表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【暗号を解く!】編
179/251

第178話 ゴブリンガールは声を上げる!

挿絵(By みてみん)



 あのシブ夫を一撃で切り伏せてしまったケツ顎のオズワルド。

 やはり伝説勇者の名は伊達じゃないみたいだね……!


 だがこの時、オズワルドは人知れず舌を巻いていた。


「……こいつ、あの一瞬でスキルを発動させたのか?」


 オズワルドの能力値が大幅に上回っていたため不発に終わったが、シブ夫は攻撃を受ける直前にブロードカットというカウンター技を使っていた。

 タイミングよく弾くことで相手をよろめかせる効果のスキルだ。

 レベル19で習得できる低級技に過ぎないが、とっさに繰り出すには相当な熟練をしていなければ不可能だった。


 今は自分より遥かに格下のシブ夫が、この先もっと多くのことを学び、習得したとしたら……。

 普通ならば殺すには惜しい逸材だと思ったかもしれない。

 だがオズワルドは病的なほどに保身主義で邪知(じゃち)深い男だった。

 ここで息の根を止めておかなければ、やがて自分を凌駕する存在になるだろうと受け取った。


 オズワルドの大剣が空を斬り、起きたつむじ風が砂埃を押し流す。

 そして露わになる、レンガ壁にめり込んで首を垂らしたシブ夫の姿。


「勇者ゴン太の再来と言わしめる男。確かにその器があるようだ」


 トドメを差さんと沈黙のままのシブ夫へ近づいていく。

 このままやらせるワケにはいかない!

 アタイはとっさに声を上げた。


「待ちな! 転生者が死ぬとどんな影響があるか、まだわからないことだらけなんだよ!?」

「ならそれをいま確かめてみるか?」

「手遅れになるかもね! あんたが欲しがってるこのスマホはシブ夫と一緒に転生したんだ! 消える時も一緒だったらどうすんのさ!」


 スマホと転生者は生死もリンクしているかもしれない。

 というのは完全にその場の思い付きでしかなかったが、奴の手を止めるのには役立った。


「ほう、そういう可能性もあるか……。ではこうしよう」


 ケツ顎に手を添えてニタリと口ひげを上げるオズワルド。


「こいつの手足を切り落として監禁する。転生者は年を取らないという話だ。餓死せん程度に食い物を与えておけば、その間スマホは自由に使える」

「ぞっ……!」

「なんてえげつない考えが浮かぶんだよ!」


 健全な思考回路で出てくるアイデアじゃないでしょ!

 なんかこいつ過去イチでラスボス感ない?

 マントを揺らして低い笑い声を響かせる姿はまさに悪役さながらの佇まい。


 だがそこで、不快な笑いが前触れもなくピタリと止まった。


「――――空気が変わったな?」


 その直後、地下ダンジョンの出入り口として使った古井戸からものすごい勢いでヘドロが噴き上がった。

 何が起こったってんだい!?


 宙を舞う泥は狙いを定めて直下のオズワルドに降りかかる。

 そして驚いたことに、鎧に付着した泥はまるで生き物かのごとくウネウネと蠢き始めた。

 人面のように目鼻のくぼみが浮き出て、うめき声すら発しているではないか!


「チッ! 魔術か!」


 すぐさま汚れた鎧を脱ぎ捨てるオズワルド。

 地面に転がった装備はギリギリと軋み、音を立てて人面泥に押し潰されてしまった。


 一方、井戸の中から何かがよじ登ってくる禍々しい気配を感じた。

 ややあって出口から青白い腕がにゅっと伸びる。

 ひええ!


「SADAKO!?」


 だが現れたのはホラー界の国民的アイドル貞○ではなく、大きなウィッチハットに藁ボウキを持った女だった。


「うふ♡ お邪魔しま~す」


 ……アルチナかよ!


 身も凍る恐怖演出とは真逆になんとも脱力的な登場をかましてくれた魔女のアルチナ。

 この性悪女はいつも絶妙なタイミングで図ったように出てきやがるね!


「その通り♡ 性悪のアルチナちゃんはいつも監視魔法で盗み見してるの~」

「ならピンチになる前にさっさと出て来いや!」

「ここぞの場面で登場しないと私の株が上がらないじゃない~」


 助けてくれたありがたみを軽く上回ってくる不愉快さ。

 さすがだね!


「久しぶりだなアルチナぁ。相変わらず俺相手には手加減をしてくれんよな」

「だって殺すつもりでやってるんだもん♡」


 どうやらオズワルドとアルチナは顔見知りだったらしい。

 この魔女にはつくづく厄介な知り合いしかいないみたいだねえ!


