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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
メインクエスト【魔境へ行く!】編
126/251

第125話 ゴブリンガールは呆れ返る!

挿絵(By みてみん)



 こちらが敵意を向ければおのずとモンスター側も排除しようと動く。

 なら敵意を捨てれば戦闘そのものを回避できるのではないか。

 それがモリ助の経験を踏まえた上での推論だ。


「この作戦のミソはね、戦う意思はありませんよ~ってのをしっかり態度で示すこと! フリじゃダメだぞ! 見抜かれるから! マジの無関心さを滲ませるんだよ!」

「何言ってんだ? 狂ってるのか?」

「罠なんじゃないの?」


 モリ助は至極マジメに説明を続けるが、その突拍子もない提案には悪態しか返ってこない。

 まあ気持ちはわかる。

 アタイもその状況にいれば普通にキレると思う。


 でも今はこの方法に賭けるしかないんだよ!


「頼むよみんな! 助かる道はこれだけなんだ!」

「ふざけないでゴブリンガール! 武器を下ろした途端に餌食にされるわよ!」

「バカスージー! バカだねあんたは! だったらそこでくたばりな! アタイは大歓迎だよ!」


 そうこうしてる内にみんなはとうとう壁際まで追いやられてしまった。

 全滅まで秒読みだよ!


 と、そこでシブ夫が動いた。

 手持ちの剣をガシャンと音を立てて地面に放ったのだ。


「おいシブ夫!」

「だめよシブ夫くん!」


 シブ夫は目を閉じると大きく深呼吸した。

 そしてゆっくりと、迷いのない足取りで前へ向かって歩き始める。


 その頭上には無数の凶悪な触手たちが蠢いている……。

 だが不思議なことにシブ夫にはチラリとも目をくれない。

 すんなり道を通した、と言うよりはまるで興味を失ったってところだろうか。


「うお~マジか……。普通やれるかね。どんな肝っ玉してんだよあの兄ちゃん」


 あろうことか言い出しっぺのモリ助が目をひん剥きながらシブ夫の姿を見つめている。


「あの無防備で万一攻撃されれば即死だぞ。よほどゴブリンちゃんの言葉を信頼してないとできないって……」


 他のメンツはゴクリをツバを飲んでシブ夫の成り行きを見守っていたが、やがて彼にならい各々の武器を捨てて後に続いた。

 触手たちもピタリと動きを止め、洞窟内は先ほどの死闘がウソのように静まり返る。

 そうしてみんなが無事にアタイらの元にたどり着いた。


「良かった……。シブ夫―ッ!」


 魔獣と言えども奴らはケモノの延長上の生き物。

 狩りやナワバリ争いでなら牙を向けても不必要な戦いは望まないってことだね。

 でもそれは両者のレベルがかけ離れてるという特殊な環境だからこそ通用する逃げ技だろう。


 安堵の息を漏らす仲間たち。


「あなたの機転で助けられました。ありがとうございます」

「いやあ……。正直俺も上手くいくとは思ってなかったんだけどねー」


 モリ助は恥ずかしそうにガシガシと頭を掻く。

 だが次の瞬間にはキリリとキメ顔を作りスージーとシビリオにすり寄っていた。


「こんなにお綺麗なお嬢さん方が勇ましい冒険者とは……。フフ。勇者同士でパーティを組むってのも案外いいものかもしれませんねっ」

「あら……♡」


 甘いマスクの男にこんなふうに持ち上げられれば悪い気はしない。

 スージーはまんざらでもない反応をしたが、対照にシビリオは目の前のチャラ男に険しい表情を作った。


「俺の名前は村井モリ助。以後お見知りおきを☆」

「モリ助……? 私はてっきりあなたがゴン太かと」


 シビリオは渋い顔からさらに眉をひそめてモリ助を一瞥する。


「ちょっとシビリオ、早合点がすぎるよ。こんなレベル1のクソザコがゴン太であってたまるかってんだ」


 アタイは少し前に自分も犯した勘違いを棚に上げ、これでもかとシビリオを笑い飛ばしてやった。

 だがシビリオは腑に落ちない様子で言葉を続ける。


「だって……。彼にもシブ夫と同じく篝火が見えないのよ」

「……ン?」


 篝火が見えない?

 それってもしや……!


「転生者?」

「ん、ああ俺? そうそう転生者。へえーなんでわかったの?」


 マジかよ!?

 思わず固まる一同。


「モリ助さん。僕も同じです。あなたと同じく異世界へ飛ばされたシブ夫といいます」

「えっすげえー! なんかコンパで偶然同じ地元の奴と出会ったみたいなカンジ! えっえっ、シブ夫の死因は?」

「トラックに撥ねられて」

「マジ!? 超奇遇―! 俺も俺も! トラックにガツンとやられちゃってさー!」


 ……なにこのノリ?

 軽っ!


「こっちの世界に飛ばされてもう何年になるかな? 俺ってさ、RPGとかやったことないからイマイチ勝手がわからなくて」


 キャッキャとはしゃぎながら自分語りをするモリ助。


「オープンワールドってどこへでも好きに行けるんだろ? だから観光気分で適当に旅してたワケ。ま、死ぬ前もあっちの世界で似たようなことしてたんだけど」

「どんな一生だったんですか?」

「バックパッカーってのをやってた。中坊のときに家出して、そのまま5年くらいかけて世界一周したよ。でも日本に帰ってきたところで早々にトラックに轢かれてさあ。シブ夫は?」

「僕はニートで、ずっと家に引きこもっていましたね」

「いいねえ。俺もこもれる家があるならニートしてたよ~」


 シブ夫とモリ助は境遇も性格も対照的だけど、話してる感じはウマが合いそうだね。


 ひとしきり転生前の世界での思い出話に花を咲かせる2人。

 その内にわかってきたことがいくつかあった。


「死んだ日にちを比べてみると、俺より先にシブ夫が逝ってるよな」

「ですが転生したのはモリ助さんの方がずっと早い」

「つまり?」

「時系列が逆転しています。その間隔もかなり時差があるようですね」


 2人分の事例しかないので確証は持てないが、どうやら死んでからいつ転生するのかは無作為に決まるようだ。

 だとすれば100年前に転生していたゴン太も向こうの世界ではシブ夫やモリ助たちと同年代を生きる人間だったのかもしれない。

 それならゴン太がスマホを持ってたという目撃証言も納得できるね……。


「ん? ちょっと待てよ。モリ助、あんたはスマホ持ってんの?」

「ああ。そういえばこっちの世界にも持ち込めてたな、スマホ」

「マジか!」

「じゃああなたもガチャが引けるのね?」

「ガチャ? さあ、知らないよ」

「なんでだよ! いじってないのか?」

「まあね。転生してすぐに売っぱらっちゃったし」


 売った!?

 スマホを!?


「うん。小金欲しさに」


 呆気に取られる一同の顔をキョロキョロと見回すモリ助。


「あれえ。俺なんかやっちゃいましたぁ?」


 ……こいつ!

 バカじゃねえの!?




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 もうこのバカ仲間にするメリットなくない?

 置いてこうぜ!


【第126話 ゴブリンガールはパスを繋ぐ!】

 ぜってぇ見てくれよな!



挿絵(By みてみん)

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