第116話 ゴブリンガールは伝説勇者を捜す!
お馴染みのザコモントリオにシブ夫・スージー・ヒューゴたち勇者を加えた大所帯、このメンツでゾロゾロと旅を続けてもうひと月は経つだろう。
その旅の目的とは『勇者ゴン太の捜索』だ。
え? ゴン太ってのは誰だって?
チッ……。
仕方がないから3行であらすじを教えてやんよ!
・ゴン太はシブ夫と同じく転生者っぽい
・不老らしいけど100年前から誰も姿を見ていない
・ゴン太を見つけていろいろ話を聞きたい
まあこんなところだね!
詳しくはメインクエスト【死神に狙われる!】(第90話~)を参照しな!
そんなこんなでアタイたちは情報を集めるために街から街へと聞き取り調査をしてるってところだ。
「それにしても……。なんでスージーとヒューゴまでついて来てんだい!」
「シブ夫くんが助けを求めてるんだから駆け付けるのは当然でしょ」
「そ、そうだぜ! 人助けこそ勇者の本業だからな!」
ふん、あんたたちの不純な動機は見え透いてんだよ!
まあアタイも人のことは言えないけどね!
「僕に付き合ってくださってありがとうございます。必ずゴン太さんを見つけ出しましょうね」
「はぁ~い♡」
そうして険しい山岳地帯を進んでいると、ふいに現れた盆地に小さな集落を発見した。
「ゴン太って人がこのルートを通ったならあの村にも立ち寄ったかもしれないわね」
「ちょっくら訪ねて回ってみるか?」
「その前に腹ごしらえしたいンだわ」
時刻は昼時。
アタイたちはひとまず村の酒場に直行した。
「へいらっしゃい」
かき入れ時だってのに店内に人はまばら。
カウンター席でだべっている常連客らしき2人組と、他には隅のテーブル席にフードを被った小柄な女が1人だけ。
と、そのフード女はアタイたちの姿を見た途端驚いたように大きく仰け反った。
そのせいで手元のコップを盛大にひっくり返した。
「ああっ……!」
「大丈夫かい? ほら雑巾」
駆け付けた店主に低姿勢で平謝りするフード女。
こんな僻地で勇者パーティを見るのは珍しいのかもしんないけど、それにしたってコップの中身をぶちまけるとは失礼な奴だね。
アタイは気に入らない女に向けてひとしきり舌打ちをしてガンを飛ばしてやった。
「さあメシだメシだ!」
気を取り直して着席し、適当に注文した料理をつつきながらこれまでに集めた情報を整理した。
「まずゴン太さんの人物像についてですが、かなり人望の厚い方だったようですね」
常に人助けに精を出し、行く先々で依頼されたクエストはひとつも断らずに解決に努めたようだ。
彼の軌跡を辿っている途中だが、すでに尋常じゃない数の町や村を救っていたらしいことが伺い知れた。
「その過程でメキメキと腕を上げ、やがてレベル90越えの、いわゆる『伝説勇者』と呼ばれる領域に達したようね」
「なんか真っ当にRPGをやり込んでるって感じだよな」
「それと、彼の外見の特徴について興味深いことが2つ」
「ひとつは、数年に及んでほとんど見た目が変わらなかったらしいってことだな」
不老不死。
これは死神シビリオの言ってた『異世界転生者は年を取らない』という特徴に当てはまる。
「そしてもうひとつが、彼が常に携帯してたという『手のひらサイズの平べったい箱』の存在ね」
そう……。
目撃情報によると、なんと勇者ゴン太もスマホらしき道具を持っていたらしいのだ。
これが本当だとすれば奴が転生者である可能性が一気に濃厚になる。
「ですが、元の世界でスマホが流通したのは僕が死ぬ10年ほど前のことです。ゴン太さんが転生したのは100年も前ですから年代が噛み合いませんよね」
「確かになあ……」
「まあ、これについてはまだまだ情報不足ってところね」
そんな話をしていた時だった。
カウンター席の2人組がおもむろに立ち上がり、隅のフード女に悪絡みを始めたのだ。
「なあお嬢ちゃんよぉ。今日こそは俺らの相手してくれよぉ」
「あんた旅人だろ? かれこれ一週間はこの村に滞在してるのに、フィールドを探索するでもなくずっとこの店に入り浸りじゃねえか。へへ、男漁りでもしてんじゃないの?」
「あ……。えっと……」
どうやら男たちは酒に酔っているらしい。
こういう面倒事には関わらないのが一番なんだけど……。
優等生スージーが黙って見逃すはずがない。
「あなたたち、やめなさいよ! 怖がってるじゃない!」
「ああん!? なんだてめえ!」
「じゃあネーチャンが代わりに相手してくれんのお?」
そこでヒューゴとシブ夫がずいと前に進み出た。
「スージー。キミは下がってろ」
「ここは僕たちが」
「チッ! 野郎はお呼びじゃねーんだよ!」
男たちは知らない。
あえてヒューゴとシブ夫が矢面に立ったのは、融通の利かないスージーに任せると死ぬより悲惨な目に遭わされるだろうことを見越しての優しさだったということに。
男たちは拳を突き出して殴りかかる。
だが勇者に敵うはずもなく、秒で返り討ちにあって床に倒れこんだ。
「こんなもんでいいだろ」
「甘いですよ先輩! 二度と不道徳なことができないように両足をもぎ取るくらいのことはしなくっちゃ!」
「それはさすがにやりすぎだと思います……」
一連の流れを呆けたように眺めていたフード女。
そんな彼女の元にシブ夫が近寄って声を掛ける。
「大丈夫でしたか? 手荒なところをお見せしてすみません」
「と、とんでもない……」
すると女はワナワナと震える腕でローブをはぎ取った。
下から現れたのはやや幼さの残る可憐な童顔。
大きな瞳をウルウルと潤わせ、頬は少し赤らんでいる。
だがその表情は恐怖から来るものとは違ったらしい……。
「シブ夫さん……。わ、私、ずっとあなたとお会いするのを待ち焦がれてました!」
「え?」
ガバリとシブ夫の両手を握りしめる童顔女。
なんだいなんだい!?
こいつ、初対面のクセに慣れ慣れしいね!
もしかしてこれって、新たな恋のライバル登場の予感……!?
つ・づ・く
★★★★★★★★
次回予告!
新キャラのクセに図々しいんだよ!
アタイとスージーを差し置いて突然のラブストーリーを始めようとは小賢しい!
こいつはいっぺん痛めつけてやらないといけないようだねえ……!
【第117話 ゴブリンガールはボディを狙う!】
ぜってぇ見てくれよな!




