をするんです?」
「何もシナイ」
「?」
「ただゴロゴロする」
布団に顔を埋めているのか、声がくぐもっている。
「旅行のつもりデ日本に来たノニ、
皆仕事の話バッカリ…疲れた」
「あぁ…」
そういえば、観光中にも電話が来ていたようだった。
本当に、彼女の安息はゲームの中にあるのだろう。
「今日は、私の家に泊まってもいいですよ」
「ホントに!?」
「ええ」
「ヤッタ!」
『ギュ』
「おうふ」
布団の中で抱きつかれた。
「ナデテ」
「はいはい」
アバターが違うからか、
ドッペルフリーの時とはまた違った手触り。
手触り?。
プレイヤー同士の接触は同意がないと出来ないはず。
フレンド。
一定時間の経過。
親しいフレンド。
目隠し。
謎の承認。
点と点が線で繋がっていく。
「桃子猫さん?」
反応無し。
「お姉様?」
これでも反応無し。
『フレンド桃子猫がログアウトしました』
あ、逃げた。
負けじとこちらもログアウトする。




