第13話 ゴブリンガールはクエストをこなす!
~平凡な村アキルノ(探索推奨レベル13)~
ドンフーから仕事の連絡が来るまでの間、適当に小金稼ぎをしておけと言い渡されたアタイとジョニー。
どこの村にも『クエストボード』なるものが設置されていて、そこに問題を抱えてる村人の依頼案件が張り出されているらしい。
当分はそこから金になりそうな仕事を探して回る生活になりそうだ。
「いわゆる単発の仕事だろ。ハローワークでは門前払いだったアタイらにも解決できそうなものがあるかもしれないね」
「どれどれ……」
~クエストボード依頼一覧~
・肥料の調達(推奨レベル3)
・汚泥の清掃(推奨レベル5)
・交易路の復旧(推奨レベル10)
・畑荒らしの退治求む!(推奨レベル13)
「……まあ当たり前の話だけど、さすがにどのクエストもアタイらのレベルより上だね」
「だがよおゴブ子。この程度のレベルだったらガチャが使えるんじゃねえか?」
「借金を増やすリスクを負ってかい?」
「これまで俺たちはSSRを引き当てることばかりにこだわってきたが、低いレアリティのアイテムだって使いよう次第じゃ役に立つはずだぜ」
「たしかにね……」
ようし、ひとまずなにかクエストを受注してみるとするかね!
「まずは『肥料の調達』からだ! さっそく依頼主の家を訪問するよ!」
アタイらは地図に示された家を訪ねて扉をノックした。
「やあやあ、よく来てくれたね! あれ、勇者じゃないんだね?」
「勇者じゃなきゃ報酬は出さないってのかい!?」
「問題が解決すんなら誰が受注したって同じだろ?」
「まあそうだね……。うん、いいよ。それじゃお願いするよ」
「そんで、アタイらは何をしたらいいんだい?」
「裏の畑に撒く肥料を取ってきてもらいたいんだ。小川を渡った先にある肥料屋のオヤジを訪ねてくれ」
……ハア?(威圧)
「ちょっと待て。そいつはお使いかなにかか? そのくらい自分で行ってくりゃいいだろ?」
「えっ? いやでも、僕は農作業で忙しいし……」
「クエストボードにビラ貼りに行く暇がありゃできるだろ!」
「でも、クエストってそういうもんだし……」
「なにメタなことほざいてんだよ! バカにするのもいい加減にしな!」
思わず喧嘩腰になるアタイをジョニーが止める。
「いいじゃねえか報酬も出るんだし。行って帰ってくるだけのラクな仕事ならこっちだって大歓迎だぜ」
……まあそれもそうだね。
なんだか腑に落ちないけど請け負ってやるとするかい!
アタイらはお使いに出発した。
ポカポカ陽気の農道を歩き、キラキラと陽を反射する小川を越える。
なんだかピクニックみたいでのどかだねえ!
「仕事をするってのは気分が良いもんじゃないか!」
あっという間に肥料屋に到着する。
だが問題があった。
いくらノックしてもオヤジが出てこないのだ。
困り果てたアタイらは道行く通行人に声を掛けた。
「ああ。その店のオヤジはギャンブル狂でね。昼間っから酒場でカードゲームに興じてるんだろうよ」
チッ! 所定位置にいろやクズが!
こっちは忙しいんだよ!
無駄な手間取らせるんじゃないよ!
アタイらは教えてもらった道順で酒場へと向かう。
その道中、すれ違う村人たちがやけに話しかけてくる。
「クエストが難しいと感じたら装備を見直すといいよ」
「モンスターは種族ごとに弱点部位や有効な攻撃魔法が……」
「知ってるか? ここからずっと北の洞窟にワイバーンが棲みついてるらしいぜ」
……うっとうしいね!
旅に役立つ情報発信サイトかよあんたたちは!
なんか古い情報も混じってるしね!
ちゃんとアップデートしときな!
そうこうする内に酒場に着いた。
アタイは怒りに任せて玄関扉を蹴り開ける。
「ここに肥料屋のオヤジはいるか!?」
「やあ。ここでは回復アイテムを購入できるよ。いらない持ち物があれば売却もできる」
「んな用事はないよ!」
にこやかに迎えた店主を思わず殴り飛ばしそうになる。
店の奥の席にひとりで飲んだくれている男がいた。
どうやらこいつらしいね。
「あんたが肥料屋か?」
「なんだぁ? ゴブリンとスケルトンがなんの用だよ」
「農家の依頼人のために肥料が必要なんだよ。よこしな」
「そんなことより聞いてくれ。さっき賭けで負けちまってよぉ……」
この村の奴らはまったく人の話を聞こうとしないね!
「奴はイカサマ師に違いねえ! 俺の代わりにとっちめてくれないか? そうしてくれたら肥料を渡すぜ」
「アタイらには関係ないね! 今すぐこの場で肥料を渡しな!」
「えっ……。でも、クエストってそういうもんだし」
「メタなことほざいてんじゃないよ!」
勇者ってのはみんなこんな苦労を耐えてるのかい?
こりゃあ相当気が長くないと務まらない仕事だよ。
もしアタイが剣を背負ってたとしたらこのオヤジを問答無用で切り付けてただろう。
結局そこからさらに2~3か所をたらい回しにされて、最終的に依頼人へ肥料を届けた頃には日が暮れかけていた。
「戦闘が無いのは助かったけど、やけに時間を喰うクエストだったね!」
「だがよ、そのおかげで村の地理には詳しくなったなあ。どの通りに何屋があるか自然に頭に入っちまったぜ」
「まるで村の探索のために用意されたかのようなクエストだね。そこはかとなく製作スタッフ側の意図が透けて見えるよ」
メタ発言はこのくらいにして、さっさと報酬をもらおうじゃないか!
「どうもありがとう。助かったよ。報酬を受け取ってくれ」
~報酬一覧~
・100ゼニ
・薬草×3
「缶ジュース一本も買えねえじゃねーか!」
「妥当な額だと思うけど? もっと難しいクエストなら報酬も弾むはずだよ。ぜひチャレンジしてみよう!」
「魔獣退治じゃなくあんたの首を切り落としてやりたい気分だよ!」
勇者ってのはつくづく大変な仕事だね!
なんだかあいつらに同情心すら芽生え始めたよ!
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
しぶいしぶい!
しぶすぎるんだよクエストの報酬がさあ!
おまけにフラグを立てただけであちこちでイベントが発生するしね!
巻き込まれるこっちの身にもなってみな!
盗賊だか洗濯屋だか知らないけど、あんたらに構ってる暇はないんだよ!
【第14話 ゴブリンガールは説教する!】
ぜってぇ見てくれよな!




