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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【暗号を解く!】編
177/251

第176話 ゴブリンガールはヨダレを垂らす!

挿絵(By みてみん)



「おいおい嘘だろう。本当に俺様の名を聞いたことないのか? 超有名人だぞ。各都市にファンクラブが点在してるくらいのな。いわばザ・英雄というやつだよ」


 黄金鎧をガチャガチャ鳴らせておどけるオズワルドとかいう男。

 ……こいつ、うぜえな。


「ハシで摘まんで敵を倒す英雄がどの世界にいるってんだよ」

「ていうかハシ使いならなんで剣しょってんの?」

「ハハハ。オツムの固い奴らだな。ひとりの勇者にひとつのジョブとは限らないだろう」


 ん?

 ってことは箸と剣の両刀使い?


「それだけじゃない。弓でも盾でも槍でも、武器と名の付くものの扱いは一通り心得ている。しかもその内のいくつかはレベル90を超えているしな」


 ちょっと待ちな!?

 こいつはレベル90越えの伝説級勇者だってのかい!


 一般的に勇者はパーティーを組んで行動する。

 ひとりがオールマイティに能力を高めるよりも、専門性を特化させた数人で連携する方が戦闘力の底上げが効率的だからだ。

 そのため基本ジョブはひとりひとつを選択するのがスタンダード。

 つまりこいつは超非効率な鬼畜プレイを進んでやっているワケだ。


 単一のジョブを極めるにしても想像を絶する鍛錬が要求されるだろう。

 レベル90の領域に達するには才能やセンスに加え、並みの精神からかけ離れた変態でなければまずなれない。

 あの性悪魔女アルチナのようにね。


 だというのに、あまつさえそれを複数のジョブでこなしているだって!?

 どうやらこのヒゲ野郎、変態の中の変態らしいね!


「どうだ? そろそろ俺様のすごさがわかってきただろう。今からでも遅くはないからひれ伏しておきたまえよ」


 腰に手を付いて仰け反るように大笑いするオズワルド。


「正気の沙汰じゃないね。あんたをそこまでレベ上げに駆り立てるモチベーションはどっから湧いてくんのさ」

「決まっているだろう。富と名声だよ!」


 俗欲まみれじゃねえかよ!


「俺様の名を聞いただけでモンスターは命乞いし、女たちは黄色い声を上げる。その叫喚を浴びる時ほど心が昂る瞬間はないねえ。はあ~、ゾクゾクするなあ!」


 恍惚(こうこつ)を浮かべてブルブルと身震いする変態ナルシスト勇者。

 これほど自己顕示欲に溺れたヒーローがいて良いのだろうか?

 アタイとモリ助は青ざめてジリジリと後ずさった。


「ところで、その平べったい箱が『異世界の錯誤物』だろう。なかなかに興味深い。いや、実に面白いねえ」


 オズワルドはケツ顎を撫でながらしげしげとアタイの手の中のスマホを見つめる。


「いやね、いくつもジョブを掛け持つと所々で支障が出てしまってなあ。そのひとつに装備品の切り替えの問題があるのだよ」


 武器は強力なものほど大型化・高重量化する傾向にある。

 オズワルドの場合、ジョブごとに適した武器を揃えて携帯しようとすると、それだけですぐに重量オーバーだ。

 まともに探検できる状態ではなくなってしまう。


 だがしかし、ガチャを利用するなら手持ちの品はスマホひとつで楽ちんだ。

 排出されるアイテムはランダムだが、何が出てもこの変態ならそれなりに使いこなせるだろうしね。

 しかも消費アイテムなので使用後は泡になって消えてくれる。

 これほど機能性に優れたものは他にないってことか。


 そこまでがわかって、アタイはスマホをさっと懐に隠して顔をしかめた。


「ダメダメ! これは異世界から持ち込まれた唯一無二の道具なんだ! 売りもんじゃないよ!」


 そうして一度拒絶を見せておいてから、ニタリと悪徳顔を作って言った。


「……まあもっとも、お客さんの熱意次第で話は変わりやすがねえ?」


 伝説勇者というくらいだから相当稼いでるに違いない。

 このチャンスに吹っ掛けられるだけ吹っ掛けるよ!


