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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【クエストをこなす!】編
18/251

第17話 ゴブリンガールは傍観する!

挿絵(By みてみん)



「……それで、担保に取られた故郷を開放するためにドワーフの言いなりで下働きさせられてるってことね」

「その通りだよ! ひどい話だと思わないかい!?」


 スージーは生真面目な生徒会長みたいな女だ。

 お涙頂戴の話で同情を誘ってやれば首を突っ込まずにはいられないだろう。

 ドンフーの一味を退治してくれるか、もしくは借金返済を肩代わりしてくれたりして……。


 期待に胸膨らませるアタイとジョニー。

 だがスージーは予想外の返事をした。


「あなたたちは真っ当に働いて罪を償うべきだわ」

「ッんでだよ!」

「俺たちを可哀想だとは思わねえのか!?」

「同情はするけど、それとこれとは話が別よ。可哀想だというなら迷惑を被ったドワーフやエルフ銀行の人たちの方でしょうし、一番の被害者はゴブリン集落の住民だわ」


 すまし顔で言い切りやがって、クソが!

 正論なんか聞きたくないんだよ!


「アタイらだって被害者なんだよ!」

「そうだぜ! 課金システムという名の闇に呑み込まれた俺たちに救いの手はねえのか!」

「ならまずそのスマホとやらを捨てなさい。そしてひたむきに働いてお金を返すの。それであなたたちのゆがんだ心も正されるはずだわ」

「うっせー! 今さら手放せるワケねーだろ!」

「SSRさえ引ければ! SSRさえ引ければお前だってひねり潰してやれるんだ!」


 ギャースカ喚くアタイとジョニーを前に、スージーはやれやれと額に手を付いた。


 ――――そのとき、ザアッと強風が平原を吹き抜けた。

 下草を一斉に揺らし、アタイたちも思わずよろけてしまいそうになるほどの風圧だ。


「空気が変わった……!?」


 スージーは空を見上げて何かを探すように目を凝らす。


「なんだい? どうかしたのか?」

「気圧がいくらか変わったみたいなの。妙だわ……。みんな、身構えて! 何かがやって来るわよ!」

「何かってなんだよ!?」

「わからないけど、招かれざる客であることは確かよ!」


 その言葉通り、はるか上空にポツリと黒いシルエットが現れた。

 大きな翼をはためかせながら高速で近づいてくる巨大なケモノ……。

 その影は太陽を背にして逆光に照らされながら、あっという間にアタイらの目の前に降り立った。


 ニワトリ頭の魔獣、コカトリスだ!



~コカトリス(討伐推奨レベル49)~

 雄鶏の体に蛇の尾を持つ巨大な怪鳥。

 大きな翼はつむじ風を起こし、吐き出す息には猛毒が含まれる。



「グリタ平原は探索レベル19だぞ! なんでこんなヤベえ奴と出くわすんだ!?」

「いいえ、あり得るわ。これはおそらく『エンカウントクエスト』よ」

「なんだいそれは!?」

「通常の『掲示板クエスト』とは別で、突発的に強敵と遭遇するクエストのことよ。ランダムな発生だからフィールドやダンジョンの難易度に依存せず、シビアなレベルの敵が出現するの」


 掲示板クエストでは攻略の過程で討伐対象の情報を収集し、効果的なアイテムや装備を入手しながら戦略を練って戦いに挑むことができる。

 しかしエンカウントクエストはそうした下準備が一切できないまま戦闘に移行してしまう。

 臨機応変な対処と勇者の素の実力とが試される上級仕様のクエストってワケだ!


