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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
シーズンクエスト【アポカリプスする!】編
221/251

第220話 ゴブリンガールは悪夢を覚ます!

挿絵(By みてみん)



 ゾンビどもが続々と階段を這い上ってくる。

 アタイたちはいよいよ逃げ場所を失ってしまった。

 どうやらバッドエンドは近いみたいだね!


 恐怖に震えて泣き出しそうなヘミ子。

 それと対照に、グリ坊は無表情で虚ろな目をしてブツブツと何かを呟いている。


「ちくしょう! こんなところで終わってたまるかー!」


 アタイは手に持っていた魔導書(下巻)のページを必死になって捲る。

 ゾンビの呪いは解けないにしても、どこかに役立ちそうな別の呪文が記されているかもしれない。

 そうして文字の羅列を追っていると、アタイの血走った眼がとある一文を拾い出した。


遡及(そきゅう)の禁忌術……?」


 説明によると、その呪文を唱えた者は一瞬で別の場所に飛ばされるとかなんとか。

 テレポーテーション?

 でも単純な瞬間移動とは概念が異なるものらしい。

 なんでも四次元の空間を歪めるだとか、円環の波に囚われるだとか、この手の本にありがちな意味深な言い回しで飾られていて、イマイチ要領を得ない。


 文の最後に、発動に伴って大きな代償を払う羽目になるとの注意書きが添えられている。

 こわ。

 安易に使っていいもんなんかねこれ?


 頭を捻っていると、アタイの隣でヘミ子が短く悲鳴を上げた。


「グリ坊、バカなマネはよして――」


 顔を上げると、グリ坊が屋上の縁に立って静かに真下を眺めていた。

 あの役立たず、何しでかすつもりだい?


 グリ坊はゆっくりとアタイたちの方を振り返り、弱々しい笑顔を見せる。

 その頬には涙が伝っていた。


「みんなごめん。でもこんな世界、もうオイラには耐えられないのさ……」

「あんたまさか!」

「早まらないで――!」


 グリ坊は涙を煌めかせながらフワリと身を投げ出した。


 アタイとヘミ子は走った。

 だが伸ばした手は一歩届かず、虚しく宙を空振りした……。


「グリ坊―ッ!」


 縁から下を覗くと、数十メートルの高低差の先にグリ坊がうつ伏せに倒れているのが見える。

 そのピクリとも動かない体に向かって、路上のアンデットたちがワサワサと群がり始めていた。


「ちくしょう……! なんでだよ……!」


 ばかやろー!


 背後を振り向けばすでに大量のゾンビが視界を埋めつくしている。

 アタイとヘミ子はその場に尻餅を着き、互いに抱き合って恐怖に震えた。


「私たち、ここまでみたいね。ゴブ子ちゃん――!」

「ヘミ子ぉ……!」


 わんわんと大泣きしていると、ふと眼前の死者の群れの中に見知った顔が混じっているのに気が付いた。


「あ……、あれは……!」


 そう、これまでの道中で倒れていった仲間たちがゾンビと化してそこにいたのだ!


「お前たちもこっちに来いよお……」

「ゾンビも悪くないわよぉん……♡」

「Happy Baby Halloween……」


 青白い肌に濁った眼をしてダランと伸ばした腕を伸ばしてくるアンデッドザコモンスターたち。


「ヒイー! どうか勘弁しておくれ!」


 あんたたちを救えなかったのは残念だったよ!

 たしかに道中でちょっぴり人道に逸れたこともやらかしたかもしれない!

 でもそれはさ、正当防衛的なところあるじゃん!?

 アタイなりに最善を尽くした結果じゃん!


 無情にもいくつもの腕がアタイとヘミ子に押し寄せてきた。

 もうダメだー!


 こうなれば破れかぶれ。

 アタイはさっき本で見つけた禁忌の呪文を早口でまくし立てた。

 どんな代償を払っても構わないから、とにかくこの地獄を少しでも遠ざけさせて!


