表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
シーズンクエスト【海賊王に俺はなる!】編
154/251

第153話 ゴブリンガールは水しぶきを浴びる!

挿絵(By みてみん)



 圧倒的な力量の差を見せつけるリヴァイアサンに打つ手なし。

 赤服団の男たちはベソをかきながら巨大な水龍を見上げるのみだ。


「こんなのに敵うはずがねえ!」

「どうすればいいんだ! サンタルチア様、指示をくだせえ!」

「OK~♪」


 サンタルチアは残存している船に向けて大声を上げる。


「全艦、あの化け物に向けて全速前進! と・つ・げ・き~!」

「ええ!?」


 まさかのカミカゼ!?


「考えなしにぶつかっていっても無駄死にですぜ!?」

「やだ~! その考えを思いつくためには相手の出方を観察しなきゃでしょ? あなたたちはそのための捨て駒よ♪」

「ひどい!」

「トナカイはサンタクロースに絶対服従~♪」


 サンタルチアの無慈悲な指令で次々と特攻を仕掛ける赤服団の船。

 だがリヴァイアサンの鋼鉄の鱗に傷ひとつ付けられぬまま沈んでいく。


「……闇雲にやってだめなことはわかったな」


 ふいにした声の方を振り返ると、ずぶ濡れで甲板によじ登ってきたジョバンニがいた。

 海に落ちたあとにここまで自力で泳ぎ着いたようだ。


「あの分厚い鱗が問題よね~。一片でも剥がせればそこから有効なダメージを通せそうなんだけど」

「……間近で見てわかったことだが、鱗同士の境に若干の隙間がある。正確に一点を狙えばやりようはあるが、それには奴の動きを止める必要がある」


 動きを止めるったって、どうやって?

 解決策を考えてるあいだにも次々と味方の船は墜とされていく。


「チャンスにかけてもう一度攻撃を仕掛けるしかないわね~。赤服団が陽動を請け負うわ♪ 注意を引いてる内に喉元まで接近してよ~」

「またあれに近づくの!? もうヤダ!」

「ていうかあの勢いじゃ近づきようもないンだわ」


 リヴァイアサンの生み出す渦潮にかかれば泳ぐどころか息継ぎだってできっこない!


「あら~ん♡ それなら私にお任せぇん! セイレーンは水の中でこそ真価を発揮するのよお」


 見れば海面に顔を出したドブスオットセイが色目遣いでアタイたちを手招きしている。


 え?

 あいつに掴まって海を渡るの?

 苦笑いで顔を見合わせるアタイとスラモン。


 ジョバンニはそんなアタイたちを海へ蹴り落とし、次いで自分もダイブした。

 デブスのネットリとぬめる両腕に抱きかかえられ、3人は高速潜航で水龍へと近づいていく。

 あぶくの中でまともに息を吸い込めないが、仮に吸えたとしてもオットセイの刺激的な体臭によって意識障害を起こすのだろう。


「あっ、そうだ思い出したンだわ!」


 スラモンがパッと顔を上げて満面の笑みでアタイを見る。


「スライムは海の中だと水に溶けて無くなるンだわ。そんじゃおいとま~」


 そう言って徐々に形を崩していき、ついには完全に姿を消してしまった。


 そういやそんな設定あったね昔に!

 クソが!

 逆手にとって捨て身の脱走を働くとは!

 これぞピンチをチャンスに変えるってやつだねえ!


 アタイがこれでもかと舌打ちをしているあいだにトセイ子はリヴァイアサンのすぐ手前まで接近していた。


「イッちゃうわよぉん♡」


 寸胴の体をエビ反りして人魚の尾ビレを勢いよく振るう。

 そうしてトビウオのごとき加速で垂直に海水面を飛び出した!

 トセイ子に抱かれたままアタイとジョバンニも一緒に上空へと跳び上がる。


 突如眼前に出現したアタイたちをリヴァイアサンが見逃すはずもない。

 薙ぎ払うために水竜巻を起こそうと鋭い瞳を輝かせた。


「ヤバいって! ジョバンニ! 攻撃、攻撃!」

「……まだだ。いま仕掛けても不発に終わる。また海に落ちれば次のチャンスは無い」

「んなこと言ってる場合かよ!」


 こうなったら仕方ない!

 アタイは満を持して懐からガチャアイテムのバリカンを取り出した!

 ブルブルと振動する髭剃りマシンを手にアタイは雄叫びを上げる!


「来るなら来いやオラアァ!」


 ありったけの虚勢を張るアタイ。

 だがその肉薄した顔は次第に引きつり始め、苦悶の表情に変わり脂汗を滴らせる。

 そしてついには震える手からバリカンを取り落としてしまった。


「オロロロロロロロロロ!」


 バリカンから発するこの世のものとは思えない腐臭!

 この前よりもずっとデバフが強化されてるみたいだよ!?


「うふん。昨晩コッソリ下の毛も処理したのん♡ パイパンになった私のバミューダ、早く拝ませてあげたいわあん」

「余計なことしてくれてんじゃねえよドブス!」


 アタイはドブスの下アゴにアッパーを打ち込んだ。


 ――――アタイの手から離れたバリカンはリヴァイアサンの鱗にぶつかり、その表面を滑るようにして落下していく。

 すると水龍のまとう水分が電子機器の内部に染み込み、基盤をショートさせたらしかった。

 バチバチとスパークが散って電流が竜の体の一面を巡る。


 わずかな量の電流でしかなかったが、水属性に有効な雷属性。

 よもや電気ショックを浴びられるとは予想もしていなかったリヴァイアサンは一瞬のあいだ怯んでしまった。


 およよ……?


 みんな、見てくれたかい!?

 すべてアタイの計画通り!

 これぞ超必殺、ゴブリン流の雷魔法だよ!(そういうことにしておくよ)




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 怒りのスーパーパワーでゴブ子の腕から解き放たれた100万ボルト!

 イカヅチの刃は悪の化身リヴァイアサンを打ち砕き、止まることなくサメ愛護コスプレマンのジョバンニ、そしてイカれサンタクロースへと次々に襲い掛かる!

 夢を託して散っていった仲間たちのために、そして海の平穏を取り戻すためにも、立ち止ることはできないのだ!

 復讐の鬼と化したゴブ子の前に立ち塞がるのはラスボスの凶悪体臭オットセイ。

 長きにわたる海賊クエスト、ついに最期の戦いが幕を開ける――――!


【第154話 ゴブリンガールは振り子になる!】

 ぜってぇ見てくれよな!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