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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【死神に狙われる!】編
96/251

第95話 ゴブリンガールは仲裁する!

挿絵(By みてみん)



 大ピンチに突如飛来した性悪魔女アルチナ。

 空中に停まる藁ボウキの上からニマニマとアタイたちを眺め回している。


「相変わらず頭がカタイのね~。篝火が視えなくたって彼は確かに生きている。そんなの見れば判ることでしょ~?」

「……転生なんて馬鹿げた話、聞いたこともないわ」

「自分が知らないなら起こり得ないって? そういう己惚れたとこ、さすがは神様を名乗るだけあるよね(笑)」

「チッ……!」


 シビリオの鎌は依然として異様な発光を続けている。

 おそらくアルチナが登場と同時に何らかの攻撃を仕掛けたのだろう。

 彼女は潔くそのデスサイズを地面に放り捨てた。


「あらあら~。そう簡単に(まな)武器を手放しちゃうなんて、思い入れってものがないのね。死神って冷酷~」

「あんたのことだから、どうせえげつないトラップ魔法を掛けたんでしょう」


 丸腰になったシビリオだが、戦意まで失ったワケではない。

 むしろこれまで以上の殺気を放ちながらアルチナに向けて武術の構えを取った。


「アハハ。殺る気まんまんね~」

「笑ってないで降りてきたらどうなの。『ギルド潰しの凶魔女』……!」


 何やらこの2人、ただならぬ因縁があるみたいだよ?


「アルチナさん。助けに駆けつけてくれたのは感謝しますが……」

「事を荒立てるだけなら帰ってくんな! この疫病神!」

「や~ん。つれないのねぇ」

「仲裁するのか挑発するのか、どちらが目的なんですか?」

「うふ、そのどっちもかな~?」


 アルチナはレベル90を超える伝説級の勇者。

 故に方々のギルドから加入を願う打診を受けていたという。

 彼女の取り合いはやがて大きな抗争へと発展した。

 それが過去に起こったというギルド間戦争であり、『ギルド潰しの凶魔女』という通り名の由来だ。

※詳しくはメインクエスト【スマホを失くす!】(第55話~)を参照。


「あのとき大勢の人々の篝火が弱まるのが観測された。戦争の勃発を見越して私たち教団が介入しなければ被害はもっと大きくなっていたはずよ」


 はえー。そういうのも死神の仕事なのね。


「ちょっとやめてよ~。私が悪者みたいに言わないで? 奴らが勝手に潰し合っただけ。私は元からどの勧誘も断ってたのにさ~」

「黙りなさい。教団が事態を収めるために奔走していたというのに、元凶であるあんたは知らんぷりで姿をくらまし高みの見物を決め込んでいた。こんな女、いなくなった方が世界はずっと平和になるわ」


 うん……。

 その意見には賛同せざるを得ないかな。

 取り巻きのアタイたちはシビリオの発言を肯定するようにコクコクと頷いた。


「はあ~。私はいつだって独りぼっち。ホントはみんなと仲良くしていたいのに、どうして空回っちゃうんだろうw」

「語尾に嘲笑が含まれてんだよ!」


 ったく、いつ見てもいけ好かない女だねこいつは!


「アルチナ。あんたにとっては新しいオモチャを見つけたくらいの気持ちでしょうけど、この男を放置して新たな災厄の火種になったらどうするつもり?」

「なにソレ~! 超楽しそう~!」

「チッ。話にならないわね」


 浮遊していたホウキは徐々に高度を下げ、やがてアルチナはフワリと地面に降り立った。


「この世から私を消し去る? ならやってみなよ~。でもその前にご自慢の『死神の眼』で確認してみたら? 私の篝火はボウボウと勢いよく燃え上がっているでしょうね~。あなたひとりで死期を縮めようなどと考えられる余地もないくらいに……」


 アルチナの瞳が赤く光る。

 それに対抗するようにシビリアの眼も青く発光した。

 両者の視線が中央でぶつかり合い、見えない火花を散らすようだった。


「――いい加減にしてください!」


 殺伐とした空気を一転させたのはシブ夫の怒号。

 怒りを湛えた顔でツカツカと二人のあいだに割って入る。


「……僕たちはずっと堂々巡りをしているだけです。冷静になれば言葉で解決できるはずなのに、どうしてこうもいたずらにこじらせるんですか」


 その迫力に思わず気圧されるアタイたち。


「アルチナさん。まずあなたはどいてください。邪魔です」

「シブ夫クンってば、いけずぅ♡ 退散退散……」


 新参勇者が伝説級の勇者を一言で退かせるという異常な光景。

 端から見れば混乱すること間違いなしだろう。


「シブ夫きゅん……。シビれるぅ……」

「ハアハア! うっ……!」


 どこからか気色悪いホモの鳴き声が流れてきたが、いまは聞かなかったことにした。


 シブ夫はキッと鋭い視線でシビリオに向き直る。

 思わず後ずさるシビリオ。


「僕があなたの言うアンデッドであるならば斬ればいい。やがて魔物化して人を襲うようになるくらいなら、僕自身もそれを望みます」

「ええ……」

「ですが現状モンスターへ変貌する気配はありませんし、仮にアンデッドと化したとしてもあなたの実力なら造作もなく退治できるでしょう。それを頑なに、今やらねばならないんですか?」

「………」

「そんなことよりも僕はあなたの話を聞きたいんです。なぜ僕に篝火がないのか。転生者とはどういった立ち位置にあるのか。それを知ることは教団にとっても少なからず益になるはずです。あなたは気になりませんか」

「………」

「気になりませんか?」

「……なります」


 おお!?

 あの堅物の大鎌女を屈服させたよ!

 さすがはアタイたちのシブ夫!


 ひとまずは一時休戦のようだけど、まだまだ謎は残っているよ。

 それじゃあ武器は置いて、今後のことについて話し合うとしようじゃないか!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 頭を冷やすために一同は集落の村長宅へと場所を移した。

 タジが耕した畑で収穫した野菜を老害村長が丹精込めて調理する。

 そうして食卓に並ぶのはどこか郷愁に満ちた色とりどりの惣菜たち。

 茄子の柴漬けにたくあん、おしんこう。

 でもやっぱりアタイはきんぴらごぼうが一番かな?


【第96話 ゴブリンガールはコタツに潜る!】

 ぜってぇ見てくれよな!



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