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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
サイドクエスト【百鬼夜行する!】編
83/251

第82話 ゴブリンガールは蛇に睨まれる!

挿絵(By みてみん)



 大五郎の裂けた脇腹にガーゼ代わりの御札を貼るミクノ。

 出血に対しても多少なりの遅延効果があるらしい。


「最低限の血の流れは抑えましたが、これは応急処置にすらなりません」

「痛覚も止まってくれれば楽なんだがのう」


 大五郎は脂汗を滝のように流している。

 瀕死の重傷じゃないか!

 マジで死んじまうんじゃないだろうね!?


「ここで朽ち果てるもまた一興よ……」


 なに興じてんだよ!

 百歩譲ってあんたは良くても、巻き添え喰らうアタイらはクスリとも笑えないっての!


 7つになった大蛇の頭はアタイらを取り囲むようにウネウネと迫ってくる。

 絶望感を上乗せするように不穏なぬるま風がアタイらの顔をヌルリと吹き撫でた。


 ヒエエ……もうおしまいだあ……!


 アタイは助けになるものを探そうと周囲を見回してみる。

 でもスラモンは縮こまってブルブル震えているだけだ。

 あずにゃんはとっくのとうに尻尾を巻いて逃げ出しちまったしね。


「くそっ! こんなときにジョニーがいてくれたら……!」


 角凧ごとどこかへ飛ばされてしまったジョニー。

 あいつが今この場にいてくれれば……!


 ……………。

 ……いや、いたところでどうにもなんないかな。


 ――――だがそのとき、アタイの想いが天に通じたのかもしれない、

「おおーい!」

 微風が強さを増して横殴りの暴風へと変わり、それに乗ってジョニーの声が運ばれてきた。


「あっ! あそこ!」


 見れば夜空の向こうから失踪していた角凧が漂ってくるではないか!


「ジョニー!」

「やっぱり俺がいないとダメダメだなw 待ってろ! すぐ助けに行ってやるぜ!」


 最高にイカした再登場を飾るジョニー。

 だがその直後、横風に煽られて凧から振り落とされてしまった。


「あら~!w」


 そのまま地面に激突してバラバラに飛び散った。


「うわあ……」

「なんのために出てきたんだよコイツ……」


 ジョニーを失った凧は依然としてユラユラと周囲に浮かんでいる。

 大蛇はその煩わしい障害物も叩き落そうと首を振るった。

 だが凧はヒラリと器用に身を翻し、攻撃かすめて宙を旋回する。


 ……なんだかあの凧、妙な動きをしているね。

 単に風にはためいているだけとは思えないよ?


 7つの頭はそれぞれが躍起になって獲物を追う。

 だが掴みどころのない凧の動きに翻弄されて一向に捕まえることができない。

 目を回すような追いかけっこの末に、なんと隣の首同士で絡まり合ってしまった!

 そうしてこじれる蛇頭に凧から垂れる長糸がグルグルと巻き付いた。


「八つ又のそれぞれが独立して思考し振舞う。これ以上ない脅威に思えますが、果たして利点ばかりでしょうか。あれだけの近距離で常に互いの干渉を避け合うのは至難のはず」


 ミクノを見やると、彼女の両手は胸元で固く組まれ、そこから淡い光が発していた。

 それに呼応するように角凧もうっすらと同じ色の光彩を帯びる。


「ミクノ、あんたまさか……!」

「さようです。凧に印を記しておきました」


 もしかして筆で願い事を書いたあのとき?

 こうしたピンチを見越して魔法陣を書き込んでたってのかい!?



~縛行の印(アビリティレベル52)~

 封術魔勇士(まゆうし)の習得する捕縛系統のデバフ魔法。

 印を施した物体に触れたものの自由を奪い、一定時間行動を制御する。



 魔勇士のスキルの中には道具に印を付けることで効力を強めるタイプのものがある。

 あの凧も普段使う御札と同様に魔力を発現してくれるってワケだね!

 ミクノの奴、さすがに抜かりの無い女だよ!