 数多くの勇者たちもこの手のクエストの餌食となり、本来なら安全なはずのダンジョンで泣きながら敗走を余儀なくされたという。


「どうすんのさ! こんな見晴らしの良い原っぱのど真ん中で、逃げ切れる気もしないよ!」

「だからといって戦うにしても、あまりにも不利だわ……」

「スージー。お前さんのレベルはいくつなんだ?」

「奇しくもこのコカトリスと同じ49よ。でも対魔獣戦では能力の釣り合うパーティメンバーを4~5人は集めて挑むのがセオリーなの」


 スージーはちらっとアタイたちの顔を見る。


「あなたたちは大して戦力にはならなそうだし……」

「失礼な女だね! あんたとパーティ組むなんてこっちから願い下げだよ!」


 あーだこーだと内輪もめを続けるアタイたち。

 目の前で放置されて痺れを切らしたコカトリスが雄叫びを上げて翼を鳴らした。

 すると周囲につむじ風が巻き起こる。

 あやうく吹き飛ばされるほどの強風で立ってるのがやっとだよ!


「……この状況じゃ贅沢は言えないわね! あなたたち、援護して!」


 スージーは背中の矢筒から矢を引き抜きながらコカトリスに向かって駆け出した。


「援護ったって、何すりゃいいんだ?」

「仕方ないね! 金が減るのは惜しいがガチャを回すよ!」


 タップで虹色に輝くスマホ!

 来たれSSRアイテム!

 課金フルパワーでメイクアーップ!



~塩コショウ(使用推奨レベル2)~

 塩とコショウを絶妙のバランスで調合した一般家庭に広く普及する調味料。

 どんな料理にも風味を邪魔せずに塩気を足すことができる。



「スージー! チキンステーキの味付け準備は整ったよ! 後のことは気にせず安心してそのニワトリをブチのめしてやりな!」


 アタイの心強い声援にスージーは舌打ちで返事をする。


 接近するスージーに食らいつこうと、コカトリスの蛇の尻尾が牙をむき出して飛び掛かった!

 しかし、その動きを予期したスージーは高くジャンプして攻撃をかわした。

 そのまま空中でしなやかに体をひねって長弓を構える。

 スージーの右手には4本の矢があり、それらは器用にもそれぞれ指の合間に挟み込むようにして固定されていた。


「やあっ!」


 ドドドドッ!


 放たれた矢は見事な4連射となって(くう)を飛び、蛇の頭から喉元にかけて縦列に突き刺さった。


挿絵(By みてみん)


~セブラルボウ(アビリティレベル15)~

 弓術闘勇士(とうゆうし)の習得する攻撃戦技。

 同時に複数の矢を放つことができる。

 レベルの上昇に合わせて放てる矢の本数が増加する。



 華麗に先制攻撃を決め、かつ初手で蛇頭を無力化したのはさすがの一言。

 だがコカトリスも負けていなかった。

 大きな翼をグンとはたき、まだ着地前のスージーに強風による衝撃波を浴びせたのだ。


 まともに風を受けたスージーは体勢を崩して落下し、地面に体を打ち付ける。

 しかし勢いのまま地面を転がりながらも回転受け身をし、起き上がりと同時に第二射の構えを取った。


 コカトリスから視線を外さず、長弓の弦をギリギリと引きながら、

「……やっぱり、一筋縄にはいきそうにないわね」


 その攻防を固唾を飲みながら見守るアタイとジョニー。


 果たしてアタイたちの出番はあるのか?

 そしてこの手に固く握られた塩コショウの出番は――――?(たぶん無い)




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 強敵コカトリスの攻撃に絶体絶命の大ピンチ!

 奴の繰り出すつむじ風でジョニーの骨がバラバラに吹き飛んじまったよ!

 関節の緩みは脱臼のみならず、姿勢の悪化や種々の疾患にも影響を及ぼしうる!

 現代人の偏った食生活は骨密度の低下を招き、ひいては骨粗鬆症やくる病のリスクを大幅に上げるんだよ!?

 だからこそカルシウム摂取が推奨されるんだろう!

 ビタミンDやKを摂ることも怠るんじゃないよ! わかったね!?


【第18話 ゴブリンガールは風に舞う!】

 ぜってぇ見てくれよな!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 話のテンポがとても良く、楽しく読めます。ガチャという要素を取り入れていても、それで簡単に解決させず、他のところで読者を引き寄せていることを尊敬します。 [一言] ここから先も楽しく読ませて…
[一言] どう考えてもスージー、ド正論(笑)
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