「まずはそちらの提示額をうかがおうか? 誠意ある数字を聞かせてもらいたいもんだねえ」


 モリ助はごく自然にオズワルドの隣に並び、肩に手を回して親し気に笑いかける。


「もちろん取り扱ってる品はこれに限らないぜ。お得意さんになってくれんなら今後も格別なネタを優先してお届けしちゃうよん☆」


 え? そんなに簡単にスマホを手放しちゃっていいのかだって?


 うるせえな! いいんだよ!

 アタイらが持ってたって宝の持ち腐れだろうが!

 スマホだって自分の力を引き出してくれる奴の所へ渡った方が喜ぶに決まってる!

 適材適所ってやつだよ!


 そんなアタイたちに侮蔑のこもった視線を向けて、オズワルドは仕切り直しの咳ばらいをした。


「まあその件は後回しだ。本題は他にあるのでね」


 そういやこいつ、もともと転生者に用事があるとか言ってたんだっけ?


「話は長くなるが、いま俺はとある国の騎士団に籍を置いていてな……」


 ――――王都マデランティーユ。

 それはこの大陸の西部に位置する歴史の長い王国の首都だ。

 領土面積で言えば小国に分類されるのだろうが、豊かな資源と安定した国政、そして強大な軍事力を誇る。

 他国に対しても大きな発言力と影響力を持つ、大陸の中心的国家なのだ。


 勇者というのは魔物の討伐を主な目的にフリーで活動する冒険者たちの総称だが、一部の者は『雇われ勇者』として国や組織に属することがある。


「つまりあんたはそのマデランティーユって国の専属勇者なのかい」

「親衛部隊の名誉騎士の称号を預かっている。そこらの勇者ではまずありつけん職だ。ほれ見ろ」


 オズワルドの胸元に輝くマント留めのメダルには美しい紋様が彫り込まれていた。

 その金細工ひとつとっても相当な価値がありそうだ。


「スゲー! 潤ってそうだな~!」

「こりゃあバカ真面目にクエストをこなすよりよっぽど割りが良いんじゃないの?」


 アタイたちはヨダレを垂らしながらオズワルドに上目遣いする。

 この成金男は気に喰わないが、コネを持っておいて損はないだろう。

 上手くいけば王都とやらから何か仕事を斡旋してもらえるかもしれないねえ!


「まあそう焦るな。自から売り込みに行かずともじきに向こうからお声がかかるさ」

「えっ、そうなの?」

「転生者に用があるってのは、つまり……」

「お察しの通り。我が王は近頃『異端の勇者』とやらにご執心でね。というのも、100年前に名を馳せた伝説勇者『山崎ゴン太』がその転生者だったというじゃないか」


 出た、山崎ゴン太!

 アタイらはこいつを探し出すためにラスボスダンジョンの魔境まで殴り込みに行ったこともあったが、とうとう手掛かりを見つけることが叶わなかった謎多き男である。

※詳しくはメインクエスト【魔境へ行く!】(122話~)を参照。


 ゴン太は当時もっとも魔王に近づいた正統派勇者として広く語り継がれている。

 その後継者として転生者を集めようって輩が現れるのもうなずける話だ。


「転生者を揃えた上で本格的に魔王討伐に繰り出すのか、はたまた兵力増強して他国と戦争でも起こすつもりか。まあ俺様の関知するところではないがね」

「うわ~壮大な流れになってきたな……」

「だが話はそれだけではない。実はゴン太は先々々代の王と関わりがあったそうでな。国に滞在して魔獣退治に協力したらしいのだが、その時の所持品が城に残っているのだよ」


 ゴン太の持ち物だって?


「そのひとつに巻物がある。中身は得体のしれない言語で埋められていて解読班はまったくのお手上げ状態だ。そこでキミたちの出番というワケだよ」


 ――――暗号!?

 おいおい、ここにきてそんな重大情報がぶっ込まれるとはね!

 一度頓挫したゴン太の捜索が再始動だよ!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 異世界人にしか解けない暗号?

 ゴン太の野郎、粋なんだか面倒くさいだけなんだかわからないアクションをしやがって!

 まあしょうがないからこのゴブ子様が協力してやんよ!

 ……と思ったら、オズワルドの奴が徐々に本性を現し始めたよ?

 やっぱり伝説級勇者ってのは一癖も二癖もある酔狂人みたいだね!


【第177話 ゴブリンガールは算段をつける!】

 ぜってぇ見てくれよな!




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