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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
サイドクエスト【アーマーを着る!】編
74/251

第73話 ゴブリンガールはカタログを読む!

挿絵(By みてみん)



 ヒューゴとの合流を果たしたアタイたち一行は一休みできる場所を求めて砦内を歩き回った。

 そして行き着いたのはなんと、牢獄の中……。


 頑強な鉄格子で守られた8畳ほどの小部屋。

 普段なら近寄りたいと思うはずもない環境だが、しかしここは無人となって久しい城砦跡地。

 危険な魔獣どもから身を守るには確かにもってこいのスペースなのかもしれないね。


 それに息のつまるような密閉空間というワケでもない。

 年季が入って半壊した石壁の向こうには城の外の景色が垣間見える。

 どうやらこのダンジョンに入ってから半日以上経っていたらしい。

 すでに空は真っ暗闇で、牢屋の中に淡い月明かりが差し込んでいる。


「ここで一夜を明かすとするか」

「何が悲しくて留置所に寝泊まりしなきゃならないんだい」

「トホホ……」


 なんだか犯してもいない罪を償ってるようで気の沈む思いだよ。

 そんなアタイらをよそにテキパキと焚火と夜食の準備を進めるヒューゴとアレクシス。

 ガチめの冒険者である2人にはこうした野宿などお手の物ってところだろう。


「お疲れさーん!」

「カンパーイ!」


 道中で拾った戦利品のアルコールでとりあえずの晩酌を始める。

 アレクシスはなかなかの上戸のようだ。

 グイグイと酒が進み、気を良くしてさっそくヒューゴに愚痴を吐き出し始めた。


「ここに寄る手前で出会った旅商人がな、本当に目利きのできん奴でな!」


 そう言って以前見せた小石やら虫の死骸やらを並べ始める。

 やめとくれよ、食欲無くなっちまうだろ!


 だがそれらを見てヒューゴが大げさなリアクションを返す。


「おいおい嘘だろ! ラサラ粗鉱石に鱗粉カズラの漆枝、琥珀虫の甲殻まで! あんたの持ってるアイテムはどれも一級のレア品だぜ!?」

「ふふふ……! この値打ちが解るとは、さすがに同業の者だけあるな!」

「良ければ俺の手持ちの品と物々交換しないか?」

「ほう! 貴様のアイテムもよそでは目に掛かれない逸品ぞろいではないか!」


 勝手に盛り上がりだした挙句、アイテムの交換会まで始まっちまった。

 2人の笑い声が石壁と鉄柵に反響してうるさいのなんの。

 いい加減におしよ!


「ただのガラクタにしか見えないけどねえ」

「そうだろうな。これらはクラフト制作の素材になるんだが、いかんせんコアすぎて知名度が低い。普通の市場じゃ取り扱ってくれないだろうぜ」

「しかるべき機関に鑑定に出せば小規模のオークションを開けるくらいの稀有なものだぞ」


 マジかよ……!

 そんなに貴重なアイテムを知らず知らずに背負って歩き回っていたとはね!


