第238話 ゴブリンガールは伏線回収する!
「――――戦争の勃発!?」
「そうです。そう遠くない内に大規模な戦が始まってしまうようです!」
ハイネは生まれながらに未来予知の能力を持つ祈祷師の女。
夢の中で将来起こる確定の出来事を短時間の細切れ映像として視ることができるのだ。
「夢では、海に囲まれたどこか広い場所で壮絶な戦いが繰り広げられていました。空を埋めつくすガーゴイルの群れ。そして地上にはそれとは別種の魔儡の大群がいました」
「げえ、またガーゴイルかよ」
「別の魔儡というのも魔王が用意したモンスターかしら――?」
「いいえ。そうではないようです。両軍の魔儡同士で争っているようでしたから」
ちなみに魔儡とは人工物でできたモンスターのこと。
石膏を素材にして造られたガーゴイルは魔王の命令によって動く下僕たちだ。
2種類のモンスターがぶつかり合っている……。
ということは、魔王に対抗する新勢力が現れるってこと!?
「それだけではありません。これまでに登場した勇者たちも勢ぞろいしていました。皆さんが散り散りになりながらも懸命に魔儡たちと戦っていましたよ」
おいおい。
オールスターのフル共演?
もしかしてそれ、この物語の最終決戦のシーンなんじゃないの!?
ダラダラと続いた本作もついに完結に向けて舵取りを始める気になったみたいだねえ!
「ん? ていうか今の時点でキャラ数50近いじゃん?」
「全員出すつもりなんですか? とても描写しきれないと思うんですが……」
重っ。
本当にやれんのか作者?
「本当にやれるんでしょうか? 一応、祈祷師の視る未来は確定事項なのですが……。一応……」
さすがにハイネも自分に割り当てられたキャラ設定に疑問を抱くほど狼狽している。
……まあ、ね。
現時点の構想通りにゴブガを完結させられるかは作者の頑張り次第。
そしてその頑張りを生み出すのは読者の応援次第でもあるよ。
ということでみんな、これからもヨロピク~☆
「メタツッコミはさておき、そんなざっくりした情報じゃ対策の打ちようも無いよ!」
「他に予知夢の中で気付いた点はありますか」
「はい。ひとつは、抵抗する勇者たちの中にあなた方転生者の姿もあったこと。特にその中心にいたのはゴブ子さんとヘミ子さんです」
名指しを受けたアタイとヘミ子はゴクリとツバを飲んで顔を見合わせる。
「お二人は何かを守りながら戦っているようでした。人間大の円錐形の物で、金属製のように見えましたが……」
「なんだいそりゃあ?」
「私も初めて見る姿かたちだったので、とても見当が付きません」
来たよ思わせぶりな重要情報、『円錐形の謎物質』!
十中八九キーアイテムになるだろうからメモして覚えときな!
「そしてもうひとつが、ガーゴイルの対抗勢力として現れた魔儡についてです。見た目の特徴を元に調べてみたんですが、おそらく砂と泥を素材として造られた遺跡の守護兵、ゴーレムではないかと思います」
ゴーレムだあ!?
なんかめっちゃ固そうで強そうじゃん大丈夫?
「ゴーレムの大群か……」
「魔儡というからにはそれを操る親玉がいるはずだよね」
「まずはその正体とたくらみを突き止めなくちゃ――」
「はい。ということで、私の転移魔法でこれから皆さんをゴーレムの潜むダンジョンへ送り出します」
ハイネはおもむろに大杖を構えて魔法陣を描き始めた。
は? いやちょっと待って?
「あんたいつも話はしょりすぎなんだよ。ゴーレムの居場所特定できてんのかい?」
「はい」
「たしかハイネさんの転移魔法は『過去にその場所を訪れたことがある』という条件がなければ発動できないファストトラベル能力でしたよね」
「でも俺らの中にゴーレムとエンカウントしたことある奴なんていないっしょ?」
「いいえ、いますよ」
誰?
「ゴブ子さんです」
「えっアタイ?」
「忘れてしまったんですか? 冒頭の頃のメインクエスト【レイド参戦する!】(第25話~)のときに一度戦っていたじゃないですか、ゴーレムと」
えー?
………。
……………。
マジ?
まったく記憶にないんだけど。
っつうかいつの話よそれ(笑)
そんな古い話掘り起こされてもね、さすがにアタイの記憶力の問題じゃないでしょ。
読者の中にも覚えてる人誰もいないっての!
まあここでウダウダ言ってても話は先に進まない。
アタイは仕方なく冒頭の頃のクエストを読み直してみることにした。
~それから小一時間後~
あーはいはい!
あったねそんな話!
完璧に思い出しました!
【レイド参戦する!】編は、3年に1度の地震のたびに入口が開く砂の地下遺跡『ダ・ゴ・ダロン』が舞台。
宝探しのおこぼれ狙いで10人ほどの勇者たちに交じって参加したレイドクエストだ。
ちなみにハト胸童貞ポークピッツのヒューゴや大バカ生徒会長のスージーがゲスト勇者として参戦していた。
アタイたちはそこでボス級モンスターのゴーレムと戦ったり、堕落勇者ギルドのハイベンジャーズの邪魔を受けたりしながらなんとか埋もれゆく遺跡からの脱出に成功したのだった。
こんなん懐かしすぎて笑うわ。
そういやあのクエストの佳境では、なぜか敵対していたはずのゴーレムがエレベーターを案内してアタイらの脱出を手助けしてくれたのだった。
敵か味方かようわからんやっちゃなと思っていたけど……。
まさかのここに来ての伏線回収かい!
※ピンと来なくて気になる人は、この機会に昔のエピソードをチラリ復習してみよう!
「待ちな! あのゴーレム1体でも相当苦戦したのに、今度はそれが大群で出てくるっての!?」
「レベルで言えばガーゴイルに匹敵します」
「そんなもんの戦争に巻き込まれたら確実に死ぬじゃん☆」
「そうならないためにも、皆さんにこれからダ・ゴ・ダロンへ調査に赴いてもらいたいんです」
アタイはブチギレた。
「嫌だよめんどくせえ! アタイらがやらなくたってどうせ空気読んだ他の勇者がやるんだから放っときゃいいんだよ!」
ツバを飛ばして抵抗するアタイを皆が窘める。
「ゴブ子さんとヘミ子さんの姿が予知夢に現れた以上、どのみち戦いを避けて通ることはできませんよ」
「だいじょーぶ! 俺だって隣にいるから怖くないよ☆」
ヘミ子がアタイの横に並んでそっと手を握ってきた。
「私たちとスマホの力があればきっと不吉な未来も乗り越えられるわ――。ね、ゴブ子ちゃん――」
ぎゅっ……。
ヘミ子に慈愛に満ちた顔で見つめられると、なぜだかどんな困難が来てもやり過ごせてしまいそうな気がしてくる。
ふん……!
ガーゴイルVSゴーレムの大戦争、そして『円錐形の謎物質』。
そのときのピンチを凌ぐためにも、今できることを精一杯にやるしかないみたいだね!
ハイネの詠唱によって宙に魔法陣の模様が浮かび上がる。
覚悟を決めたアタイとヘミ子、シブ夫、モリ助の4人の体を、その眩しい光がゆっくりと呑み込んでいったのだった――――。
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
ゴーレムとかダ・ゴ・ダロンとか覚えてた読者います?
【第239話 ゴブリンガールは再訪する!】
ぜってぇ見てくれよな!




