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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
サイドクエスト【アイドルになる!】編
42/251

第41話 ゴブリンガールはアイドルになる!

挿絵(By みてみん)



「アイドルだ」

「……ハア?」


 ここはスナック店『ピク美』の窓際のテーブル席。

 ドンフーに新しい仕事が入ったと呼びつけられて、ここで落ち合ったのがついさっき。

 テーブルの対面に座るや否やこう言われ、何が何だかわからずにアタイはただ生返事をするだけだった。


「だから、アイドルをやるんだよ」

「誰が?」

「お前だよ!」

「……ハア?」


 二度目の生返事に、短気なドンフーはすでに半ギレ状態だ。


「いいか? 世はアイドル戦国時代! 不況続きの中でゴソッと儲けられる夢の事業がアイドル業なんだよ! 俺がプロデュースしてやるからお前は歌って踊って笑顔を振りまけ!」

「……ハアアアア!?」


 驚愕するアタイの隣でジョニーは腹を抱えて大笑いしている。


「ゴブ子が……! アイドル……!」

「フザけんじゃないよ! んなことできるかっての!」

「しかし、やるやらないは別にして、そもそもこいつにアイドルとしての需要があるのかね?」

「それについては安心しろ。ゴブ子にはユニットを組んでもらうつもりだ。センターを務めるとびきりの美女は別にいる。つまりお前は引き立て役として隣に立ってりゃいいんだよ」


 だとしてもだよ!


「おいジョニー! 笑ってないであんたも言い返しなよ!」

「悪いなゴブ子。借金返済のためだ。ここは堪えて笑顔を振りまいてやってくれ」

「ッんでだよ!」

「考えてもみろよ。命がけのクエストに出るよりよっぽど楽に儲けられるんだぞ」

「アタイにだって尊厳はあるんだよ! 大衆の前で生き恥をかくくらいなら一思いに殺してくれ!」


 騒ぎを聞きつけてピク美ママやサキュバス嬢たちも近寄ってきた。


「この子がアイドルねえ。私も若かりし頃はカリスマ演歌歌手を目指したもんだよ~。懐かしいねぇ~」


 遠い目をして過去を振り返るママ。

 一体何世紀前の話だよ。


「がんばってネ! ゴブリンガール!」

「ちょっと待ちな。アタイの代わりにフミエとキミヨが出りゃいいじゃないか! サキュバスなら魅了術を抜きにしたって速攻で人気アイドルになれるだろ!」

「忘れちゃったのゴブ子? ワタシたち不法滞在中ヨ!」

「偽造許可証がバレたらクニに強制送還ヨ!」


 チッ、そういやそうだったね!

 人気が出たところで嘘が明るみになれば一大センセーショナルは不可避だろう。


「諦めてアイドルになるんだゴブ子」

「いやだーっ!」


 暴れるアタイは押さえつけられ、抵抗虚しく外に待機していた荷馬車に積み込まれた。

 まったく用意がよろしいね!

 一体アタイをどこに連れてく気だい?


「これから向かうのはライブ会場だ。俺のツテでデビューステージを確保した。これからお前は現場でメンバーの子と初対面し、そのまま2人で壇上に上がってもらう」

「クソったれ! 展開が早すぎてついてけないんだよ!」


 移動時間を使ってドンフーはこの事業の展望について熱く語った。


「アイドルブームといっても普及してるのは人間族の間だけだ。もちろん既存のアイドルも人間の女の子ばかり。そんな中で別種族で構成された真新しいアイドルグループが登場してみろ。どうなると思う?」

「どうもなんねーよばーか!」

「つまり旦那はゴブリン界にもブームの火を焚きつけようっておつもりで?」

「いいや。ゴブリンだけじゃねえ。混成種族のグループを結成し、種の垣根を越えた幅広いファンの獲得を目指すんだよ」

「なるほど、民族間の対立やしがらみを打開しようってメッセージ性も込められてるんすね」

「これぞモノホンのラブアンドピースよ……」

「最高っす……」


 ジョニーの野郎、ここぞとばかりに悪ノリしやがって!

 なにが最高なんだよ! えぇ!?


「つまりこれからアタイと組む女はゴブリンでも人間でもないってことかい!?」

「ああ。会ってからのお楽しみだ。そうこうしてる内に会場に着いたぞ。いよいよご対面だ」


 荷馬車が止まりアタイは荷台から降ろされた。

 目の前にはやけに背が低く飾り気のない建物と怪しげな出入口。

 そして古ぼけた看板には地下闘技場と記されている。


「闘技場!?」

「昔に賭博場として使われてた施設だが、今は改修されて地下アイドルの聖地になってる。さあついて来い」


 ドンフーとジョニーに挟まれる形になって、アタイは嫌々ながらも地下へと続く薄暗い階段を下りていく。

 タバコと酒の匂いがプンプンするね!

 本当にここがアイドルの聖地なのかよ!


 コンクリ打ちっぱなしの汚れた廊下を進むととある楽屋の前に到着した。

 扉の表札には『ピュアキュン☆ラブリーガールズ 様』の印字が……。


「もしかしてコレ……」

「ああ。お前のグループ名だ。ちなみに決めゼリフは『キュンキュン! ピュアドリーム☆ミ』だからな。暗記しとけよ」


 アタイは全身から血が抜けたかのような脱力感に襲われて、もはや抵抗する気すら起きない。


 ドンフーが扉をノックしてガチャリとノブを回した。

 開いたドアの先に佇んでいたのは一人の少女。

 ピンクを基調にしたフリフリのドレスをまとい、髪を可愛くお団子に結っている。

 背の高さがアタイの腰ほどまでしかない、なんとも小柄であどけない女の子――――。


 ただし、身体的特徴はそれだけじゃなかった。


 見事なまでにくびれのないドラム缶のような寸胴!

 三頭身のごとき短さの極太の脚!

 ぷっくらした丸顔の中央には異様な存在感のでかっ鼻!


 この女、ドワーフかよ!


「ふん。よく来たわねゴブリンガール。せいぜいアタチのお飾りとして役に立ってもらうんだわさ!」


 アタイは爆笑した。


「このチンチクリンがセンター? アイドル? どうすんのこれ……!」


 もう笑うしかない。

 これが笑わずにいられるかっての!


「そんなにおかしいかぁ?」


 ドンフーはアタイの背後で殺気をほとばしらせる。


「この美少女はドワーフのドワ子。このグループのセンターであり、俺の可愛い姪っ子だ……」

「えっ……?」


 旦那の姪っ子さんですかい……?

 どうりで端正かつ聡明そうな顔つきをしていらっしゃる……。


 ――――これがアタイとドワ子との出会い。

 そしてピュアキュン☆ラブリーガールズの波乱のアイドル快進撃の始まりとなるのだった。




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 出会って数分でもうデビューライブ!?

 問答無用で特設リングに上げられるアタイとドワ子!

 歌も振り付けも知らないでアイドルをやれるワケないだろうが!

 アタイらの顔を見るなり会場の空気もヒエヒエに冷めきっちまったよ!

 ……だけどステージの上では笑顔は絶やさない。

 スポットライトがこの姿を照らし続ける限りはね。

 だって私たち、ピュアキュン☆ラブリーガールズだもん!


【第42話 ゴブリンガールはデビューする!】

 キュンキュン! ピュアドリーム☆ミ



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― 新着の感想 ―
[良い点] ゴブ子かアイドルデビューという急展開にびっくりです。面白すぎる。そしてセンターがドワーフとは、もう意外過ぎて。 [一言] ステージ、どうなっちゃうんでしょう。楽しみです。
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