第27話 ゴブリンガールは宝箱を開ける!
~ヴァンプバット(討伐推奨レベル38)~
暗所に棲みつく大コウモリの魔獣。
相手を怯ませる超音波を放ち、血を残らず吸ってミイラに変えてしまう。
奴が上空から繰り出す超音波攻撃は割れるような頭痛を引き起こす。
みんな地面にへばりつくようにして身動きが取れない!
その内にヴァンプバットは勢いよく急降下し、一人の勇者を後ろ足で捕まえて再び飛び上がった。
「うわああ! 助けてくれぇ!」
おそらくその勇者は低レベルの『おこぼれ狙い』の参加者だったのだろう。
自力でコウモリの拘束を解くことができずジタバタともがいているだけだ。
その首筋にヴァンプバットがガブリと噛みつき、一気に血を吸い取った。
勇者の肌はみるみる土色に代わってシワシワのミイラに変貌した!
「マジかよ! えげつねえな!」
「さっそく死人が出るなんて過酷すぎでやんす!」
「もう帰りたいンだわ!」
泣き言を叫ぶアタイのパーティメンバー。
我ながらみっともないにもほどがあるね……。
ヴァンプバットはミイラ化した亡骸を放ると、次の標的を定めて再び急降下した!
奴のターゲットに選ばれたのはジョニーだ!
「ギャアアア!」
為す術もなく捕まって上空に引き上げられるジョニー!
「ジョニー! 抵抗してそいつを振りほどきな!」
「無理だろ! 俺はレベル2だぞ!」
「悪いけどアタイらもレベル2なんだ! 見てることしかできないよ!」
「こうなったら……。みんなで粛々と弔ってやるでやんす」
アタイたちは地面に鎮座して目を瞑り南無阿弥陀仏を唱える。
どうか彼の来世に幸があらんことを。
「クソほどの役にも立たねえなチクショウがぁー!」
頭上でコウモリに振り回されながらジョニーが泣き叫ぶ。
「生きたまま血を吸い出されるなんて嫌だよー!」
その嘆きを聞いてアタイははたと気付く。
「安心しなジョニー! スケルトンのあんたには元々血が流れてないじゃないか!」
「そうだった!」
ヴァンプバットもそれに気が付いたらしい。
途端に興味を失ってジョニーを放り捨てた。
そのまま落下して地面に激突したジョニーはバラバラに飛び散った。
「あーあ。また後でボンドで修復してやんないとね」
面倒臭いったらありゃしない。
ヴァンプバットは強烈な超音波を発しながら次なる獲物に向けて急接近してくる。
このまま一人ずつ殺られていくのを黙って見てるだけかい!
そう思った矢先、襲い掛かってきたコウモリの牙を弾き返した男がいた。
丸盾の勇者ヒューゴだ!
「悪いが俺の盾は特注でね。空気の振動も吸血の牙も大したダメージにはならないぜ」
そのまま盾でコウモリの横っ面を殴りつける!
コウモリは体勢を崩してその場に倒れ込んだ。
「地面に下りちまえばこっちのもんだ!」
次に躍り出たのは大柄のガミウシ。
なにやら騒々しい詠唱を唱えると、彼の手から発した火花がヴァンプバットの体毛に燃え移った。
炎は勢いよくコウモリの体を周る。
さながらキャンプファイヤーのように周囲が明るく照らされた。
~イグニステイン(アビリティレベル48)~
魔勇士の習得する炎系統の中級魔法。
対象の体に炎が点火し、消えるまでのあいだ持続ダメージを与える。
「どうだ! 俺様の炎魔法は! これでコウモリの丸焼きのできあがりだ!」
自信満々のガミウシ。
だがそれに反して火の勢いはみるみる弱まっていく。
ヴァンプバットもゆっくりと体勢を立て直し始めた。
「なぜだ……? ヴァンプバットは炎が弱点のはずだぞ!」
うろたえるガミウシにヒューゴが答えを返した。
「酸素だな」
「酸素?」
「こんな閉鎖空間で見栄えばかりでかい炎魔法を使ってみろ。酸素を浪費して火の勢いは急激に減衰していく。ヴァンプバットはさっきの吸血のおかげで自動回復バフが付いてるからな。どうやらお前のダメージ量より奴の回復量の方が上回ってるらしいぜ」
しゃくしゃくと解説してみせるヒューゴは、一通り喋り終わると盾を握り直して飛び上がった。
そのままヴァンプバットの頭部に渾身の一打を叩き込む。
ボキリと大きな音を立ててコウモリは地面に沈んだ。
「厄介な吸血スキルに効果的なのはクリティカルの一撃で致死ダメージを叩き出すこと。物理打撃ってのは算数の世界だ。どの角度にどのくらいの圧力を掛けるかでダメージの通りがまったく変わってくる。ま、それを見抜けるようになるには長年の修行が必要だけどな」
得意顔のヒューゴにぐぬぬと言葉を詰まらせるガミウシ。
ヒューゴの奴は狙ってクリティカルヒットを出したってことかい?
