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第二十五話 代行

―個体名「小池樹」の使徒スキル「代行者」の発現を承認…―

そう…あの声が聞こえた瞬間。

私の頭に数多の「願い」が流れ込んでくる

「…あ、が」

私は膝をつく。

「む?」

「え!?樹ちゃん!?」

その「願い」、人の「願い」の塊と呼ぶべきものは膨大な情報の暴力であり、私の精神を浸食する。

「な、にが」

―お主には、人々、今は探索者たちの「願い」が届いているのじゃよ…はやく「代行」しないと…お主の精神が持たぬぞ?―

…探索者たちの…願い?。

私は膨大な「願い」の全体を視る。それは一つ一つが違う、雑多な願いである…だがその「願い」達には共通点がある。それは…。

「人を越えた存在に」「人を越えた存在に」「人を越えた存在に」「人を越えた存在に」

「人を越えた存在に」「人を越えた存在に」「人を越えた存在に」「人を越えた存在に」

「人を越えた存在に」「人を越えた存在に」。

はは、探索者って奴らの願いはどいつもこいつも、似たような…そんなに人間であるのが嫌かよ…

だが…視えた、彼ら彼女らの願いが。

たしかにこんな願いは探索者たちのものだろう。

この…願いを代行?

―使徒スキル「代行者」、読んで字のごとく、人々の願いを集約し「代行」する、ようは現代社会の間接民主制の議員ようなものじゃな―

はは、議員って聞くといきなり俗っぽくなるのな。

今の私は…小池樹じゃない、ただ人々の願いを「代行」する者…。

故に…私…いや僕は…そう彼らの「願い」のしもべである僕は、彼らの願いを…代行する。

「インダイレクト・デモクラシー」

そう僕が言った瞬間、僕の体から新星のごときすさまじい光が放たれ―







「へ?うわ!?眩しいいいいいいっ!?」

私、姫川杏里は困惑している!

なんか、樹ちゃんが突然膝ついたかと思ったら強烈な光を放ちだしたの!

というかホントに眩しい!光圧すら感じられるほどに!

しばらくして光が収まる。私は慌てて樹ちゃんの方を確認する。

「樹ちゃ…て、へ?」

はたして、そこには…。

背中には一対の巨大な羽、頭には黄金の輪が浮いている。髪の毛は金色になり膝のあたりまで伸びている。服はまるで天女が纏っているようなものを…これは

「なんか、天使みたいに可愛いい樹ちゃんが本当の天使になっちゃってんだけど!」

そう、今の樹の姿は天使と形容するしかない。そんな姿になっていた。

「ふ、はははは、素晴らしい!まさか本当に覚醒するとは!」

奴が笑っている?なんで!?

うがー――――!もう何が何だかわからないよ!?





僕は彼らの「願い」を受け止め「代行」することに成功した。

さあ僕がやることはただ一つ。

「代行者なるものよ!吾輩が相手になろう、主砲斉射!」

こちらに向かって46センチ砲弾が複数飛んでくる、だが

使徒スキル「否定者」を代行…。

「否定する」

僕はただそう一言呟く。すると飛んできていた砲弾が一瞬で消失する。

「な、吾輩の砲弾が…消えた?」

そして…使徒スキル「叡智者」を代行…。

「ファイアーボール×10000…囲んで配置」

「わ、私の魔法…!?だけど規模が桁違い!?」

「な、なに!」

「君の集中防御、名の通り、一定の方向にしか防御出来ないんでしょ?なら全方向から食らわせてあげるよ」

そして10000の火の玉は中心の彼へと殺到する。

「グあああああ」

僕の目の前で大量のファイアーボールの直撃を受ける彼。

…あれ、まだ生きてるや、しぶといね。

「ぐ、吾輩は…」

「うーん」

使徒スキル「粉砕者」を代行…。

「くらえ」

僕は彼にむかって翼をふりおろし…

「粉砕せよ」

そう呟く。

「くっ集中防御!」

僕の翼と彼の障壁が衝突し…障壁が砕け散る。

「な、吾輩の無敵の装甲が!」

「はい、二発目」

僕は無防備となったかれにもう一方の翼を叩きつける。

―ドバンッ!

「ぐがっあ!」

翼が直撃し吹き飛ばされていく彼。

さて…そろそろ決めちゃおうか。

使徒スキル「核熱の使徒」を代行…。

「穿て、プロメテウス・キャノン」

彼に向けて、放つ

「な、待て、話が…アガガガッ!」

プロメテウス・キャノンは彼の胴体に大穴を開ける。

終わり…かな?

…と、突然体に力が入らなくなり再び片膝をつく。

なっ!どうした私!…て、私?

―いつものごとく…時間切れじゃよ―

背中にある巨大な翼が消えていくのを感じる。

時間…切れ…確かに、もう頭の中に彼らの「願い」はない。

「樹ちゃん!」

と、姫川がこちらに走ってくる。

っ!そういえば一条は…!

私が一条を探そうとしたその時。

「…すばらしい、全く歯が立たなかったよ」

この声…まさか

「憂国の使徒!」

やり切れてなかった…だと!?

「ふむ、第一席「神の使徒」殿からもらったアーティファクトがなければ死んでいたよ」

…どうする、まだ戦えるか?

「なに、戦う気はない」

戦う気がない、だと?

「では、転移魔法陣展開」

奴がそういうと奴と私の足もとに魔法陣が出現する。

「なっ!」

「離れて!樹ちゃん!」

「遅い!転移魔法陣起動!」

私の目の前の空間が…歪んだ。


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