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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
シーズンクエスト【ビーチバレーする!】編
68/251

第67話 ゴブリンガールは不戦勝する!

挿絵(By みてみん)



 第2回戦の相手はジョニー・スラモンペアだ。


「ククク……。ついにお前との直接対決だな」

「腕が鳴るンだわ」


 不気味な笑みで強キャラ感を醸し出す2人。


「随分と自信あり気だね? なにか秘策でもあるのかい」

「ククク……。いや別に?」

「こういう感じの登場を一度してみたかっただけなンだわ」


 2人はなおも不敵な笑みを崩さずにコートへ入る。


「ゴブリンガール! 油断しちゃダメ! あの2人も一回戦を勝ち抜いてるんだよ!」

「そういえばそうだね。奴らもまともにビーチバレーができるってワケか……」


「ククク……。いいや。試合前に相手選手がかき氷をバカ食いして腹下して棄権しただけだぜ」

「つまり戦わずして勝ったワケなンだわ」


 ふざけんじゃないよ!

 ただの不戦勝かよ!


 ニタニタ笑いながらアタイらを見据える2人。

 ――――だがそこで問題が起こった。


 コートに降り立ったスラモンの体が砂まみれになり、身動きが取れなくなってしまったのだ!


「ふええ! 水気に砂がまとわりついて気持ち悪いンだわ!」

「ったく。しょうがねえな」


 仕方なくジョニーがスラモンを拾い上げ、砂を流し落とすために波打ち際へ歩いていった。

 バシャバシャ……。

 ジョニーが手の中で揉むようにしてスラモンを洗ってやる。


「さあどうだ? これでキレイに……。ん?」


 いつの間にか、スラモンの体が海に溶け込んで無くなっていた。


「そんな……! スラモン!」


 異常を感じ取ってアタイとモアもその場へ駆け付ける。


「スラモンが水に溶けていなくなっちまったよ!」

「あのバカ、無茶しやがって……!」


 アタイたちは眼前の大海原に向かって大声でスラモンの名前を叫ぶ。

 でもいくら呼んだって静かな波音しか返ってこない。


「スラモン……」

「スラモンは海に帰ったんだよ」


 モアは優しくそう言ってアタイの肩に手を置いた。


「海に溶けたスライムは海流に乗って世界中を巡り、蒸発して雲になり、雨になって大地に降り注ぐ。そうしてずうっと私たちを見守ってくれるんだよ」


 ……それが本当だとしたら、もう寂しくはないね。

 スラモン、今までありがとう。

 辛いことや楽しいことがたくさんあったね。

 これからもアタイたちのことをどこかで見守っていてくれるよね?


 アタイとジョニーとモアは海に向かって静かに合掌した。


「選手の失踪によりジョニー・スラモンペアの失格! よってゴブ子・モアペアの不戦勝!」


 アタイたちは2回戦目を突破した。


「ん? 待てよ?」


 アタイはトーナメント表を見上げて呟く。


「8組のペアしかないからもうベスト2入りじゃないか!」

「あとはAブロックの代表ペアと戦って、それに勝ったら去年の優勝者と決勝戦だよ!」


 適当にも程があるだろ!

 ほぼビーチバレーしてねえじゃん!


 まあ、それで勝って報酬をゲットできんら文句はないけどね。


 アタイたちは次の対戦相手が決まるAブロックの試合を見学しに行った。

 ちょうど試合が始まるタイミング。

 コートにいるのはシブ夫・スージーペアとヒューゴ・アルチナペアだ。

 やっぱりこいつらが勝ち残っていたみたいだね!


「ヒューゴさん。アルチナさん。これはスポーツとはいえクエストです。全力で戦わせていただきます」

「私とシブ夫くんのペアに勝てるかしら? 私たちとっても相性良いんだもんね! ね、シブ夫くん♡」

「そんな……スージー……」

「ウケる~!」


 いつもの調子だねこいつらは!


