第164話 ゴブリンガールは恋愛トークする!
始まったよ!
地獄の女子会の第2夜が!
あんたたち、覚悟は良いね!?
「冒頭のあらすじイラストでモロバレだと思うけど、今夜のゲストは頑張り屋のギルド勇者、クラレスちゃんよ」
「よろしくお願いしますっ!」
威勢の良い返事とともにぎこちない足取りで席に着くクラリス。
こいつは堕落勇者集団『ハイベンジャーズ』を良きギルドへと立て直すために翻弄している駆け出し勇者だ。
※クラリスについてはメインクエスト【ギルドに入る!】(第141話~)を参照。
「憧れの先輩方にお会いできてとっても嬉しいです! 不束者ですが今日は精一杯頑張ります!」
「あら~初々しいわね♡」
「なんだか私たちにも後輩ができたみたいで照れるわね」
「おう新入り! 酒つげよ酒!」
「お酌させていただきます!」
さっそく後輩イビリを始めるアタイにスージーが顔を曇らせた。
「ちょっとゴブリンガール。あなたレベル2でしょ? この子の方がずっと先輩じゃないの」
「ああん? 登場したのはアタイの方が早いんだからこっちが先輩だろ?」
というかその理屈で言ったらこの中で一番の古株はアタイになっちゃうねえ。
「なんだいスージーもアルチナも大御所に向かって図が高いよ! あんたたちもつぎな!」
「馬鹿じゃないの? 描かれてなかっただけで私はあなたよりずっと前から冒険に出てるのよ」
「うふふ。経験値で言えばキャラの大半は私に及ばないわよ~」
「私だって、勇者業に対する熱意なら誰にも負けるつもりはありません!」
なんだか意味不明なマウント合戦が始まっちゃったよ。
「そういえばアルチナさんってレベル90越えなんですよね。すごいです!」
「あら、ご存じ? も~照れちゃう~」
「伝説勇者は私の目標なんです! 厳しい修行を最短でも数十年は積まないとなれませんよね? 今おいくつなんですか?」
「レディにそれを聞いちゃうの? ヒ・ミ・ツ・よ♡」
「え~教えてくださいよぉ!」
「クラリスちゃんは怖いもの知らずなのね~」
クラリスにとっては純粋な好奇心なんだろうが、普通にとんでもないキラークエスチョンだ。
アタイとスージーは静かに青ざめる。
「ちょっ……」
「クラリス。そのくらいにしておきな。殺されるよ」
こいつはいわゆる犬系後輩ってやつだろうか?
表情豊かでいろんな興味関心に進んで頭を突っ込んでいくタイプだ。
にしても天然がすぎて近い内に手酷い目に遭うことは必至だろう。
「そういやクラリスってギルドでは紅一点なんだっけ。逆ハーレムじゃん」
「今の内に女社会での立ち振る舞いを身に着けておいた方が良いわよ」
クラリスの世間知らずぶりに引きつつ、スージーは懐から紙資料を取り出した。
「まあ確かにこの物語のキャラの年齢層については今まで語る機会が無かったわね。設定だとゴブリンガールは大体14歳くらいだそうよ」
「えっそんな若いの?」
「小生意気な中学生ってカンジでぴったり~」
「その他はおおむね16~18歳のあいだね。シブ夫くんやモリ助くんは高校生のときに転生したのね」
「ふうん」
アタイ一番年下じゃん。
くそ余談だけど、初期のゴブガの構想ではもっと幼女を想定してたらしい。
始まりの舞台もとある村の小学校からだったとか。
ゴブリンの子が村人たちと日々のトラブルを解決していく学園モノ。
しかもアタイは『ゴブリン訛り』という体で終始関西弁だったという。
いま思うと寒気しかしない。
「あれ? ちょっと待ってください」
クラリスが眉間に皺を寄せて何やら考え事をし始めた。
「……私たち未成年なのになぜお酒飲んでるんですか?」
「えっ」
「まあ、それは……ね?」
「ガチャについても、未成年だと課金できないはずですよ」
ったくうるせえなあこの頑固一徹女は!
向こう(読者の世界)とは法が違うからいいんだよ!
と思ったらスージーもクラリスと同じポーズで頭を捻りだした。
「待ちなさい……。この子、すごく重要なことに気付いたのよ。見守ってくれる保護者がいない状態で、倫理観の無い未成年にスマホを持たせるとどうなるか。それを見事なまでに体現しているのがゴブリンガールの借金生活じゃない」
「放っておけば第2、第3の被害が出ないとも限りません。一刻も早い法整備が必要なのでは?」
「さっそく消費者庁に問い合わせましょう」
生真面目キャラが2人揃うとこういう展開になっちゃうのね!
いい加減にしな!
「飲酒絡みの問題についても、酔っ払い同士の喧嘩は絶えませんし、この前も飲酒運転の馬車が街路樹に突っ込んでいましたよ。治安は悪くなるばかり。それに急性中毒による年間死者数を知っていますか?」
「依存症にアルコールハラスメントも見過ごせない問題ね」
「条例を見直すように市長に掛け合ってみましょうよ!」
「こうしちゃいられないわ。署名活動するからみんなも協力して」
「私たちでより良い社会を目指すんです! 努力、努力です!」
アタイはフルシカトしてグビグビとビールを呑む。
一方で隣のアルチナがニマニマとからかい顔を作った。
「さすが、スージーちゃんとクラリスちゃんは気が合うみたいね~。恋愛の趣味だって同じだもの。仲良くなれないはずがないよね~?」
さっきまで鼻息荒く意気こんでいた2人が、それを聞いてビクリと動きを止める。
「……なんですって?」
「もしかして先輩もシブ夫さんのことを?」
一転して敵意剥き出しの目で睨み合う2人!
「後からやって来て図々しいわよ! この新入り娘!」
「出会いには後も先もありません! 私は勇者業とシブ夫先輩にかける情熱は誰にも負けませんから!」
「ふざけるんじゃないわよ! こんなの吞まないとやってられないわ!」
「私だって!」
口の端から液体が滴たるのも構わずに、豪快にジョッキの中身を飲み干す乙女たち。
恋する女の子はつおい。
「ママ! ビールおかわり!」
「ありったけ持ってきてくださいよ!」
「アハハハハ!」
「まあまああんたたち、落ち着きな? あとシブ夫はアタイのものだからね?」
「ハア!?」
「表出なさいよォ!」
ドンッ!(スージーがジョッキを机ドンする音)
「出てやるよ来いよオラあ!」
「ちょっと~! あなたたちが治安悪くしてどうするの~(笑)」
「知ったこっちゃないわ!」
「私たちの思い付きくらいで社会が変わったら世話ありませんよ!」
「ヒ~! ヒ~!」
バンバンッ!(アルチナが大笑いで机バンする音)
今宵も場末のスナックには慎ましき女子たちの咆哮が轟く。
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
なんか今回言うほど恋愛トークじゃなかったね。
思いつくままにキャラに喋らせとくとすぐ脱線しちゃってね、尺足りなくなるんよ。
めんごでやんす。
さて第3夜はゲストに悪役令嬢を招いて、いくつかのキャラの意外な初期設定やら裏設定やらについて語っちゃうよ!
【第165話 ゴブリンガールはキャラ語りする!】
ぜってぇ見てくれよな!




