第249話 ゴブリンガールはウルトラレアを引く!
「失くしたスマホの在りかを特定できるだって!?」
「そうじゃ。ただし条件はあるがのう」
その条件とは、今後どこかの機会でガーゴイルを生け捕りにすること。
そこから魔導メダルを回収できれば、ワシャクの力を使って過去の移動軌跡を解析することができるという。
まるでGPSのデータを抜き取るみたいにしてね。
魔王が放ったガーゴイルたちはガルタナンナに留まるか、またはパトロールよろしく世界各地を巡行しているはず。
もしもその規定ルートの中でイレギュラーな動線を見つけることができれば……。
「その線上にスマホが眠っている可能性が濃厚となる。もっとも、無事に現存しているという保証は無いがのう」
そんな方法があったとは、目からウロコだね!
さすがは魔王と同じ魔儡使いの着眼点!
「では問題はガーゴイルをどうやって捕まえるかですね」
「でもさあ、結局奴らが現れるとき、すぐそばに魔王も隠れてるってことっしょ?」
なら次のガーゴイル戦で魔王との直接対決になるかもね。
その前にスマホを揃えて戦力を増強したいって話なのに、なかなか上手くいかないねえ。
どうしたものかと頭をひねる面々。
煮詰まりながらもあれこれと意見を交わし合う。
すると、それを横目に祈祷師ハイネがアタイの隣にサササと近寄ってきて囁いた。
「ゴブ子さん。ちょっとお話が」
「ああん?」
「内容が内容なので、2人だけでお話できませんか?」
んだよ……。
アタイたちは人目を盗んでそっとみんなの輪から離れた。
「なんだい話ってのは! アタイは忙しいんだよ!」
「覚えていますか? いつか私がお伝えしたシブ夫さんに関する予知夢です」
「ええと……、なんだっけ?」
「近い将来にシブ夫さんが亡くなるという夢ですよ」
※詳しくはメインクエスト【予知される!】(第116話~)を参照。
あー!
あーーーーーっべ!
何よりも重大な伏線がすっぽり頭から抜けちゃってたよ!
ハイネの視た不吉な予知夢によれば、そう遠くない未来にシブ夫が死んでしまうというのだ。
それもアタイの目の前で……。
「その場面において、お二人の他にさらに男女が1名ずつ倒れていたと話しましたね」
「もしかして、そいつらが何者か判ったのかい」
「はい。……おそらく、男性の方はモリ助さんではないかと思います」
この予知夢を教えてくれた当時、まだハイネはモリ助と出会う前だった。
彼と合流して何度か顔を合わすことで、おぼろげだった夢の登場人物がモリ助本人であるとの確信に至ったそうだ。
そんな……!
シブ夫だけでなくモリ助までもが魔王に殺されるってのかい!?
「ちょっと待ちな……! まさか、もう1人の女の方はヘミ子なんじゃ?」
「それが……」
しかし予想に反してハイネは首を横に振った。
「何者か判別できませんでした。でも服装や髪型などから考えるとヘミ子さんとは違う方のようなんです」
ヘミ子とは違う女?
妙だね。
これまでのメインクエストではアタイと転生者たちはいつも一緒に行動していた。
なのにその場面ではいつものメンツの中でヘミ子だけが不在だという。
だとしたら未来のその時、彼女はどこで何をしているんだろう?
……少なくとも、ヘミ子は犠牲にならなくて済むってことだよね。
だとしても、そんな結末は到底受け入れられるものではない。
「やいやいハイネ! そのくそったれな予知夢を回避するにはどうしたらいいんだい!」
「私にもわかりません。なにせ、今までに視た夢はすべて現実になっていましたから……」
祈祷師の視る未来は確定事項?
ふざけんじゃないよ!
んな理不尽に運命を決めつけられて黙ってられるかってんだ!
「あんたの視た腐れ世界線なんぞはね、このゴブリンガール様が力づくで捻じ曲げてやんよ! 見てな!」
アタイは雄叫びを上げると懐からスマホを取り出した。
そして回れ右をするとヘミ子に向かって駆け出し、勢いよく胸元に抱き着いた。
「ヘミ子の幸運バフとアタイのガチャがあればどんな困難だって吹き飛ばしてやれるんだ! ヘミ子! アタイのために祈りな!」
「あら、何を祈ったら良いの――?」
「魔王やゴン太なんて瞬殺できちゃうような、激レアなアイテムが引けるようにだよ!」
最後に一発でかいの引いて、勢い付けたまま新章に突入してやろうじゃないの!
さあ、画面の前の読者のみんなもアタイに元気を分けてくれ!
頼むぞ課金フルパワー!
SSRで最凶モンスターにメイクアーップ!
力強いタップで液晶画面が虹色に光り輝く。
そして目の前にボワンと白い煙が広がった。
視界を塞ぐ光と煙に紛れて、抑揚のない電子音が鳴り響く。
【おめでとう! ウルトラレアのアイテムをゲット!】
「ウルトラレア?」
「って何?」
「すごい。ウルトラレアとはSSRをも凌ぐ最上級のレア度のことですよ」
「やったねゴブ子ちゃん!」
ややあって煙が晴れると、目の前には人間大の大きさの物体が静かに佇んでいた。
カラーコーンみたいな三角錐の形をしていて、表面は金属でできているらしい。
取り立てて面白みの湧くシルエットではないものの、なんとも言い表せぬ威圧感がヒシヒシと発散されている。
~核弾頭(使用推奨レベル∞)~
大陸間弾道ミサイルの先端部分に設置される核爆発兵器。
核分裂反応で生成される破壊エネルギーは莫大であり、放射能は長期にわたり広範囲を汚染する。
「はて、レベル∞だって」
「99より高いンだわ?」
「兵器って書いてあるけど、引き金もなければ発射口もないよ。どうやって使ったらいいんだい」
核弾頭なるものに初めてお目に掛かるアタイたちは、物珍し気に三角錐のフォルムの周りを囲んで首をかしげるばかり。
まあようわからんけど、強いらしいし良いんじゃない!?
宣言通り超レアなお宝をゲットしちゃうなんてさすがはアタイじゃん!
ガチャの引きは絶好調だね!
「おうし魔王とガーゴイルども、どっからでもかかってきな! この核ってのをドカンとやって簡単に返り討ちだよ!」
胸を張ってピースにした拳を天に突き出すアタイ。
だがそこで、転生者3人だけが青ざめたまま固まっていることに気が付いた。
「なんてことかしら……――」
「おいおい、こいつはとんでもないことになっちゃったぞ……!」
んん?
あんたたちどうしたんだい。
いつになくマジな雰囲気のリアクションしちゃってさあ。
「ゴブ子さん。このアイテムは絶対に使ってはいけません。何があってもです」
……およよ。
もしかしてアタイ、なんかマズいもん引いちゃった?
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
やだ~!
終わる終わる言っときながらこれ以上風呂敷広げるのやめて~!
『円錐形の謎物質』もとい核弾頭を手に、次回より新たな波乱のクエストが幕を開ける!
【第250話 ゴブリンガールは予告する!】
ぜってぇ見てくれよな!
ここまでで第4章『巡り会う転生勇者』は終わり、次話は番外編になります!