 勇者ペア同士の戦いは人気があるらしく、自然とギャラリーが集まってきた。

 観客席として設けられたスペースは満員で、そこかしこで声援が上がっている。


「イケナイこと思いついちゃった~」


 アルチナはニヤリと笑うと、人知れず呪文を唱えて人差し指をクルリと振るった。

 するとどこからともなく潮風が吹き、それが渦を巻いて一過性の突風となりコートに迫った。

 その風はまるで意思があるかの如く蛇行して進み、狙いをスージーの胸元へ定めて襲い掛かる。


 ブワッ!

「きゃあっ!」


 衝撃でスージーの豊満な胸を包んでいたビキニの紐がブチリと千切れる。

 とっさに両腕で隠したので大事には至らなかったが、スージーはその場に座り込んでしまった。


「もう! 突然なんなのよ……!」


「ラッキースケベだ!」

「ウヒョオー!」

「スージー! スージー!」


 思わぬ幸運に沸き立つ観客席。

 鳴りやまぬスージーコールの中でアルチナがペロリと舌を出す。


「このイタズラはちょっぴり過激だったかしら~? でもこれでヒューゴもやる気を出してくれたでしょ?」


 そう言って隣にいる相棒を見やり、ギョッとした。

 ヒューゴの顔面が血まみれだったからだ!


「えっ? えっ?」


 たじろぐアルチナ。

 何者かの攻撃を受けたのかと一瞬身構えたが、実はこの出血は興奮によるただの鼻血だった。

 そう、恥じらい顔ではだけた胸元を隠すスージーの姿を目にするだけで、童貞ヒューゴにとっては耐え難いほどの刺激だったのだ。


 ヒューゴは直立不動のまま、拍動に合わせてドバッドバッと全身の血を鼻の穴から吐き出していく。

 それは斬撃で体を切断されるとき以上にエグい出血量だと思えた。


「き……救急車ぁー!」


 ヒューゴは病院に搬送された。


「選手退場によりシブ夫・スージーペアの不戦勝!」


「スージーさん。どうやら僕たちの勝ちみたいですが……。大丈夫ですか?」

「うえーん! もう嫌だぁ!」


 無残にも紐が千切れてしまったビキニを前に、スージーの涙は止まらない。


「シブ夫くんと夏を楽しもうと思って、何時間も吟味して選んだ水着だったのに!」


 ……同じ恋心を抱く者同士、なんだかいたたまれなくなっちまったね。

 アタイはスージーに近寄ると予備のスク水を差し出してやった。


「しょうがないね。アタイのスペアを貸してやるよ」

「ふざけないで! そんな中学生みたいなカッコでバレーをやれって言うの!?」


 ハア!?

 アタイはやってんだろうが!

 なんなんだよこの恩を仇で返すクソ女は!


「そんなダサい水着で笑いものになるくらいなら、もう帰る~!」

「さっさと帰れよバーカ!」


 そこで大泣きするスージーにシブ夫がそっと身を寄せた。


「なら棄権しましょう」

「えっ……?」

「スージーさんが楽しんでバレーを続けられないのなら、それは僕にとっても楽しくありませんから」

「だけど……。私たちなら優勝できるかもしれないのに……。本当にいいの?」

「構いません。それより残った時間でもう一度水着を買いに行きましょう。夏はまだ始まったばかりですよ」


 そう言って優しく微笑むシブ夫。

 スージーの泣き腫らした目は瞬時にハートマークに切り替わった。


 てめえ!

 なんだその恵まれまくったポジションは!

 うらやましすぎるんだよ!


「というワケで私たちは辞退するから♪ 決勝戦頑張ってね、ゴブ子、モア!」

「シブ夫・スージーペアの棄権により、ゴブ子・モアペアの不戦勝!」


 アタイたちは3回戦目を勝ち抜いた。


 クソがーッ!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 まともにバレーしないままもう決勝戦!?

 マジかよ!

 それでいいのかよ大会主催者!

 むしろこのままボールに触れることなくこのクエストを終えちまいたいところだよ!

 そんなアタイとモアの前に現れた先代優勝者の正体とは……!?

 ついに決勝戦が始まるッ!


【第68話 ゴブリンガールはビーチバレーする!】

 ぜってぇ見てくれよな!



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