 でも普段ならアルチナからゲストにダル絡みに行くはずだが、今回は様子が違う。

 逆にオズワルドの方がニヤケ顔で彼女にすり寄っていくのだ。


「そろそろ考えを改める気になったか? そう頑なにならずに俺様のオファーを受けたらどうだ」

「はあ~。まだその話?」

「最強の騎士と魔女である俺たちがパーティを組めばまさに鬼にエクスカリバー。大衆の人気を独占し放題だぞ」

「ほんと、そっちの低俗ぶりも変わらないのね。あんたの言うユートピアほど面白みのない世界はないわ~。考えるだけで反吐が出そう。ていうか実際に井戸から噴き出ちゃった~!」


 かつてアルチナは自分と同じ伝説勇者には変人しかいないみたいな話をしてたが、どうやらそれはオズワルドのことを指してたらしい。

 アルチナにさえも毛嫌いされるとは、このケツ顎野郎もなかなか大したクセ者だよ。


「しかし、お前も転生者に目を付けてたとはな。こりゃあ面倒なことになったなあ……」


 オズワルドはバツが悪そうにボリボリと頭をかく。


「俺様がこいつらを殺そうとすれば全力で阻止してくるだろう?」

「モチよ♡」

「わかったよ。お前とやり合うのは得策じゃない。ここは手を引こう」


 平和的な提案をしたオズワルドと対照に、アルチナの体からブワリと殺気が漲る。


「とか言って、隙を見てシブ夫を殺そうと企んでるの、見え見えよ~? そうなる前に私があんたを殺してやるわ」

「おお、怖い怖い。俺様でなけりゃチビっちまうね」

「長年の腐れ縁ってやつ、そろそろ整理しておきたいの。良い機会だしカタつけましょうよ~」


 臨戦態勢に入る最強騎士と最凶魔女。

 毎度のことだけどアルチナが助太刀に来るせいでより事態が悪化するってどういうこと?

 マジでいい加減にしろよこの疫病神が!


「ねえゴブ子ちゃん。俺らはどっちを応援すればいいの?」

「どっちっていうか両方死んでくれれば一番いいよね」


 ――――睨み合うアルチナとオズワルドが攻撃を交えるその寸前、廃村の入り口の方から馬のいななきが鳴った。

 どうやら何者かの集団が近づいてくるようだ。


「あらあら、もしかしてあんたんとこの騎士団がシブ夫を迎えに来たのかしら?」

「残念だがタイムオーバーだな。俺様がここにいると知られると面倒なんでね。悪いがおいとまさせてもらおうか」


 オズワルドは剣をしまうとアタイたちに振り向いてウインクした。


「どうせまた近い内に会うだろうさ。王都マデランティーユでな。その時までお楽しみは取っておくとしよう」


 そうしてマントをなびかせると地面を蹴って宙を走り、あっという間に姿を消してしまった。


 おう帰れ帰れ!

 二度と顔拝ませんじゃないよ!


「それじゃあ私も退散しよっと」

「えっアルチナちゃんも行っちゃうの?」

「私、昔あの王国ともひと悶着起こしちゃっててね~。先代の王に嫌われてたの。気まずw」


 『ギルド潰しの凶魔女』の異名の通り、方々でいざこざを抱えてるみたいだね。

 過去に何があったのかは聞きたくもない。


「そう寂しがらないで~。まだまだ暴れ足りないし、私もすぐにまた顔を見せるから♡」


 不吉な言葉を残してホウキに跨るとドロンと姿を消してしまった。


 その一寸あと、残ったアタイとモリ助、そして意識を失ったシブ夫の元に馬に乗った甲冑姿の男たちが現れる。

 旗兵(きへい)が掲げる大きな軍旗にはオズワルドの身にまとっていたメダルと同じ紋様が描かれていた。


「我々は王国マデランの使者。領王様の命でお迎えに上がりました」


 ……こいつは一難去ってまた一難だね!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 アルチナの気まぐれな乱入によって命拾いをしたアタイたち!

 オズワルドのクソ野郎に警戒しつつ、とうとう王国へと足を踏み入れるのだった!

 そしてゴン太の残したという謎の暗号を前にするのだが……。

 見た事もない幾何学模様が並んでるだけでさっぱり意味がわからないよ。

 と思ったら! えっ? シブ夫とモリ助は一目で答えがわかっちゃったの?


【第179話 ゴブリンガールは押送される!】

 ぜってぇ見てくれよな!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