 アタイが呪文を唱え終えたのが先か、はたまた意識を失ったのが先か。

 目の前が真っ暗になり、そのまま何の音も刺激も感じられなくなった――――。




 ~~~


『――――……ちゃん』

『ううん……?』


 遠くからアタイを呼ぶ声がする。


「……子ちゃん。起きて、ゴブ子ちゃん」

「……ハッ!」


 アタイは体をビクリと震わすようにして飛び起きた。

 そこは見慣れたスナックのカウンター席。


「ゴブ子ちゃん。大丈夫? とってもうなされていたわ――」


 ヘミ子が心配そうに顔を覗き込んでくる。

 ……どうやら深酒して寝落ちしちまってたみたいだね。

 しかしよっぽど酷い悪夢を見ていたらしい。

 内容は覚えてないけど、汗ビッショリで気分も最悪だ。


 まあしかし、たかが夢!

 どんなにこっぴどい目に遭わされても、覚めちまえばこっちのもんだよね!

 アタイまるで地獄から舞い戻ったかのようで、妙に心が安堵するのを感じた。


「なんやあ河童。まーた酔い潰れとったんかい」

「飽きもせずによくやるっピ」

「んもう~お寝坊さぁん♡」


 ああん?

 ガヤガヤと騒がしい背後を振り返ると、そこには懐かしい顔ぶれが揃っていた。

 なんと過去に登場した一発出オチクソ雑魚モンスターどもが大集結していたのだ!


 ……って、あれ?

 なんかこの展開、デジャブのような……。


 小首をかしげるアタイの隣をピク美が通り過ぎ、大皿を円卓テーブルの上に置いた。


「はいよ~! ご注文の品」

「おお、来た来た!」


 皿の上には大きな生肉の塊。

 それには何本ものロウソクが突き立てられて、さらに周りには五芒星のソースが……。


「あーーーーっ!」


 アタイは理解した。

 あのとき唱えた禁忌の魔術、円環の中に囚われるとかなんとか……。

 もしかしてあの悪夢のような出来事を何度でも繰り返すってこと!?

 だとしたらシャレにならないくらいヤバい代償じゃないのさ!


「あずにゃん! あんたそれ! 大変なことになるよ!」

「せや。この街を世紀末に変えてやるんや」

「ザコモンスターたちを無下に扱った仕返しだっピ」

「So! なぜなら今宵は! よい子も泣き出す恐怖のHalloween Night フォーーーーーー!」

「やめろっつってんだろ!」


 アタイは仰々しく呪文を唱え始めたあずにゃんを殴り飛ばそうとした。

 だがそれをザコたちが壁になって防ぐ。


「ぷぷぷ。ビビるなんて情けない奴なのさ」

「もお~ん。そんなに慌てちゃって、か~わ~い~い♡」


 そう言って能天気にアタイをあざ笑う。

 てめえらマジでふざけんな!

 もう一度無様に臓物をまき散らかすことになるよ!?


 アタイの抵抗も及ばず、とうとうあずにゃんは最後の一節まで唱え終えてしまった。

 次の瞬間、夜空からピシャリとひとつの稲妻が落ちる。

 窓から強烈な光が差し込み、その一瞬を昼間のように錯覚させた……。


 ――――無限ループって怖くね?


 ~Happy Halloween~




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 んだよ結局夢オチかよ!

 最後の最後までB級ホラーのセオリーを外すことなく辿りやがって!

 もしかしたら読者の中には早々に勘付いちゃってた人もいたかもしれないね。

 ていうかこれハロウィンのクエストだったん? もう今クリスマスだよ。

 さて次回についてだけど、実はストック切らしちゃってて1、2週間くらいお休みしようかなと思っているよ。

 12月の最終週あたりには更新する予定だよ。

 次のクエストも楽しみでしかたがないねえ!?


【第221話 ゴブリンガールはカンフー使いと出会う!】

 ぜってぇ見てくれよな!




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