第168話 ゴブリンガールは見通しを立てる!
「さあ、女子会編の最終日となる今夜のゲストはこの人よ!」
スナックの扉が開くと同時に飛び込んできたのはピンクのパーカーにスウェット姿のクソナンパ男、モリ助だった。
※モリ助についてはメインクエスト【魔境に行く!】(第122話~)を参照。
「ゴブ子ちゃ~ん! 会いたかったよマイスウィ~トハート♡」
そのままこちら目掛けて駆け寄ってくるその顔面に、アタイは力を込めてビールジョッキを叩きつけた。
砕けたガラス片が顔中に突き刺さり、噴き出す血液と降りかかったビールが混ざり合ってグショグショに湿るモリ助。
すっ転んでツルツルと床面を滑り、台所の棚に激突して崩れ落ちてきた食器類に埋もれた。
「回を追うごとにやられ具合がダイナミックになるわね~♡」
アタイはギロリと傍らのスージーを睨む。
「なんでアイツ呼んだの? そもそも女子じゃないし」
「私は知らないわよ」
「……もお~! 主役であるゴブ子ちゃんと結ばれる運命なワケだから、俺がこの物語の正統派ヒロインってことっしょ?」
その理屈で女子枠にねじ込むのは無理が過ぎるだろ。
あと勝手に結ばれる運命にもしないでほしい。
モリ助は血濡れのままカウンター席に腰かけ、足を組んでキメ顔を作るとピク美に囁いた。
「ママ。こちらのキュートなお嬢さん方にシャレオツカクテルを。ふっ、今夜は俺の奢りだよ☆」
「あんた金持ってないだろ~?」
「もち、ツケで」
モリ助はシブ夫と同じく異世界からやってきた転生勇者だというのに、まともなRPGの知識が無いためほぼ冒険らしいことをしていない。
未だにジョブにも就いてないレベル1の甲斐性なし。
満足にクエストを受注することすらままならないクソザコ野郎なのだ。
こんなフザけた設定のクセにメインストーリー上の主要キャラというのだから解せない。
「登場から1年経ったけどあんたいた意味なくない? もう降板すれば?」
「そんなぁ~! マイスウィハ~(スウィートハートの略)!」
「まあまあ。モリ助自体はアレでも、彼の失くしたスマホが後々のキーアイテムになるのかもしれないし~」
「アルチナちゃん。それフォローになってないよ?」
モリ助が仲間に加入した経緯とかもうみんなおぼろげにしか覚えてないよね?
ということで今回はこれまでのメインストーリーを振り返って、ついでに今後の展開についてもちょっぴり予告しちゃおうと思うよ。
もちろん面白さを損なう系のネタバレは無いので安心してね。
「目次のページには表記されてないからわかりにくいけど、実は本作には章構成があるのよ」
1~50話くらいまでは【1章:抗うモンスター】として、アタイがスマホを手に入れて打倒魔王への冒険に出発するというあらすじが描かれる。
ここで大概のレギュラーキャラが出揃う。
続く【2章:見違える転生勇者】はイケメン化したシブ夫と合流し、旅の目的も伝説の転生勇者『ゴン太』の捜索へとシフトチェンジする。
話数で言うと大体50~120話くらい。
そして今現在の【3章:彷徨える転生勇者】は道中で新たな転生者であるモリ助と遭遇するといったお話である。
「ざっくりまとめると魔王退治のため、そして転生者に関する情報収集のためにゴン太を捜そうってカンジね~」
「内容うっす」
「これで160話も使ってんの? マジ?」
投稿始まって2年くらい経つんだけど。
全然進んでないじゃん。
やる気あんの?
