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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【レイド参戦する!】編
34/251

第33話 ゴブリンガールはダンジョンを脱する!

挿絵(By みてみん)



 満身創痍のアタイらを前に無言で佇むゴーレム。

 さっきの大広間と違い、ここは狭苦しい石廊下だ。

 地砕き攻撃を出されればひとたまりもないだろう。

 最悪、壁が崩れて全員が瓦礫の下敷きになっちまうだろうね。


 ゴクリと唾を飲むアタイたちだったが、そこで予想に反することが起こった。

 ゴーレムはこちらを襲うどころか優しく手招きをしたのだ。


「近くへ来いって言ってるのか?」

「どうすンだわ?」

「普通に考えれば罠なんだろうけど……」

「ええい! 罠だとしてもどっちみち全員死ぬんだ! ならひと博打しようじゃないか!」


 アタイたちは思い切って隠し扉の先へ飛び込む。

 するとゴゴゴと上下に揺れる衝撃が起こり、次になんとも言えない浮遊感を覚えた。


「部屋全体が上に昇ってるのか……?」

「エレベーターみたいなンだわ」


 はるか頭上に外部から差し込む光が見えていたが、それがみるみる内に近づいてくる。


 チン……。


 あっという間に最上階にたどり着いたらしく、部屋の動きが止まった。

 小窓から外を覗くと、そこはもうウラバ砂丘の空の下らしかった。


 2日ぶりの外気と日光!

 感無量で涙が出てきそうだよ!


「このゴーレムはなぜ私たちを助けてくれるのかしら?」

「さあ……」


 アタイらとゴーレムとの別れを急かすように大きな地震が始まった。

 まるで遺跡全体がゆっくりと形を変えていくみたいだ。

 これが本震なら外界に通じる扉もすぐに塞がってしまうだろう。


「閉じ込められない内にここを出るぞ!」


 みんな次々に小窓から外へ飛び出していく。

 最後尾にいたアタイもみんなに続こうと窓枠に手を掛ける。

 そのとき、尻にコツンと何かが触れる気配を感じた。

 そして体全体にビリリと衝撃が走る。


「うわっ!?」


 まるで軽く感電したみたいだ。

 振り返ると、ゴーレムがしゃがんだ体勢で腕を伸ばし、大きな岩の指先をアタイに近づけていた。


「ちょっとあんた! 今アタイのケツ触った!?」


 痴漢かよ!

 通報すっぞオラ!


 ゴーレムはアタイの顔を見つめながらガラガラと喉の奥を鳴らしている。

 意地悪く笑ってるみたいだ。

 そしてゴツゴツの手のひらを開き、ゆっくりと左右に振る。


「また会おうとでも言いたいのかい……?」


 ゴーレムは埋め込まれたメダルのプログラムに従うか、または誰かの遠隔操作によって動くという。

 なんだかこいつの向こう側に何者かの意思を感じた気がした。


「おおいゴブ子! 何やってんだ! 早く出て来いよ!」


 ジョニーの声で我に返り、アタイはゴーレムに背を向けてそそくさと遺跡を後にした。



 ズズズズズズ……!


