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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【ギルドに入る!】編
147/251

第146話 ゴブリンガールは予感が当たる!

挿絵(By みてみん)



「クラリスさん。あなたにとってハイベンジャーズとはなんですか?」


 戦闘の最中とは思えない澄みきった声でシブ夫が尋ねる。


「それは……! もちろん、私の大切な居場所です!」


 クラリスは不意を突いた質問に戸惑いながらも、ハンマーを握る手の力を強めた。


「私は不器用だから、憧れの勇者になったは良いけどイマイチ自分の強みを見出せなくて。不安で一杯でした。そんな私をギルドの皆さんが迎えくれて、いろんな武器を貸してくれたり、魔法のことも教えてくれて。嬉しかったんです……」


 ジョブについて相談したり、みんなで狩りに出かけたり。

 そんな健全なギルドとしての楽しい思い出がクラリスにはたくさんあったらしい。


「……ですが、上層部が崩壊して環境は様変わりしました。私は少しでもみんなの役に立ちたくてがむしゃらに頑張りました。与えてもらうだけじゃなくて何かを与えられる人間になりたかったんです」


 脱退者が増えて困窮していく組織の中でクラリスの立ち位置は次第に上がっていった。

 そして気付けば皆を引っ張る立場になっていたのだ。

 しかし、それが結果としてクラリスを苦しめることなった。


「やっぱり私、不器用ですから。頑張るほどに新しい課題が見えて、なにくそって走り続けるほどに空回っていく気がしました。ずっと息切れを起こしていたみたいなんです。……そんなときに先輩が現れた。私の追い求めていた勇者の理想像だったんです」

「だから僕にギルドを一任するというんですか」

「あなたなら私の大切な場所を守ってくれます! だからお願いします! 私と戦ってください!」


「ギルドって、そういうものですか?」


 シブ夫はなおも丸腰のままでゆっくりとクラリスに近づいていく。


「周りをよく見てください。あなたを支えてくれるギルドメンバーがこんなにたくさんいて、今だって惜しみない声援を送っています。そういう関りの中で育まれ、成り立っていくものがギルドではないんですか?」

「え……!?」

「あなたは彼らに与えるだけの存在ですか? 違いますね。彼らからもいろんなものをしっかりと与えられているでしょう。そしてそれはギルド長である今のあなたも、ギルドに入ったばかりの頃のあなたでも変わらなかったはずですよ」


 たとえ立場や役割が変わったとしてもクラリスはクラリスのまま、このギルドを愛する一員のままだったんだね。

 シブ夫の言葉に喚起されてギルド員たちも口々に声を掛ける。


「クラリス! 俺たちはお前無しのギルドなんて考えられないんだ!」

「どうかこの場所からいなくなるなんて言わないでくれ!」

「みんな……!」


 目に涙を溜めるクラリス。

 だがそれを振り払うように再び武器を握りしめた。


「私は……! このままじゃいけないって、みんなのために、私のために、精一杯頑張ってきたんです!」


 しかし、そのハンマーが振り下ろされるより先にシブ夫が彼女の懐に入った。

 そしてなんと、クラリスの体を抱き寄せて両腕で優しく包み込んだのだった。


「わ……!?」

「あなたの体に触れている限り僕も能力の発動対象です。これでは攻撃できませんね」


 抱き合ったクラリスとシブ夫は重力に逆らうようにそっと宙へ浮かぶ。

 対照に彼女の手から離れたハンマーはドスンと音を立てて地面に転がった。


「独りよがりに思い詰めて苦しんでしまうのも悪いことではないですね。そんな不器用なあなただからこそ慕ってくれる仲間たちがいます。そういうハイベンジャーズのままでも十分素敵だとは思いませんか?」


 シブ夫の問いかけに答える代わりにクラリスは涙を流し、顔を真っ赤にしてうつむいた。


 なんという美しいハッピーエンドだろうか。

 このままエモい曲と共にエンドロールが流れてきそうな雰囲気。

 戦いを見守っていたギルドメンバーたちも歓声を上げて喜びあっている。


「で? 結局引き分け?」

「これじゃ賭け金払い戻しなンだわ」

「楽に儲けさせてはもらえないのねー」


 観衆の陰でやさぐれるザコモンとモリ助。


「ん? あれ? 2人の高度上がってない?」


 先ほどまで地表付近をフワフワ浮かんでいたはずのシブ夫とクラリスは、気付けば抱き合ったまま徐々に上空へと昇り始めている。


「……これはちょっとまずいですね。クラリスさん。重力操作の魔法を解いてください」

「で、できません! コントロール不能です!」

「どうしたんですか?」

「わ、わかりませんけど! なんだか心臓がバクバクして! 息が苦しくって! どうにかなりそうです……///」


 ちょっと待ちな!

 あのクラリスのとろけそうなほどに上気した顔!

 間違いなくラビリンスに迷い込んだ乙女の顔だね!


「言わんこっちゃない! タジ、ゴンザレス! さっさとあの泥棒猫を撃ち落としてやりな!」

「言われなくてもやってんだよ!」

「この吹き矢ではすでに射程圏外なのだ!」


 ホモたちの飛び道具攻撃も虚しく、2人はみるみる急上昇してもはや空に溶け込む点にしか見えなくなる。

 大気圏突破でもしそうな勢いだよ!?

 そのまま恋のマジックランデブー?(なんつって笑)


 なんつってじゃねえよオイ!


「今のクラリスの気分を表すように文字通り天まで昇ってンだわ」

「誰うまw」

「まったくシブ夫の奴も隅に置けないな。ね、ゴブ子ちゃん! 腹いせに俺らも一緒に星間飛行しちゃお☆」


 クソクソクソのクソ山クソ太ァー!




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 今年は梅雨明け早すぎない?

 季節はすでに夏本番!

 嫌んなるくらいの猛暑だね!

 みんなのことだからどうせ夏バテしてんでしょ?

 景気づけにシーズンクエストいっとくよ!

 プールに花火にスイカ割り、どんなステキなバケーションが待ってるんだろう楽しみ~☆

 スペシャルサマークエスト【海賊王に俺はなる!】編、始まるよッ!


【第147話 ゴブリンガールは海賊と出会う!】

 海賊かよ!



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