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第二十一話 ボス部屋と他の探索者

500万円かぁ、この瓶一本で凄いな…

まあでも難病に対する新薬も一錠数十万くらいの値がつけられるものもあるって話しだし、たとえ一年でも若返るって効果を考えると案外適正価格かもしれないな。

それにしても500万かぁ…そうだなぁ、私立理系大の4年間の学費を8割ぐらい賄える金額だな。

…いや500万あっても大学の学費払いきれないのかよ、世知辛いなぁ。まあ物価が上がり続けているしそんなもんかねぇ。

というか私はなんで大学の学費について思いを馳せているのか、まず私は高校について考えるべきだろうな。

…高校といえば、夏休みが終わったら、中学に行かなくてはならないのか。あのスカートの制服で行くのかぁ…

…いやいやいや、私なんでスカート前提なんだ、最近、はズボンの制服を着ている女子もそこそこいるしズボンで問題ないだろう。

…いやまて私、そもそもなぜ女子目線で考えている、そもそもそれがダメだろう。

「…おい樹、考えごとをするのは勝手だが…いや、だめだなダンジョン攻略に集中しろ」

「…ハッ⁉」

いけない、いけない500万の衝撃のあまり考え耽ってしまっていたようだ。ここは魔物が闊歩するダンジョンなのだ集中しなければ。

「…ん?あれは?」

と前方の先の方になんか…巨大な扉のようなものが草原にぽつんと立っている。

「やっと気が付いたか、見えてきたぞ…ボス部屋がな」

あれが第二層のボス部屋か。

扉の後ろに建物のようなものはないが、あれだろうか、どこでもドア的な、ボス部屋につながっているのだろうか。

と、あれは

「人?」

扉の手前になんか人がいる。スキンヘッドの男性のようだが。背中にバカでかい斧を背負っている。

「お、先客がいるな、あれは…」

先客…ということは他の探索者か、そういえばおっさん以外ダンジョンで探索者と出会ったことはなかったな。

…まあ一層はともかく二層はここまで広いんだし、そうそう他の探索者とは出会わないよな。

そのまま私たちは探索者と思われる、スキンヘッドの男性に近づく。

「よう、田中さん」

一条がスキンヘッドの男性に挨拶する。田中って名前なのか、ていうか知り合いなのか。

「おう、一条に姫川に…その子は誰だ?」

田中が言う。

「紹介する、イスカリオテの騎士団の新メンバーで新人の探索者、小池樹だ」

「こんにちは」

紹介されたので取り敢えず挨拶する。

「ふうむ…新人で、イスカリオテの騎士団のメンバーだって?…しかも、まだ子供じゃないか?」

子供とは失礼な。

「…こいつは呪神武器持ちだからな、子どもだろうが、探索者だから」

「…呪神武器持ちだって?小池とやら…お前、なにを支払った」

いきなり、それを聞くか。

「…黙秘する」

「…そうかよ、まぁいい…しかし、例え呪神武器持ちだろうとこんな年齢の子どもを、執行使徒との戦いに巻き込むなんて正気じゃない」

「…でも、田中さん、アパスルの思想は放置できるものじゃない」

「ふん…だから俺はイスカリオテの騎士団、というより探索者協会があまり気に食わないんだ」

「…田中さんは、だから使徒スキル持ちなのにイスカリオテの騎士団に入らなかったんだったな」

田中、使徒スキル持ちなのか。

「ああ、俺は俺でアパスルに対抗する」

そう言って、田中は私たちに背を向けるとどこかへ歩き出す。

「小池とやらはもちろん、一条に姫川、お前らもまだ未成年で子供だ…お前らが大人の殺し合いに巻き込まれる筋合いはねぇよ…だからさっさとイスカリオテの騎士団なんてやめちまうことをお勧めするぞ」

「…田中さん」

「…ああ、あと小池」

ん?私?

「…なんだ?」

「空狼には気をつけろ…奴には何か裏がある…警戒するにこしたことはねぇ」

…空狼って、おっさん然り、この田中しかり、やたら疑われているな。

「じゃ、じゃあな」

そう言うと田中はどこかへ行ってしまった。

…しかし、なるほどねぇ。

「探索者にも色々な考えがの奴がいるんだな」

「ああ…田中さん、あの人は人格者で実力もあるんだが…探索者協会の方針に懐疑的でな…」

反アパスルの探索者でも一枚岩ではないんだな。

でも、まああの田中の言うことにも一理ある、私なんてまだ中二だし、一条も姫川も未成年だ、それを戦力に数えるのは常識的に考えれば正気の沙汰ではないだろう。古代ローマでも少年兵は忌避されていたらしいし。

…まあ逆に言えばそれだけ探索者協会切羽詰まっているともいえる。

なんせ最大戦力の空狼はなんかやたら疑われているし、あの後藤とかいう爺さんも多分、空狼をあまり信用していないのかもな。まあ空狼に関しては、力が強大すぎるがゆえに疑われているのかもしれない、案外おっさん達の杞憂かもね。

ともかく、もし空狼に何かあった時にはアパスルが本格的に動き出すらしいし。

その時のために未成年者をも戦力にするという、ある意味禁忌に手を染めているのかもしれない。

…ふむ、そう考えるとあの爺さんに春樹を預けたのは早まったか?…いやでもそれ以外選択肢がなかったのからなぁ、うーむ。


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