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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
シーズンクエスト【海賊王に俺はなる!】編
152/251

第151話 ゴブリンガールは毛を剃る!

挿絵(By みてみん)



 捕虜として2つの海賊団のあいだを行き来した挙句、岩窟の底まで連れてこられたってのに……。

1ゼニも手に入らないままくたばってたまるかってんだ!

 こうなりゃ最後の手段だよ!


 アタイはここぞとばかりに懐からガチャアイテムのバリカンを取り出した!


「……なんだあれは」

「毛を剃る道具なンだわ」

「謝罪代わりの断髪式でもやるのかしら?」


 見慣れぬバリカンに怪訝な目を向けるジョバンニとサンタルチア。

 アタイはその一瞬の隙を突き、さっきからずっと脇で寝転がっているトセイ子に飛び掛かった。


「いや~ん♡ 痛くしないでねえ?」

「うるせえ! やいエセ海賊ども! これ以上近づくとこのバケモンの毛を一本残らず剃り落とすよ!」


 そう言ってご自慢の赤い巻き毛にバリカンを突きつける。

 その蛮行を見てさらに怪訝な顔をする面々。


「……だからどうした?」

「やれば?」

「剃~れ♪ 剃~れ♪」

「……ふん。まだ状況がわかってないようだね! 伝説によれば秘宝の在りかを知ってるのはこのマーメイドもどきのみ。こいつの機嫌を損ねれば最後、トレジャーハントはドン詰まりだよ!」


 そう叫んでバリカンのスイッチを押し込む。

 ブルブルと震える電動機器を間近で見てトセイ子は思わず声を荒げた。


「らめえええ! 私のビューティヘアー! スキンヘッドの人魚なんてお嫁に行けないじゃないいいい!」


 どっちにしたってお前の容姿じゃお嫁には行けないだろうけどな!


 ドブスを人質にして不敵に笑うアタイ。


 ――――だがそこで異変が起こった。

 アタイの笑顔は次第に引きつり始め、苦悶の表情に変わり脂汗を滴らせる。

 そしてついには震える手からバリカンを取り落としてしまった。


「……オロロロロロロロロ!」


 四つん這いになって盛大に胃の中身をぶちまけるアタイ。


 ……一体どうしたのかって?

 この半魚人の猛烈な刺激臭で脳が拒絶反応を起こしたんだよ!

 ザリガニの死骸入りのドブ水を三日三晩放置して存分に発酵させ尽くしたような生臭さ!

 おまけに肌の表面もぬめぬめして気色悪いし!


 なるほど、セイレーンの最大の武器は魅惑の歌声でも耳をつんざく咆哮でもなく、熟成された体臭だったワケだね……。

 勉強になったねえ。


 とめどなくゲエゲエ吐き続けているアタイの隣でふいにトセイ子がバリカンを拾い上げた。


「あらあん? これムダ毛の処理にちょうど良いかも~♡」


 そうして刃先を脇の下に押し当ててジョリジョリやり始めた。

 オブォエエ!

 よくもバリカンをハザード汚染してくれやがったね!

 これでもう二度と使えないわボケ!


「……そろそろ茶番は終わりにしてもらおうか」


 沈黙を保っていたジョバンニが静かに口を開く。


「そこの半魚人は水先案内人として俺が連れていく」

「ちょっと、勝手に話を進めないで~。私にだって案内人は必要なのよ?」


 再び殺気をほとばしらせるジョバンニとサンタルチア。

 どうやら互いに一歩も退く気はないらしい。


「……お前のようなサンタクロースに『黒真珠』の価値がわかるのか? たった数週間海賊の服を着て気分に浸っていただけの輩が」


 まあ海賊の格好で気分に浸ってるのはお前も同じだけどな?


 するとサンタルチアは手を叩いて爆笑した。


「あははは! 『黒真珠』? そんなものの価値なんてわかるワケないじゃない」

「……ならなぜ宝を追う?」

「そんなの決まってる~。例の真珠を守ってるっていう伝説の水龍! そいつをタコ殴りにするためよ♪」


 ――――サンタルチアが狙っている『赤服の船乗り』のトロフィー。

 その実績解除の条件は『船を使って特定モンスターを討伐し、その返り血を浴びる事』だ。


 ……はて?

 サンタルチアはモンスター、ジョバンニはアイテムが狙いなら、別に2人の目的は拮抗しないね?

 それどころか利益が合致するんじゃないの。

 その事実に気付いて急に静かになる地下道の中。


「……じゃあひとまず休戦ってことでOK?」


 そこでちょうど毛の処理をし終えたトセイ子が満足気な顔を持ち上げた。


「そろそろ私の取り合いは終わったかしらあ? それとも平和的に3Pで解決しちゃう? うふ~ん! ナマ足魅惑のマーメイド♡」


 アタイたちは手近な棒切れでトセイ子をぶん殴って気絶させ、協力して洞窟の外へと運び出した。


 岩礁の周囲には両方の海賊団の船が停戦状態で停まっていた。


「ジョバンニ。あんたの船は攻撃でボロボロにされたけど、なんとか沈没は免れてたみたいだね」

「……ああ。応急修理しかできていないがひとまず航行に問題はないだろう」


 そこでアタイの目の端が異常を捉えた。

 なんとジョバンニの船の帆にジョニーが縛り付けられているではないか!


「おおーい! いい加減降ろしてくれよー!」


 無様に泣き喚くジョニー。

 何やってんのあれ!?


「赤服団の攻撃で海賊旗が燃えてしまってな。ドクロマークが無ければ海賊としてサマにならないだろう」

「だからってスケルトンを(はりつけ)にすなー!」

「案ずるな。『黒真珠』は染め物の色材として利用されるアイテムだ。それを使って新しい海賊旗を立てた後は、貴様の友達は責任を持ってサメのエサにしてやる」


 そこは案じてねえよ!

 アタイたち結局最後はエサにされちゃうんじゃないの?

 もうアタイはこの海賊船から飛び降りたくてたまらなかった。




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 やっと主要キャラが出揃って、これからクエスト目玉の水龍モンスターんとこへ乗り込むよ!

 でもここまでのやり取りですでにヘロヘロ。

 どうせ役立たずだしアタイたちザコモンはここまでで良くないっすか?

 ガチャのバリカンもドブ臭汚染で見せ場終わったし。

 ねえ、降ろしてもらえませんかね?

 ……そんなにサメのエサにこだわります?


【第152話 ゴブリンガールは航海する!】

 ぜってぇ見てくれよな!




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