「ところでアレクシス。キミがこの城砦に足を運んだ理由はなんだ?」

「ム? ちょうど良く通りがかったから立ち寄ったにすぎんのだが……」

「ということは知らないワケだ。この砦にまつわるとっておきのウワサ話について」

「興味深いではないか。財宝に関する情報でも持っているのか」


 身を乗り出して耳を傾けるアレクシスに、ヒューゴはわざわざ声のトーンを一段落として説明を続ける。


「出るらしいんだよ。『さまようヨロイ』がな……」


 さまようヨロイ、正式名はリビングメイル。

 中身が空であるにもかかわらず独りでに動き回る不気味な甲冑の魔物だ。

 その正体は鎧に憑依した亡霊とも、その他の怪奇現象だとも言われる……。


「ひい~!」

「オバケなんて相手にしたくないぜ!」

「アタイはホラーは苦手なんだよ!」


 泣きわめくアタイたちを尻目に2人は話を進める。


「厄介なことに、その動く鎧自体がかなりアンティークな青銅甲冑らしくてな」

「ほう。入手できれば付加価値も相まってかなりのお宝になりそうだ」

「是非とも一戦願いたいもんだぜ」

「無論だな」


 酒を酌み交わしてガハハと笑うヒューゴとアレクシス。


 いよいよ上機嫌になったヒューゴは、いつか見せられた勇者専用の装備カタログを取り出した。

 付箋のついたページを開いてアレクシスの前に差し出す。


「コレ。俺が追い求めてる伝説装備、『ハルガニア黄金甲冑』!」

「素晴らしい! このずんぐりむっくりでおよそ戦闘向きとは思えない愚鈍デザイン! ロマンだな!」

「ああ、ロマンだ!」


 アレクシスも頬を赤らめつつ、重マントの内ポケットから丸めた雑誌を取り出した。


「……ジャン。実は私も持っているのだ」


 そこには【イケてる女勇者の防具カタログ】の文字……。

 レディースバージョンも発刊されてたのね。

 こいつら、同じ穴のムジナってワケかい。


 表紙に書かれた

【攻めのコーデで先制攻撃! モンスターも気になるあの子もまとめて堕としちゃえ☆】

 のアオリ文句があまりにもひどい。


 バカ笑いが鳴りやまない牢獄の片隅で、アタイとジョニーとスラモンは身を寄せ合ってヒソヒソと作戦会議を始める。


「こいつら狂ってンだわ。マジでついてけないンだわ」

「こんな砦さっさと脱出しちまいたいぜ」

「その通りだよ。あんたたち、アタイに良いアイデアがあるよ」

「ええ……?」

「やめとくのが無難なンだわ。ゴブ子の悪だくみはどうせ失敗するに決まってンだわ」

「うるさいね! 黙って耳を貸しなッ!」


 アタイは気乗りしない2人の頭を掴んで強引に作戦内容を囁いた。

 決行はヒューゴとアレクシスが寝静まった後!

 今に見ていな!

 アタイらを荷物持ちとしてこき使ってくれた罰を与えてやるからねえ……!



~それから数時間後~


 すっかり夜も更けた頃を見計らい、眠り込んでいる勇者2人を残してアタイたちはコッソリと牢屋の入り口を出た。

 そして勢いよく鉄格子の引き戸を閉める。


 ガラガラ! ガシャン!

 その音でヒューゴとアレクシスが飛び起きた。


「何事だ!?」


 寝ぼけて慌てふためいている2人に構わず、アタイは無情にも牢の鍵をガチャリと閉める。


「貴様たち! これはどういうつもりだ?」

「見ての通りだよ! あんたたちを牢獄に閉じ込めて、集めたお宝は全部担いでトンズラかますのさ!」


 アタイたちは高笑いしながらスタコラと獄舎の階段を駆け上がる。

 そして壁に張り出しているレバーを勢いよく引き下ろした。

 するとトラップが作動して天井がガコリと開き、ボタボタとモールラットの大群が落ちてくる。


「鉄扉を開けなきゃアタイらを追えないが、そうすればネズミの波に呑み込まれちまうねえ!」

「フハハ! ザマアないぜ!」

「イカレポンチの探検家にはお似合いの最期なンだわ!」


 アタイらはひとしきり暴言とツバを吐き捨てると、2人の怒号を背にその場を後にした。


 見たかい?

 ついに勇者を出し抜いてやったよ!

 アア、気分爽快で笑いがこみ上げてきちまうねえ!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 どんなもんだい!

 アタイらだってやりゃあできるってことがわかっただろう?

 上機嫌で鼻歌でも熱唱したい気分だよ!

 ……だが、これですんなりお話が終わってくれるはずもない。

 果たしてこの砦に『さまようヨロイ』は実在するのか?

 そしてアタイらはパクったお宝ともども無事に脱出できるのか!?


【第74話 ゴブリンガールはアーマーを着る!】

 ぜってぇ見てくれよな!



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― 新着の感想 ―
[良い点] ジョニーとスラモン、よく分かってるわ…… それにしてもアレクシスの持ってたのはゴブ子のガラクタと違って本当に値打ちものだったんですね……
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