カパ郎には尻尾があるんだよ
間が開いて大変申し訳ありませんでした。
間が開いたので、前回までのあらすじを少し……
変態ガッパとの激しい攻防戦の末、見事芋アナとの協力タッグで勝利を収めた里緒奈。しかし、お嬢様は里緒奈の勝利を見届けると共に、ビリビリに引き千切れ宙に舞い散ったのだった―――。グッバイマイフレンド、グッバイマイフェアレディ……!!
小汚いカッパのオッサンが正座している。それだけでキツい絵面だ。
コイツがさっきまで機敏に動いていたかと思うと……。
つながった眉毛の下で、ムカつくぐらいのどんぐりまなこがキョドキョドしているのが癪に障って仕方がなかった。なんで全裸でおちょぼ口してるんだ! 肉厚なくちばし? が最高にイライラする。
何が『カパ千代』だ!
こんなのが千代も続いたら世界はメンマ臭で滅ぶに違いない。それだけは避けなくてはならない。コイツは何としても、ここ一代で終わるべき存在だ。私は至極真面目にそう思い、何とか綺麗な感じでの駆除を思案する。
新聞紙でパアンするんじゃなくて、スプレーで遠距離からコロリとか、そういう、自分の手が汚れない系が理想だ。
最近は氷結させてチリにしてしまう凄いのがある、という噂を聞いた事がある。今すぐドラッグストアかホームセンターへ行って購入したい。今のテンションなら一万円払っても良い。狙っていたワイルドお姉系ワンピース諦める。イメチェンでワンチャン狙っていたけれど、仕方がない。イメチェンでもたらされる素敵な何かが大量に削られる気がしないでも無いが、涙を呑もう。
それ程に存在がイヤ。
でも、それより先にやる事がある。
私は厳しい顔で教室の窓から入って来たカパ郎に駆け寄った。
「カパ郎……!」
「りおなっ! 無事で良かったのじゃ!!」
「……ッ怖かったッ!(マジで)」
私とカパ郎はひしと抱き合った。(わーいわーい、カパ郎~!)
コレコレ、これですヨ! とカパ郎の分厚い胸板に大変満足しながら変態に襲われた悲劇のヒロインを楽しんだ。
怖かったにゃん、怖かったにゃんよカパ郎~!!
上手に悲壮感が出せて、カパ郎は大いに同情してくれた。
ぎゅっと私を抱きしめて、
「一人にしてすまなかったのじゃ……っ!」
と、心底謝ってくれた。
私は、うんうん頷き、怯えてしがみ付くフリをしつつ、カパ郎の緩んだ浴衣の前合わせをさり気なくはだけさせ、直肌を貪った。
カパ郎はそんな私の必死さに、
「おのれ、カパ千代……りおなをこんなに怯えさせおって……っ!」
と、激怒した。私は悪くない。悪いのはカパ千代。
当のカパ千代は、カパ郎の怒りの視線を受けて、身を小さくして「げひひ……げひげひ」とゲスっぽく笑った。ゲスい小物が自分より強いヤツに媚びる演技の、お手本の様だった。
「久しぶりじゃの~、カパ郎ちゃん」
「お前はこの山から追放された筈じゃ、なにをノコノコ戻って来とるんじゃ!」
「お主のケツが恋しくなっての~、ウィッウィッ……」
「……! 貴様ぁぁっ……!!」
カパ郎が普段からは想像もつかない程激昂して、怒りに身を震わせた。
私はカパ千代が一体ナニを言っているのか、分かるけど分かりたくない様な壮絶な気持ちで、怒れるカパ郎を見上げた。
ケツ?
ケツ?
ケ……ツ……?
私はいつもノーガードのカパ郎の引き締まったお尻を思い浮かべる。
うん、確かに立派なおケツだよ。カパ郎のおケツは本当に素敵。割りばしとか絶対に折れるくらい引き締まってる。今更紹介するのもなんだケド、小さな亀みたいな尻尾がちょんと控えめに生えてて、それも可愛いんだ……。亀みたいなんだけど、毛で覆われてて、ちょっと見ようによってはモフモフしてる。ツンツンすると『くすぐったいのじゃ』って言って、ピピピッて振るの最高。雄々しさの中に可愛さとか、カパ郎のおケツ、ハイスペック過ぎる。カパ郎……カパ郎好き……。里緒奈、貴方が好き過ぎて辛い。
しかし、カパ千代が、私の様に純粋な、全くの、完全なる下心無しの心持で先程の発言をしたとは思えない。
カパ郎のおケツ目当てとヤツが言うならば『いいケツしとるのぅ、尻尾もかわゆくてイキがいいのう、辛抱堪らんぞよムヒヒ』という穢れたおぞましい思考、あるいは嗜好に違いないのだ……!!
