第71話 ゴブリンガールはビキニ騎士と出会う!
マントを脱ぎ棄てたアレクシスはほとんど裸の状態!
ちょっと動くだけで大事なところがポロリしそうなほど限界を攻めたビキニ装備だ!
盗賊たちもドン引きして後ずさりする。
「な、なんだお前は!? 痴女か!」
「ハレンチな! けしからん!」
思わず武器を落とし、両手で目を覆い隠す男たち。
だがちゃっかり指の隙間からガン見している。
「ふん! 私の身にまとう伝説装備『ヴァルネラアーマー』の荘厳さに恐れおののいているようだな!」
違えよ!
そのトチ狂いファッションにビビり散らしてんだよ!
満足気なアレクシスは何やら物々しい武器を取り出す。
金属棒に鎖が付いていて、さらにその先にトゲ付き鉄球がぶら下がったモーニングスターという武器だ。
それを振り回しながら身動きの取れない男たちを次々と殴り倒していく。
あっという間に盗賊たちは全滅した。
「口ほどにもない。動きがおろそかすぎるな。よほどの運動不足と見える」
動きが鈍かったのはお前の体に釘付けだったからだろ!
どういうふうに生きてきたらこんな勘違い女が生まれるんだい!?
「いわゆる『ビキニアーマー』ってのが存在するのは知ってたが、せいぜいコスプレの世界の話だと思ってたぜ」
「マジで着込んでダンジョンに繰り出すアホがいるなんてヤバすぎなンだわ……」
「なんだと? 貴様たちはこの鎧の素晴らしさについて認識を改める必要があるな」
アレクシスは語り出す。
元来、鎧とは体を攻撃から防護するためのものである。
その目的からより硬く厚い素材・形状のものが採用されることになるが、ここで問題となるのが重量である。
主流となるのはやはり金属製で、これに兜や武器を含めてフル装備した場合は全重量が50kgを越えることもザラ。
こと女性にとっては自分の体重に近い重荷を背負うことになる。
これでまともに戦闘をしろというのが土台無理な話なのだ。
防具の軽量化は鍛冶職人たちの永遠のテーマとなった。
いかに不要な箇所をカットして洗練を極めることができるか。
日夜研究が続けられ、その結果として軽鎧にも様々なバリエーションが誕生した。
そのひとつがビキニアーマーなのだ!
「『身体を護る』という本元のコンセプトを打ち破る大胆なデザイン設計! なんというロマンだろうか!」
「ただの本末転倒だろ!」
まったくもって理解ができない。
いや、理解できてしまったら負けだろう。
アレクシスはアタイのツッコミにも動じずに不敵に笑う。
「貴様たちも近い内に身をもって体感することになろう。この装備の素晴らしさと恐ろしさをな……」
あんたの羞恥心の無さの方がよほど恐ろしいってんだよ!
勝手に言ってろや露出狂が!
なんやかんやでアタイたち一行はダンジョンの中を進んでいく。
砦跡というだけあり、重厚な石造りをした長廊下が続く。
両サイドにはいくつも小部屋が並んでいて、時折覗いては金目のものが無いかを探す。
「さすがは元城塞! 鎧や兜のアイテムがザクザク出てくるよ!」
「鍛冶工場に売りに出せば結構な額で引き取ってくれるはずだぜ!」
ウハウハとよだれが垂れてくる。
だが問題はその重たさだ。
アイテムバッグはすぐに嵩んでパンパンになるし、ガチャガチャこすれて歩く時のバランスも悪い。
「どうだ? そんな出来の悪い鉄鎧よりも私のアーマーの方がよほど理にかなっているだろう?」
颯爽と歩を進めるアレクシス。
手ぶらのあんたは良いだろうけどさあ!
荷物持ちのアタイらをこき使いやがって、イライラしてくるね!
「ハアハア……! ちょっと休憩……」
アタイは廊下の壁にちょうど良く張り出している取っ手に手を付いた。
――――するとガコッと石壁に響く嫌な音。
続いてゴゴゴと廊下全体が揺れ始める!
「愚か者め! ギミックを起動させたな!」
砦だけあり、城内にも侵入者への対抗にいろいろな罠が仕掛けてあるらしい。
んなことアタイは知らないよお!(泣)
天井から勢いよく鉄柵が落ちてきて、逃げ場を奪うように廊下の前後方を遮断する。
そして壁面に横一列に穴が開き、そこから順に長槍が突き出してきた!
「串刺しトラップだあ!」
剣山のようにして張り出す無数の槍!
アタイらは手足や腰を折り曲げ、無理な姿勢を作りながら必死になって避け回る。
「ひぃ~~!」
運よく射抜かれることはなかったが、最後には槍の林の合間を縫うような形で挟まり、パントマイムみたいなポーズで身動きができなくなってしまった。
槍の攻撃はアレクシスにも迫る!
だが彼女は蝶のごとき軽やかさで無数の刃を華麗に回避していく。
これが鈍重な鎧姿だったとしたらここまで俊敏に動き回ることはできないだろう。
躱しきれないコースの槍もあったが、それは見事に小面積の鎧に命中して弾き返された。
いや、どうやらアレクシスが射線を読んで体をひねり、鎧の位置をピンポイントにそのコース上へと持っていっているようだ。
「見ての通り鎧部位の防御能は十分。攻撃を受けたとしても致命傷は避けられる。それを見越したアーマーの設計なのだ」
なるほど……!
最低限の防具の働きは残したまま、限界まで身軽さを追求した回避特化型のアーマーってことだね。
だがしかし、今のアレクシスの動きは素人がマネしてできるものとは思えない。
「私は鎧術闘勇士。防具を体に馴染ませれば無類の防御・回避能を発揮することができる。ビキニアーマーの持つクセはジャジャ馬並みにひどいものだが、この私ならば使いこなすことが可能」
欠点だらけのビキニアーマーから上手にメリットだけを引き出してるってワケかい!
この変態ハレンチ女、なかなかに侮れないみたいだよ!
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
侮れないみたいだよ、じゃねーよ!
理に適ってるようでやっぱり頭おかしいだろ!
そして迫り来るネズミの大群!
鎧術闘勇士ってのはタンク役のようだけど、守るだけじゃ魔獣は追い返せないんだよ?
どうやってピンチを切り抜けるつもりだい!?
【第72話 ゴブリンガールは砦を駆ける!】
ぜってぇ見てくれよな!