「でも作者の脳内構想では6章で完結するらしいわよ」
「あら~。なんだかんだ言ってオチはちゃんと考えてるのね」
「ちょっと待ちな。まだ3章の途中ってことはこのペースだと終わりまで3~4年かかるじゃないのさ!」
うすら寒くなるアタイ。
「それについては安心して。後半の5・6章はメインクエストのみの一本道になる予定だから。ボリューム的にはぐっと減るわ」
「やったぜ」
「ていうか~。サイドクエストやりすぎなのが異常なんじゃない~?」
裏話だが、もともと作者はドラ〇もんとかサ〇エみたいなほのぼの日常ストーリーが延々と続くタイプの作品を作りたかったらしい。
書き始めたときも特に結末は考えておらず、1章以降はサイドクエストのみを書き連ねていくつもりだったとか。
でもシブ夫を再登場させるあたりから真面目に設定を考え出したら良さげなオチを思いついたそうな。
「だから完結はさせるようだけど、それまでは寄り道もたくさんするでしょうね。それこそ思いつくネタが尽きるまで」
「でもさぁ。いくらサイドクエスト攻略してもアタイ固定レベルだからEXPもらえないんだけど」
「あはは。骨折り損なだけじゃ~ん」
無駄無駄。
サイドクエストとか全部無駄。
と思ったらアルチナがチッチと指を左右に振った。
「冒険を通して得られるのは経験値だけじゃないでしょ? たとえば~。仲間との出会いとか、絆とか!」
「おっ! アルチナちゃん良いこと言う~!」
「一理あるわね。使い古された展開だけど、最終局面でこれまで登場したキャラが主人公のために駆け付けるとかってあるでしょ。話だと作者もアレやりたいらしいわよ」
うわあ。
少年マンガかよw
まあ確かに熱い展開ではあるけどね。
「それに備えてせっせと新キャラを量産してるってことか」
「この物語の濃ゆキャラが勢ぞろいしたらどんな絵ヅラになるんでしょうね~。怖いもの見たさで興味あるかも♡」
……ん? 待てよ。
そこでアタイははたと気付く。
「アタイ言うほどキャラたちと絆紡いでなくね?」
「えっ……」
「………」
いろんなクエストで共に死地を乗り越えこそしたが、二度と顔を拝みたくないレベルで関係を悪化させることはあっても、友情を育んだことなど一度も記憶に無い。
しばらく首をひねってみたが、ピンチに駆け付けてくれそうな助っ人の姿など一人も思い浮かばなかった。
アタイにはよほど人徳ってものが無いみたいだねえ。
自分で振り返ってみて改めて驚くよ。
「……ていうか別に誰も来てほしくないけどね。どいつが来たとしてもダルそうなんよ」
「………」
「……まあ、そうね」
作者には悪いけど、思い描いてる胸アツ展開は実現不可ってことで。
サーセン。
「なんか気まずい~w」
「まあ飲も。飲んで忘れよ」
「何はともあれ今後もゴブガをよろしくね! あと2023年明けましておめでとう」
「雑!」
最後の最後ですごい微妙な空気になった女子会。
まあでもこんなもんでしょ!
アタイらなりに頑張ったっしょ!
長丁場で女子のダベりを垂れ流すだけの誰得企画、最後まで見てくれてありがとう。
今回のクエストで少しでも本作の世界を掘り下げて感じてもらえたなら嬉しいことはありません。
「じゃあ終わったんでこのまま打ち上げと洒落こもっか☆」
「まだ飲むの!?」
「本当に長かったわね。おかげでイライラがさらに募ったわ」
「やだ~朝まで愚痴吐きコース♡」
場末のスナックにはいつまでも女子たちのキャピり声が途切れなかった――――。
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
なんか今回のクエストは作者の自己満感がすごかったね!
新年早々からホント勘弁してくれよ!
さて次回はシーズンクエスト行くよ。
そう、散々メインストーリーが進まないとか言っときながら、なおも寄り道エピソードを挟んでいくスタイル。
ブレないねえ!
シーズンクエスト【バレンタインする!】編、始まるよッ!
【第169話 ゴブリンガールはキューピットと出会う!】
ぜってぇ見てくれよな!