……フン、なかなかやるじゃないのさ。
倒れたヴァンプバットの傍らにチャリンと宝箱の鍵がドロップした。
「うへへ! これでお宝ゲットでやんす!」
すかさずカギに飛びついたのは我らのヤンフェ。
悪びれもせず漁夫の利をかすめ取ろうなんて、こいつの頭ん中に羞恥心て言葉はないんだろうか。
ガミウシがヤンフェの手から強引に鍵を奪い取った。
「丸盾野郎に横取りされなきゃ俺が仕留めてたんだ! この宝は俺が貰うぜ! 文句あるか?」
「ひえぇ……!」
「まあいいさ。好きにしな。宝箱は他にも腐るほどあるんだ」
ヒューゴは肩をすぼめて見せて道を譲ってやった。
そんな彼をフンとひと睨みして、ガミウシはずんずん宝箱に向かっていく。
鍵を開ける様子を遠目で見守るアタイらやモブ勇者たち。
「さあ、どんなお宝が入ってんだろうな? 金か、宝石か、はたまた研究機構が欲しがってた貴重な考古物か?」
にやつきながらガバッと蓋を開くガミウシ。
しかし、中に納まっていたのは宝のたぐいではなかった。
丸まった舌とそれを取り囲むように並ぶ無数のギザギザ歯。
宝箱に擬態するモンスター、ミミックだ!
~ドゥードゥルミミック(討伐推奨レベル54)~
宝箱の姿を模して獲物が近寄るのをじっと待つトラップ型モンスター。
外見から攻撃方法まで様々なタイプがいるが、本ミミックは固定式で即死攻撃を持つ。
ミミックは大口を開けてガミウシの上体にかぶり付く。
それと同時に土を掘るドリルのように軸回転し、地面がアリジゴクのようなすり鉢状へと変化する。
あっと声を上げる間もなく、大きなガミウシの体を周りの砂ごと一緒にして地下へと引きずり込んで消えてしまった。
一瞬の出来事に呆然とするアタイたち。
「テンプレ通りのキレイな引っかかり方してくれるもんだよな。あれで中堅勇者だってんだから笑わせてくれるぜ」
やれやれとため息を吐くヒューゴ。
「実感できたろ? こういうことが頻発するから参加人数は多いに越したことがないってのさ。レイドクエストではな。2日後に外へ出る頃には初めの人数の半分にまで減ってるだろうぜ。せいぜい自分は無事で済むように祈っとくこったな」
ヒューゴは青ざめるアタイをいたわるようにポンと肩を叩いた。
……オイオイオイ。
どうやらアタイたちはとんでもない所に来ちまったみたいだよ……!?
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
マ〇オですぅ~!
ええ~っ!?
カ○オくんが盗みを働いた相手の女子、花沢とかいうドブスだったのかいぃ!?
特殊性癖の上にブス専かよ~!
勘弁してくれよ~!
盗んだのは牛乳だけじゃなく使いかけの墨汁も?
しかも墨汁は体に塗らずにコッソリ飲み干していただってぇ~!?
逆だろ~!
牛乳は飲んで墨汁は浴びるだろ普通~!
もうお前少年院で更生してこいよ~っ!!
さて次回は!
【カ○オ、2リットルは飲んだと供述】
【マ○オ、義弟の頭部を殴打した疑い】
【一本ハゲ、ショック症状で搬送】
の3本ですぅ~!




