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カッパの物差し④-ポチャマッチョカッパ尋問ー

 重苦しい空気が洞窟内に漂っていた。

 カパ郎がポチャマッチョをねめつけて聞いた。


「ほんで、お前はなにしとったんじゃ」


 ポチャマッチョカッパは『無罪とかあるんだ! これは頑張らねば』と言った顔でお尻をもぞもぞさせて口を開いた。


「なんじゃ、その……昨夜の事が気になっての……朝ここに来たんじゃ」


 ポチャマッチョは私の方をすまなそうに見て言った。

 そんな目をしたってダメだ! と言いたいところだけれど、どうやら昨夜、私達のラブラブに水を差してしまった事を気にしてくれていたらしい。


「ほうしたら、おらんかったでの……気になってりおなどんとこに行ったんじゃ」


 すると、私のロッジにもカパ郎が見当たらない。


「ああ、あなたもすれ違ったんだね」

「お、オイは……カパ郎がりおなどんについてっちまったと思ったじゃ……」

「ぬあああああっ! そ、そんなのイヤじゃあ!!」

「カパ彦はちょっと黙っておれ」


 カパ郎に軽くあしらわれて涙目のカパ彦に、誰も同情はしなかった。


「……グス……二人を早まらせる様な事言ってしもうたと思っての……グス……」


 ポチャ……。

 うう、これは無罪の臭いがする。


「そ、そんな事ないよ。あなたの忠告は正しかったし、ちゃんと向き合うキッカケをくれたんだから……」

「りおなどん……ありがとうなのじゃ……グス……ほんでの、そう言えばカパ郎に春画を貸しとった気がしての」


 ん? しゅんが? しゅんがって春画? 結合描写が粋で洒落てるヤツ? 

 何だか急に話の湿り気の質がおかしくなって来た。

 それにしても、へぇぇ~……カパ郎そういうの見るんだ~へぇぇ~……。

 ……。

 う~ん。

 なんだろう。

「キャッ♡」って盛り上がれない。「キャッ♡」って。

 春画がオカズって微妙。

 私の微妙な表情に、カパ郎は真っ赤になった。


「か、返したのじゃ!!」


 あ、借りたは借りたのね。


 ポチャマッチョカッパは威厳たっぷりに首を振った。


「いんや、返してもろうて無いのじゃ! ほんだで返してもらいにここに来たんじゃ」

「それ、軽く空き巣……」

「うむ。そしたらの、誰かがやって来たので慌てて隠れたのじゃ……」

「ああ、罪悪感はあったのね」


 慌てて壺に飛び込んだポチャ、そっと壺から覗き見ると、カパ郎ではなく女顔カッパがノコノコやって来た。

 しかも、居座ろうとしている。

 これはマズイ。壺なんかに隠れるんじゃ無かった、と後悔しても後のカッパ。

 だからポチャマッチョ、女顔カッパを脅かして追い出そうとしたらしかった。


「じゃ、じゃあ、あの犬の泣き声は……」

「オイじゃ」

「酷いのじゃ! 死ぬほど驚いたのじゃ!!」


 可哀想な女顔カッパが、まさか驚き飛び上がり過ぎて天井に引っ付くとは思わなかったポチャマッチョカッパ、結局脅かしてしまった罪悪感も重なって、「よう、オイじゃオイじゃ~。奇遇じゃの」なんて出て行く事も出来なくなって……。


「そうこうしておる内にじゃの、お前達が来てヌチョムチョし出してしまったのじゃ……」


 ちょ、生々しい擬音使うな!!

 そんな音立ててない‼ 立ててないんだから!


 カパ郎が「どうする?」という渋面を私に向けたので、私は判決の為に思案する。

 不法侵入は良くない。

 女顔カッパも不法侵入だけど、彼の場合は『カパ郎を慰めに来た』と言う証言から、善意があると見込まれる。

 しかしポチャマッチョ、お前は駄目だ!

 行方の分からなくなった親友を探すよりも、春画を探しに来ているのが、その最も足る根拠である!

 加えて仲間への恐喝も極めて印象が悪い。

 恐喝をするに至った理由も罰せられて然るべきだ。

 罪を罪で隠そうとは、悪の極み!!


「ゆう……」

「ま、待っておくんなまし!! 春画を返さぬカパ郎も悪かろうにぃ!?」

「話をすり替えるでないのじゃ!! あの春画は返したのじゃ!!」

「嘘じゃ嘘じゃ! オイの家に無いのじゃ!」


 それからカパ郎とポチャはしばらく「返した・返してない」を言い合った。

 二匹が「むうぅ……」と睨み合い出してから、


「あ、それはオリ(俺)じゃ」


 とカパ彦が飄々と言って、春画の話はカパ郎が「ほらの!? りおな、俺は返したんじゃ!」と何故か私に言い訳めいた口調で言って納まった。

 てゆうか、カパ彦! またお前か!! 

 念の為にトラブルメーカー過ぎるカパ彦にも調査すると、彼は純粋にお尻に薬を塗って貰いに来た、ただのKYだった。

 本当にどうしようもないけれど、彼のおかげで私とカパ郎の記念すべき初メイクラブが公開メイクラブにならなくて済んだのは事実で、とても微妙な気分だったのだった。

 まぁ良い。なんだかぐだぐだだけど、面倒だから皆無罪!

 これにて閉廷!! 


 *


 そうして尋問タイムが終わると私達は仲良く輪になって、「まったくもー」なんて言いながらお互いにお酒を酌み交わした。

 何だかんだあったけど、カパ彦もポチャマッチョも女顔も、カパ郎が大好きなんだなぁ、と微笑ましく思う。

 きっと、私とカパ郎の将来を計る彼らのモノサシは、全部カパ郎を好きな気持ちから来るんだ。

 だったら、異なっている様で実のところ私と一緒なんじゃないかな、とぼんやり思う。


 そう思うと、ちょっと心強い反面、責任めいたものもボンヤリ感じた。

 しかし、友達に愛されているカパ郎への好感度がうなぎ登り過ぎてキュンが止まらず、どちらかと言うとコッチが忙しいのだった。

 カパ郎は春画レンタルの事をまだ気にしていて、自ら話題を蒸し返して墓穴を掘っている。


「だ、大体あんなのは絵じゃろうが……。のう、りおな! あ、あんなのはただの絵じゃ!!」

「うんうん、そうだね」


 私はカパ郎のそんな様子に萌えが納まらなかったので、ちょくちょく『春画ネタ』でカパ郎をからかおうと思います♡


 それにしても、友達っていいなぁ。

 私は仲良く笑いあうカッパ達(カパ郎は今は完璧な人間♡)を見て、うーたんを恋しく想うのだった。


春画はエロ目的ではなく、エロで笑い(洒落)を取るお遊びチックな感覚で発信されたそうです。思い切った下ネタお遊び、粋ですね。

ホモとか獣○もあるそうです。あるそうです。(あるそうです)


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