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ゴブリンガールはガチャを引く!  作者: 仲良しおじさん
シーズンクエスト【クリスマスする!】編
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第99話 ゴブリンガールはソリを引く!

挿絵(By みてみん)



「あーあ。せっかく大盤振る舞いでプレゼントをばらまいたのに、釣れたのはレベル2のザコモンスターかあ……」

「うるさいっ! サンタクロースの皮を被ったろくでなしめ! お前のクリスマスはオイラがめちゃめちゃにしてやるんだからなっ!」


 退屈そうな顔をするサンタルチアに憤慨したグリ坊が食って掛かる。


「それにしても、どうしてグリンチはそんなにクリスマスが嫌いなんだ?」

「当たり前だろっ! 一年間をどんなに良い子で過ごしたってサンタは魔物のもとには来てくれない。毎年枕元に大きな靴下をぶら下げてプレゼントが届くのを楽しみにしてたんだ。なのに朝まで待ってもオイラはずっとひとりぼっち……」


 なんだか痛々しいエピソードを語り出したね。

 アタイたちも魔物だし、当然サンタからプレゼントをもらったことは無い。

 だからグリ坊の悲しい気持ちは苦しいほどに共感できた。


「言いたいことはそれだけかな?」


 サンタルチアは掲げた両手をパンパンと叩くとニッコリ笑顔でグリ坊に歩み寄る。

 そうして自分の腰ほどの背丈の魔物を舐めるように眺め回した。


「まるでヒイラギの葉のような深緑の毛並み! クリスマスツリーに吊るしたらさぞかしステキなオーナメントになるでしょう♡ ね~!」

「オ、オイラをモミの木に括り付けるって言うのかい!?」

「だって、赤と緑は定番のクリスマスカラーじゃない」

「ちなみに赤色はどこから調達するの……?」

「もちろん、あなたの口から噴き出る鮮血よ♪」


 グリ坊の顔から血の気が引く。

 サンタルチアはその震える首筋に手を伸ばし、有無を言わさずに締め上げた。


「グェッ……!?」


 屠殺されるニワトリのような短いうめきを上げるグリ坊。

 サンタルチアの怪力によって彼の体は地面から離れ、両足がブラブラと宙にもがく。


「オイ!? 何やってんだよあんた!」

「さすがに絵ヅラがヤバすぎなンだわ!」

「安心してね♪ 私の赤服は返り血が掛かっても目立たないわ~」

「その心配はしてねえよ!」


 思わずアタイたちは2人のあいだに割って入り、怪力女から瀕死のグリ坊を引き剥がした。

 憐れなことに、この毛むくじゃらのモンスターは白目をむいて時折ビクビクと体を痙攣させるだけだ。

 意識は完全にトんでるね。


「こら、このバカ女!」

「今日はイヴだぞ! もっとファンタジーな雰囲気を重んじろよ!」

「聖夜にスプラッターなんて誰も望んでないンだわ!」


 アタイたちは悲鳴に近い怒鳴り声を上げるが、当の本人はまったく聞く耳を持たない。


「うふふ。それじゃ最後の仕上げといきましょうか!」


 サンタルチアは傍らに転がっているプレゼント箱からリボンを解き取ると、それを縄代わりにグリ坊の手足を縛った。

 その体を担ぎ上げると堂々と玄関扉から外に出て、停めてあったソリの荷台へと投げ入れる。


「大した収穫は無かったわね~。さっさと場所を移すとしましょ。私のトナカイたち~! 早くソリを引きなさいよ」

「人の話を聞けっ! あんたの受注クエストは一体どんな内容なんだい!?」

「はあ~。その内わかるって言ってるでしょ~? 私のソリを引く気があるワケ? それともそこのグリンチみたいに運ばれる側になりたいのかな?」

「引きます……」


 アタイたちは即座にソリから伸びる手綱を掴んだ。


「うむ♪ それでよろしい。では出発しんこー!」




~~~


 バーンズビーンズの街を離れること数キロ。

 空から降る雪の勢いは段々と増して、地面を覆う雪厚も深くなってきた。

 だが高重量のソリを滑らせるほどの厚みにはまだ程遠い。


「ちょっと! そんなにチンタラ引いてたんじゃすぐに夜が明けちゃうじゃない!」

「んなこと言われても~!」


 アタイたちはふんぞり返るサンタルチアを乗せたソリを必死になって引く。

 だけどとっくに体力の限界は越えている。

 もうこれ以上は歩けないよ!


「チッ……。こうなったらガチャを引くよ!」

「え? このタイミングで?」

「どうせお助けアイテムなんか出るワケないンだわ」


 やさぐれるジョニーとスラモンにアタイは小声で耳打ちする。


「ソリ引きの役には立たなくてもサンタルチアの気を引く物が出るかもしれないだろ? 上手く注意を逸らしてその隙にトンズラするんだよ!」


 そうでなくても何かの間違いでSSRアイテムが排出される可能性もある。

 だとすればこのサンタ女を返り討ちにしてやれるしね。


 そっと背後を見やると、退屈そうなサンタルチアの脇で未だに白目を剥いたままのグリ坊が転がっていた。

 ……あんな猟奇女と一緒にいたらイヴを終えるまでにこっちの命がもたないよ!


 アタイたちは無言で頷き合う。

 そして懐からスマホを取り出すとかじかむ指で強引にタップした!


 虹色に輝き出す液晶画面!

 マジで来いよ! SSR!

 課金フルパワー、メイクアーップ!



~サラダ油(使用推奨レベル4)~

 ナタネなどの植物から精製した一般的な調理用の油。

 揚げ物や炒め物からドレッシングまで用途が多彩で、劣化も少なく使い勝手が良い。



 ……クソが!

 まあまあ予想通りだよ!


「あら? そんなものを取り出して何するつもり?」


 ソリの上からサンタルチアの妙に甘い声が聞こえる。


「なんでもありません」

「ちょうど良かったわ。寒さで体が縮こまってたの! それで火を起こして暖を取りましょうよ」


 こんな所で焚き木でもするってのかい?

 でも周りに落ちてる小枝や落ち葉はどれも雪に濡れてビショビショだ。


「薪が無いんじゃしょうがないわね。それじゃ、あなたたち3人でジャンケンで決めてね」

「何を?」

「もう、やだな~。燃・料・役! に決まってる~!(笑)」


 今日イチの笑みでサイコパス発言をするサンタルチア。

 ただでさえ発想が残忍なところを、ガチャのせいで火に油を注いじまったみたいだよ!?

 油だけにね!(ウマい! でもそれどころじゃない!)




 つ・づ・く


★★★★★★★★


 次回予告!


 みんな、いつも読んでくれてありがとう!

 とうとう記念すべき第100話に到達するよ!

 思い返せばいろんなことがあったね。

 はじめの頃のアタイはたったのレベル2。

 そして今も変わらずたったのレベル2。

 次回も特別なことはせず、引き続きサンタルチアにこき使われるだけだよ。

 楽しみにしていてね♪

 ……くそったれ!


【第100話 ゴブリンガールはベルを振る!】

 ぜってぇ見てくれよな!



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