 光をまとう凧糸が大蛇を締め上げるように絡みつく。

 今や7つの首はギュウギュウにこんがらがり、まるで図太い一本のようにまとまっている。


「でかしたぞ。あれならばかろうじて拙者の居合に入る」

「斬れますか? あなたの体が持つかどうか」

「いずれにせよ全身全霊を懸けるのみ」


 大五郎は腹の傷で血濡られた体を起こし、再び刀を鞘に納めて構えを取る。


「やっちまいな大五郎!」


 極限の集中。

 今だけは風の動きもピタリと静止し、周りの空気がピンと張りつめる。


「喝ッ!」


 文字通り瞬きをする間の出来事だった。

 放たれた抜刀は一直線に空間を裂いて大蛇へ迫る。

 そして見事、滑らかな断面を作ってその首々を一息に断ち切ったのだった――――。


 ズドオォン……!

 丸太のようになって倒れ込む一体化した大蛇の首先。


「やったー!」


 狂喜乱舞で飛び跳ねるアタイ。

 今回も見事に高難度クエストを生き延びたよ!

 うほほーい!


 だがしかし、大活躍を見せた大五郎はさっきから腕を広げた姿勢のままで微動だにしない。

 どうしたのさ?

 カッコでも付けてんのかい……?


「いけない……!」


 ミクノが目を見開く。

 見れば彼の腹に貼られた止血の札は大きな動作によって千切れてしまっている。

 そして大量の血が辺りのススキの穂を赤く染めているではないか!


「久々に、こたえる戦でござった……」


 弱々しく言って大五郎はゆっくりと地面に倒れた。


「大五郎っ……!?」




~~~


 翌日のバーンズビーンズ。

 いつも大繁盛のスナックピク美だが、今日は珍しく客がまばらだ。

 まあおかげでゆっくり呑めるからいいんだけどね。


 指定席になりつつあるカウンターに座り、アタイとジョニーとスラモンのザコモントリオは祝杯の酒を煽っていた。


「久々に難儀なクエストだったね」

「ていうか毎回思うんだけど俺たちあの場にいる必要あったンだわ?」


 ないね。

 何の役にも立ってないし。


「なあ、俺のあばら骨が一本足りなくねえか?」

「マジかよジョニー。一体どこで失くしたんだい?」

「心当たりがあるとすればあのススキ原しかないな」


 げえ。

 妖怪の棲みつくフィールドになんかもう二度と足を運びたくないよ。

 十五夜の満月と生温かな風、揺れるススキの穂の光景がトラウマとなって甦る。


「その様子だとずいぶんと怖い思いをしたみたいだねぇ!」


 ママがニヤけながらヒラリと飛んでくる。


「そんなあんたたちに朗報だよ~! また怪しげな新種の魔獣が出たそうだ! 見た目はキツネだけど尻尾が9股に分かれてるらしいんだよぉ~!」


 九尾の狐!?

 頭だか尻尾だか、馬鹿の一つ覚えに枝分かれしやがって!

 数が多けりゃ良いってもんじゃないだろうが!


「ほうほう、その魔物は我が国伝承の妖魔と見受けられる。これは面白くなってきたわ!」


 カカカと笑いながらカウンター席にやって来る大五郎。


「あんたは腹の傷で瀕死のはずだろ! 呑み歩いてる場合かよ!」

「案ずるなかれ。消毒の一環でござる」

「消毒なら飲んじゃダメでしょ!?」


 まったく呑気な奴だね!

 あの戦いの後に血相変えてこいつを担ぎ、えいこらと診療所まで運び込んでやったってのに。

 人の心配を無にするような回復力だよ。


「それよりはよう準備を済ませい。さっそく出発だ。なにせ百鬼夜行の完遂のためにはまだまだ斬らねばならぬモノがわんさかおる」


 そう言いながら腰に下げた鞘に手を置き、親指で刀のツバを弾く。


「例えばそう……、西洋河童はまだ斬っておらなかったな」

「アタイを無理くり妖怪カテゴリーにぶち込もうとすんな!」


 ブチギレるアタイに動じず、このちょんまげ侍はヘラヘラと笑うばかり。

 何を言っても聞きやしない。


 どうやら百鬼夜行クエストが無事に終わるまではアタイもこいつの討伐候補に含まれたままってことらしいね!

 斬られるか手伝いをするかの2択かよ、コンチクショウがーっ!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 次のお話は時期も時期、ハロウィンのシーズンクエスト!

 ……のはずだけど、実はストック切れの状況でまだ書けてないよ!

 どんな話になるのかアタイ自身もまったくの未知数!

 果たして執筆は間に合うのか!?

 シーズンクエスト【ハロウィンする!】編、始まるのかッ!?


【第83話 ゴブリンガールはパンプキンヘッドに出会う!】

 本当に出会えんのかよ、パンプキンヘッドに!



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