 砂丘全域に地揺れを引き起こしながら、ダ・ゴ・ダロンは地中へと沈んでいく。

 なんとか間に合ったみたいだね……。


 その場にへたり込んだアタイたちの元へ世界考古物研究機構の奴らが駆け寄ってくる。


「クエスト参加者の方たちですね! 皆さんが最後の脱出者です! ギリギリでしたよ!」


 やんややんやと騒ぎ立てられながらアタイたちは仮設テントまで移動させられる。

 この騒々しさと強烈な日差しに目が回りそうで、まるで長いあいだ夢の中にいたような心地がするね。



~~~


 全員が報酬金を受け取って、今回の『レイドクエスト』は一旦の幕引きになった。


「目当ての素材アイテムが手に入らなかったのは不本意だが、また3年後にリベンジするさ。そのときはお前らも来いよ。また一緒に潜ろうぜ」

「ハッ! 冗談言うんじゃないよ! アタイは二度と地底探検はしないからね!」

「そうなのか? 俺は結構楽しんだぜ」


 ガハハと豪快に笑うヒューゴ。

 あやうく生き埋めのところだったってのに、頭のネジ飛んでんじゃないのかいこいつは!


「これでまたしばらくお別れね」

「スージー。あんたはこの後どうするんだい?」

「今回の騒動で『ハイベンジャーズ』の数人は倒せたけど、まだまだギルドメンバーは世界各地に潜伏してるらしいの。私は組織を壊滅させるために彼らの動向を追ってみる」


 そう言ってキラキラとまぶしい笑顔を見せるスージー。


「良かったらあなたたちも一緒に来る? 先輩もどうですか? いてくださると心強いわ」

「えっ! 俺? えっ……えへへ……」


 ヒューゴの奴はスージーの前だと途端に挙動不審になるね。

 恋に奥手のモジモジ男子が!


「こっちは『勇者狩りギルド』なんて物騒な連中とは一切関りを持ちたくないんだよ。行くなら勝手にお行き!」

「まあでも、割の良いレイドがあればまた教えてくれや。お前らの影に隠れてりゃとりあえず生きて帰れそうだしな」

「初めから人頼りは良くないわよ」

「そうだぞ! えへへ……」


 ふん!

 勇者とツテを作っておくのも悪くはないかもしれないね!

 また機会があればこいつらを利用してやるとしよう。


「それじゃ達者でなンだわ」

「……またどこかでね」


 名残惜しそうに手を振り合う面々。


 ――――だがそのとき、どこからともなく苦しそうなうめき声が聞こえてきた。


「や~ん~す~……!」


 すぐ足元を見ると、地面の砂がボコリと盛り上がって何かが蠢いている。

 やがてそこから手が生え、次に砂まみれのヤンフェの顔が覗いた。


「……んもぅ~! 皆さんちょいと薄情なんじゃないでやんすか? 自力で遺跡から這い出せたから良かったものの、マジであっし一人だけ取り残されちまうかと思ったでやんすよ~!」


「………」


 アタイたちは無言で地面に生えるヤンフェの頭を踏みつける。


「ぶわっ! ちょっ! し、沈む……!」


 再びヤンフェを地中に埋め戻し、アタイたちは何事もなかったように爽やかな笑顔で別れの挨拶を交わした。


 バーンズビーンズに向けて歩き出しながら、アタイはぼやかずにはいられなかった。


「それにしてもふざけた話だよ。アタイらはレベル2なのに60越えの難クエストを見事生き抜いたんだよ? なのに『固定レベル』のせいで一切EXPが入らない!」

「たしかになぁ。もし経験値がもらえてりゃ一気に何レベルくらいアップしたんだろうな」

「そう考えると虚無なンだわ」

「それもこれも全部魔王の奴が敷いたくだらないルールのせいだね!」


 アタイは拳を強く握りしめ、改めて打倒魔王を強く誓うのだった。


 アタイたちの冒険はまだまだ続く!

 さあ、次はどんな難クエストが待ち受けてるんだろうね!?

 考えるだけで胃液がせり上がってきちまうよ!

 ――――To Be Continued.




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 有名な歓楽街として知られるバーンズビーンズのネオン通り。

 ルポライターである筆者がとある酒場を訪れたところ、カウンター席で飲んだくれるゴブ子氏とジョニー氏の姿を発見した。

 職業病半分、好奇心半分でいてもたってもいられなくなり突撃取材を敢行。

 快く応じてくれた二人に赤裸々な冒険秘話を聞き出すことに成功した――――。


【第34話 ゴブリンガールは赤裸々に語る!】

 ぜってぇ見てくれよな!



挿絵(By みてみん)


 読んでいただきありがとうございます!

 Twitterでも活動中!

 「ゴブリンガール」検索でヒットします。

 https://twitter.com/GoblinGirlGacha

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読ませて頂きました(*'ω'*) 最初からめちゃくちゃ面白いです!笑いっぱなしです! 出てくるキャラが個性ありまくりで最高です。 レイド参戦する!編も展開がめまぐるしくて楽しかったです!…
[良い点] 恋に奥手のモジモジ男子が!って良いですね。素晴らしい罵り言葉です。いつか自分も言ってみたいセリフです。ギャグだけでなくストーリーも面白いので飽きません。ゴーレムに助けられる意外性が良いです…
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