第190話 ゴブリンガールはやる気を失くす!
このクエストから第4章【巡り会う転生勇者】が始まります!
えっ今日から新章なの?
……………。
いや別にいいんだけどね。
言うほどメインストーリー進展してないクセにナンバリングだけは一丁前に更新してさあ。
ゴン太や魔王の居所とか全然わかんないままじゃん。
ていうか冒頭の挿絵の女誰だよ。
新キャラ出しとけば話進むとか安易に思ってんじゃないだろうね?
そういうところが浅はかなんだよ!
バカが!
朗らかな陽気に包まれる歓楽の街バーンズビーンズ。
アタイとジョニーとスラモンのザコトリオは側溝清掃という低レベルクエスト(というか雑用)を終え、ヘトヘトに疲れ切ってスナック・ピク美に戻ってきた。
レベル2の体に重労働はこたえるねえ……。
死んだ目でカウンター席を見やると、なんとそこには愛しのシブ夫と空気読めない男子モリ助の姿が!
アタイは秒で元気を取り戻した。
「あ、皆さん。奇遇ですね」
「ゴブ子ちゃん! 俺の隣の特等席、キミのために空けといたよ☆」
アタイは力の限りモリ助を突き飛ばしてシブ夫の脇を陣取った。
イス温めといてくれてありがとよ!
「うふふ……!」
顔をヨダレまみれにして恥じらいうつむくアタイにシブ夫は優しく笑いかけた。
「お疲れさまです。借金の返済はどうですか?」
「どうもこうも、今日の稼ぎもたった数十ゼニだぜ」
「休憩時間に飲んだ缶ジュースの方が高くついたンだわ」
ふざけんじゃないよ!
働くだけ完済から遠のいてんじゃないのさ!
何もしないで突っ立ってる方がまだマシなんじゃないの!?
「そんなあんたたちに明るいニュースをくれてやるよ~」
コバエピクシーのママが羽をブンブン言わせて飛んできた。
「うちに書留が届いててね。シビリオって女があんたたちに朗報を伝えたいんだと。この店に向かってるそうだよ~」
「はあ? 誰それ」
「大鎌を持った死神の女だよ」
知らねえよそんな奴!
仮に出会ってたとしても覚えてないし!
この物語のキャラ数いくつか知ってんのか?
もう40近くまで膨れ上がってんだぞ!
「百歩譲ってツラ構えを見れば思い出してやれないこともないかもね!」
「こんなツラよ」
どこからともなく聞こえた声と共に、突如ローブ姿の女が隅の物陰からヌルリと出現した。
ぎょええ!?
その登場の仕方は肝が冷えるからやめてくんな!
「私を忘れるなんて良い度胸ね。何度もメインクエストに登場してるでしょ」
「そうは言ってもさあ……」
ええと、シビリオが最後に登場したのは一緒に魔境探索をしたメインクエスト【魔境へ行く!】(第122話~)が最後だったから……。
え? あれってもう1年も前の話じゃん!
こりゃあ記憶に残らないのも無理ないね。
「ククク。準レギュラーならその程度まだまだ甘いぜ」
「レギュラーキャラのはずの俺たちですら今回が30話ぶりの再登場なンだわ」
大御所のごとき貫禄を見せつけるジョニーとスラモンにシビリオは冷ややかな眼差しを向けた。
そういえばシビリオはあそこで別れたあと、さらなる転生者を探し出すために死神教団のツテを巡る旅に出てたんだっけ?
「ええ。そしてとうとう見つけたのよ。篝火の無い人間をね」
「ええ!?」
「しかもスマホ持ちよ」
それってつまり……!
新しい転生者!?
「早く会いたいだろうと思ったから一緒にこの街に連れてきたわ。さあ入ってきなさい」
そう言ってシビリオは店の出入り口を振り仰いだ。
さっそく新入りスタメンのお披露目会だね!
アタイたちは玄関扉へ向けてワクワクと視線を注ぐ。
………。
……………。
しかしいくら待っても誰も入ってくる気配がない。
「あら?」
シビリオは怪訝な顔をして扉を開き、頭を出してキョロキョロと外を見回す。
「いないわ。まったく、目を離すとすぐフラフラするんだから……」
「何やってんだよ~!」
「つうか一緒に来たんなら揃って玄関から入ってくりゃ良かったじゃん」
「仕方ないでしょ。死神らしく登場しないと読者が私を思い出せないじゃない」
いらんサービス精神を発揮させてんじゃないよ!
そのせいで進行が妨げられてんじゃ本末転倒だろ!
アタイたちは手分けして新入りを探すことにした。
「私は奥の区画を見てくるわ」
「なら僕とモリ助は向こうに行きます」
「そんじゃアタイたちはあっちだよ!」
歓楽街のメインストリートを勢いよく走り出すアタイとジョニーとスラモン。
だが早々に問題に直面した。
「しまった! そいつがどんな見てくれなのかわからないよ!」
「シビリオに聞き忘れちまったぜ」
「これじゃ見つけられないンだわ」
途端にやる気を失うアタイたち。
「あ~ダル~。もう適当に探したフリしとけばよくない?」
「ラーメンでも食って時間潰してから戻ろうぜ」
「賛成~」
――――その時だった。
アタイたちのはるか頭上をいくつもの黒い影が横切って陽の光を遮った。
カラスか何かかと思い見上げると、鳥の類よりもずっと大きく、しかも人型をしているらしい。
さらに何かの板同士がこすれ合うような独特の共鳴音が響いてくる。
ギョギョギョギョ……。
アタイはその奇怪な音に聞き覚えがあった。
「まさかあれは……! 魔王の使い魔、ガーゴイル!?」
半人半獣を模ったおぞましい彫刻のモンスター!
『魔儡』と呼ばれる人工的に造り出された動く傀儡人形だ!
そのガーゴイルが10体ほど、連なってバーンズビーンズの上空を飛行している。
「ふざけんじゃないよ! なんで魔境のバケモンがこんなところに出てきてんのさ!」
「もしかしたら……。この街に2つのスマホが揃ったんで、一度に叩いてやろうと送り込まれたのかもしれねえな!」
一石二鳥、もとい一石二スマホ!?
なんてこったい!
こうなったら奴らに見つかるより先になんとしても新入りを保護しないと!
……と思ったら、それより先にアタイのスマホがガーゴイルに見つかった。
ギョギョギョギョ!
石膏の翼を軋ませてこちらに急降下してくるガーゴイルたち!
「イヤーッ!」
地獄の追いかけっこ、再び!
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
まてよ……?
もしや冒頭挿絵のキャラが件の転生者なのでは!?
いや流れ的に絶対それでしょ!
ていうかもうバレてると思うから言うけどそうだよ。
【第191話 ゴブリンガールは麺をすする!】
ぜってぇ見てくれよな!




