第26話 ゴブリンガールはダンジョンに潜る!
すでに開かれている遺跡の入り口を前にしてクエスト参加者は一列に並ばされた。
アタイらを含めて総勢14人ものメンツ。
壮観だね。
ちなみに、当たり前の話だがアタイたち4人以外はみんな勇者だ。
なぜレベル2の貧弱モンスターがこんなところに?
場違い感がひしひしと迫ってきて泣けてくる。
世界考古物研究機構の担当者が一堂の前に立って咳払いする。
「それでは今一度本クエストに関する注意事項を確認します。例年の様子から推測して、遺跡の扉が閉じる二度目の本震までの猶予は48時間ほど。タイムリミットが近づくにつれて余震の頻度が増していきます。それを目安にして本震の前にダ・ゴ・ダロンから脱出するように。くれぐれも気を付けてくださいね」
言われるまでもない。
閉じ込められたまま次の3年まで日の目を浴びられないなんてまっぴら御免だからね!
「それともうひとつ。便宜上あなた方14人を第1期調査団と呼びます。皆さんの突入後も随時クエストの参加者は募集しており、おおむね24時間が経過したところで次の参加者を第2期調査団として後発させます。可能ならば彼らとも連携を取ってクエストに臨んでください」
「ちょっと待て。後発隊なんてのがあったのかい?」
「潜る時間があっしらの半分で済むなんて羨ましい限りでやんす」
「可能なら今からでもそっちに組み直してもらいたいぜ」
「というか参加自体を取りやめたいンだわ」
「静粛に! それではこれよりクエストを開始いたします。はいドン!」
アタイら1期団は一斉に駆け出した。
~金床の遺跡ダ・ゴ・ダロン(探索推奨レベル60)~
アタイらはぞろぞろと団子になって石造りの緩い下り坂を下っていく。
入り口から離れるとすぐに辺りは真っ暗闇になっちまった。
「暗くて足元もおぼつかないな。誰かたいまつでも持ってないのか?」
「そんな準備してこなかったよ」
ボケ勇者どもが!
たいまつなんてのはダンジョンに挑むときの必需品だろうが!
まあアタイも用意してないんだけどね!
「ジョニー! なにか良いもん持ってないのかい?」
「前に大量にガチャを回したときのクズアイテムがいくらか残ってたな……」
ジョニーはカバンから『発炎筒』を取り出した。
~発炎筒(使用推奨レベル9)~
鮮やかな赤い光を放つ筒。
事故や遭難時に自分の居場所を伝えるのに使う非常用具。
取り出した赤色の筒をマッチ棒みたいに擦ると、ボッと勢いよく赤色の光が灯った。
たいまつなんかよりずっと遠くまでの範囲を照らしてくれる。
こりゃあ見やすくていいね!
「へへん。ゴブリン流の発光魔法だね!」
他の勇者たちも物珍しそうに発炎筒を眺める。
「おいお前たち。珍しいものを持ってるんだな。どこで手に入れた?」
待機テントでひと悶着起こした丸盾の男がアタイの隣に並ぶ。
たしかヒューゴとかって言ったけど。
なんだか馴れ馴れしい奴だね?
誰とも共闘するつもりはない、とかのたまってた割に人懐っこく近寄ってきやがるじゃないか。
「あんたに話すことなんてないよ」
「そう言うなよ。俺はトレジャーハンターなんだ。見慣れないものを目にするとついつい衝動に駆られちまうのさ」
「トレジャーハンター?」
「ああ。実はこのクエストに参加したのもお宝目当てでね。知ってたか? 報酬は金だけじゃない。ここで見つけたアイテムの内どれかひとつだけを任意で持ち帰ることができるんだとさ。俄然やる気出るよな。どんなレアアイテムとご対面できるかワクワクが止まらないね」
少年のように目を輝かせるヒューゴ。
体中から情熱がほとばしってるみたいだね。
ああもう、暑苦しいったらたまんないよ!
アタイはこういうタイプの男が一番嫌いなんだよ!
「悪いがあんたの趣味にはカケラも興味ないんだよ。だけどこのたいまつが欲しいんなら売ってやってもいい。ひとつ5万ゼニでどうだい?」
「バカか? 法外すぎだろ」
「コレクターのくせに金の出し惜しみをするとはね」
「ゴブリンガール。わかっちゃいねえな。コレクターとトレジャーハンターは似てるようで大違いだ。俺たちはお宝を自力で手に入れるまでの過程にロマンを見出すんだよ。財宝! 冒険! これぞ男のダンディズム!」
耳元で大声出すんじゃないよ!
ますます暑っ苦しいね!
あっちへお行き、この熱血勇者!
そうこうしてるとアタイら一行は大広間に出た。
まるで闘技場のような円形の広間だ。
そして正面の奥にはキラキラと輝く装飾をした立派な宝箱があった。
「俺が一番乗りだぜ!」
これまた待機テントでひと悶着起こした大柄の男、ガミウシが真っ先に宝箱に飛びつく。
だが彼の怪力を持ってしても箱の蓋はビクともしない。
「鍵が掛かってるみたいだな……」
そこでモブ勇者の内のひとり、気弱そうなメガネ男が口を開いた。
「例外はありますが、フロア内の宝箱の鍵は同じフロア内に隠されているのがセオリーです」
「隠されてる? 例えばどんなふうに?」
「配置されているギミックを使わないとたどり着けない奥地だとか。あとはフロアを守るモンスターを倒すとドロップしたりですね」
このメガネはまるでRPGをやり込んでる陰キャのような話しぶりだね。
正直腕っぷしは強くなさそうだけど、こういう奴が一人でもいると捗りそうだよ。
――――そのとき、鼓膜を突き破るような高音がキーンと辺りを振動させた。
耳の奥を直接殴られてるような痛みに思わず耳を塞いでしまう。
「上だ!」
誰かの声につられて視線を上げると、天井に逆さにぶら下がっている大きなケモノのシルエットがあった。
大コウモリの魔獣、ヴァンプバットだ!
「来たよ来たよ!」
「さっそく強モンスターのお出ましでやんす!」
パニくって逃げまどうアタイらと対照に、果敢にも各々の武器を手にする勇者たち。
「どうしたゴブリンガール。お前らは戦わないのか?」
丸盾を構えながら余裕のにやけ顔を向けてくるヒューゴ。
チッ!
不本意だけどここはひとまず勇者に花を持たせてやるよ!
さああんたたち、やっておしまい!
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
どうも~! マ〇オですぅ~!
ええ~っ!?
カ○オくんが窃盗の容疑で捕まったのかいぃ!?
なんでもクラスの女子の私物を盗んだとか……。
若気の至りってやつですねぇ~!
僕も当時はリコーダーとか体操着とか、手当たり次第にパクったもんだよ~!
でもカ○オくん、盗んだのは飲み残しの牛乳で、しかもそれを体中に塗りたくっていたんだってぇ~!?
早熟すぎるよ~キミ11歳だろ~!?
さすがの僕も擁護できないよぉ~!(焦)
さて次回は!
【磯野家緊急記者会見】
【マ○オ、義弟の頭部を殴打した疑い】
【浮き彫りになる余罪の数々】
の3本ですぅ~!