カパ千代は男も女も見境なしなのか!?
でも、それはおかしいじゃないか。芋アナには……。
媚びている様で、カパ郎をからかっている様な、そんなカパ千代と、嫌悪としか言いようの無い表情のカパ郎を戸惑いながら交互に見ていると、窓からカパ彦がヒョイと現れた。
確かここは二階なんだけど……カッパの身体能力怖い。
「サーヤちゃんの縦笛ぇぇ」
カパ彦は窓から入って来ると、そう言ってカパ千代に駆け寄った。
おま……私の心配は!?
近寄って来たカパ彦に、カパ千代が哀れっぽい声を出した。
「カパ彦ぉ、久しぶりじゃのう。助けてくんろ」
「いやじゃ~。お主は好かんのじゃ」
「ワイもじゃ~」
なんか気の抜けたやりとりをした後、カパ彦は床に転がったサーヤちゃんの縦笛を見つけ、拾い上げた。彼は満足そうに縦笛を眺め、「あったあった」と頬ずりをした。
サーヤ笛がどこに挟まれていたかとか、どんな扱いを受けていたかは、武士の情けで黙っていて上げようと思う。
ポチャと女顔も遅れてやって来て、カパ千代を見ると「やっぱりか」という顔をして見せた。大いに面倒臭そうにしている。
わかる。
いるだけでなんか、面倒臭いよねコイツ。
「取りあえず……」
カパ郎は一生懸命理性を保っていますという様子で、教室のカーテンを引っ張った。
すると、カーテンはレールからブチブチっと音を立てて、難なく引っぺがされてしまった。
あーあー……。怒られるよカパ郎~。
でもたまに見せる荒々しさも素敵。私もあのカーテンになりたい。
カパ郎に荒々しくされたカーテンは、放送室のカーテンなだけあって、とても分厚い遮音カーテンだった。
カパ郎は、それでカパ千代をこれでもかと言う程グルグル巻きにして、ギュッと締め上げた。
「なにするんじゃ!」
「煩いのじゃ! そのまま川に放り込んでやるからの! 海の方た~まで流れていくのじゃ!」
カパ郎がそう言うと、
「重しもいるのぅ~」
「重しをしたら流れていかんじゃろが~」
と、ポチャと女顔が呑気な声で言って、カパ彦が
「前みたいに板にくくるとかどうじゃ?」
と、提案した。
皆が「そうじゃそうじゃ」と頷いた。
カーテングルグル巻きの中で、カパ千代が喚いた。防音効果が効いて、声がくぐもっている。なんか、いい気味なのだった。
「かぴゃ~!? 厭なのじゃ~! 皿が乾いて死にそうになったのじゃ~!!」
「戻って来て悪さするからじゃ!!」
「何もしてないのじゃ!!」
盛大な嘘を吐いて、カパ千代がカーテンの中でうねうね動く。変態芋虫にカパ郎とカパ彦(こちらは愉快犯)が蹴りを入れて、結構酷めにとにかく弱らせようとしていた。
カパ郎がちょっと怖い……。一体、ソイツとの間に何があったの!?
「しょうもないヤツじゃ……」
ポチャが私の横に来たので、私はひとつ頷いて、気になる事を聞いてみた。
「ね、ねぇ。アイツ、前に一体何をしたの……?」
というか、過去にカパ郎のおケツとカパ千代に一体何があったのか……。
なんだか、自分の想像が恐ろし過ぎて、カパ郎には聞けなかった。
うむ。と、ポチャは頷いて、語り出した……。
亀みたいな形のもふっとした尻尾があります。もちろん、カパ彦たちにもあります。嬉しいとフリフリしますが、パンツをはけばあるのか無いのかわからない位の小ささです。余談ですが、前は絶対的な存在感です。




