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【書籍完結&コミカライズ化】【本編・外伝完結済】剣聖の幼馴染がパワハラで俺につらく当たるので、絶縁して辺境で魔剣士として出直すことにした。(WEB版)  作者: シンギョウ ガク
獣人都市インバハネス編

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66:フリックの古傷

誤字脱字ありましたら誤字報告へ

 ズシン、ズシンという音を立てて雲鯨のゴーレムが荷馬車の後をついてきている。


 大きさ的にはディモルよりも若干大きいため、一歩当たりの歩幅があり、荷馬車の速度にも遅れずについてきていた。



 一方、シンツィアはそれまで乗っていた骨の馬を解体し、あの骨のゴーレムを動かしているため、俺たちの荷馬車の方に移ってきている。


 シンツィア曰く、俺とノエリアの近くに居た方が魔力が吸収しやすいらしく荷室でノエリアと共にゆったりとくつろいでいた。



「それで、あんたたちはその知性の高い馬を探してるってわけね」


「そうなのです。本来の目的は別にあるのですが、インバハネスのギルドマスターが困っておられたので、先にそちらを片付けようというわけでして」



 荷室ではノエリアがシンツィアに俺たちの探している巨馬の説明をしていた。


 そんな様子を見ていたスザーナが、ノエリアを気にして御者をしながらキョロキョロと荷室を覗いていた。



「スザーナ、危ないから前を向いて運転してくれるかい? シンツィア様も必要以上には魔力は吸わないって言ってたし、大丈夫だから」


「あのうさん臭い魔術師の言うことは信用できません。ノエリア様に何かあれば、私はロイド様に首を差し出して詫びねばなりませんので」



 旅のお目付け役という名目でついてきているスザーナであるため、ノエリアの周囲のことに関しては人一倍気を使っていた。



 でも、お目付け役って割には異性である俺に対して何も言ってこないんだがな……。


 もしかして平民の俺は眼中にないということなんだろうか?



 スザーナの危険視する基準がいまいち理解できない俺は首をひねるばかりであった。


 そんな馬車の旅がしばらく続き、巨馬が逃げ込みそうだと目星を付けていた森の一つが目の前に見えてきた。



 草原の中にポツンと取り残されたようにある小規模な森だが、群れが姿を隠すにはほどよい広さを持っていた。



「俺の勘だと、あそこが第一候補だが……。おっと、ディモルが何か見つけたみたいだな」



 一人で先行して様子を探っていたディモルが、何かを見つけたみたいで森の上空を旋回して鳴いているのが見えた。



「あの巨馬が潜んでいたんでしょうか?」


「だとありがたいが。とりあえず、スザーナたちはここで待機しててくれ。あんまり大勢で行くとあいつも興奮して話を聞いてくれないだろうし」


「承知しました」



 スザーナが荷馬車を止めると、荷室の二人も御者席に顔を出してきた。



「見つかったの?」


「あ、いや。まだ分からないですけど。ディモルが何か見つけたみたいです」


「言うこと聞かなかったら、あたしが骨にして使役してあげるわよ。ほら、最悪骨の上に詰め物して皮を被せとけば分からないでしょ?」



 言ってることがかなりやばい気がするが、シンツィアならやりかねない。


 実際、乗ってた混沌馬(ケイオスホース)は潰して骨にして使役してた人だしな。



「シンツィア様、さすがにそれはちょっと……。生きて捕らえるのが依頼ですから」


「ふーん、そうなの。面倒な依頼を受けたのね。ノエリア、時間かかりそうだしこの間に使役魔法の基礎理論の続きを教えてあげるわ」


「フリック様、援護はなくても大丈夫でしょうか?」


 シンツィアは巨馬への興味を失って、先ほどまで続けていた魔法理論の講義を再開したそうにしていた。


 一方、ノエリアは心配そうに俺の方を見ている。



「ああ、あいつが居るなら無駄に争わないしな。ノエリアはシンツィア様から使役魔法の要点を聞き出しておいてくれると助かる。後で俺にも指南してくれよ」



 そう俺が言うと、ノエリアの顔はパッと明るくなっていた。



「は、はい! フリック様にもきちんとお伝えできるようにシンツィア様から使役魔法の精髄を習っておきます」



 ノエリアはやっぱり魔法のことを学んでいる時が一番魅力的でいい顔をしてるな。


 あんな顔をされたら、どんな男だってイチコロで魅了されるだろう。


 俺もアルフィーネの件が無かったら、きっと魅了されてたんだろうな。



 人は変わってしまうというのを身近な存在だった者に見せられた俺としては、ノエリアとの心の距離を縮めることは古傷を開くことにもなりかねない。


 できるだけ適度な距離を保った方がお互いのためになるはずだ。



 幼馴染であり、恋人だったアルフィーネと別れ、辺境で新生活を始め、環境が変わったことで心の傷は塞がり始めていたが、ふとしたことでまた傷口が開き押し込めてた物が噴き出すのではと思うと、俺は恐怖で身震いをした。



「フリック様、どうかなされました?」



 ノエリアのアイスブルーの瞳に映る俺の顔が一瞬、フィーンだった頃の顔に見えた。



 も、もう、俺はフィーンじゃない。


 今の俺は魔剣士フリックだ。



「い、いや。なんでもない。行ってくる」


「あ、はい。お気を付けて」



 俺はディーレをベルトに差すと、馬車を降り、森に向かって駆けだしていった。


フリックさんも結構めんどくさいやつです。


アルフィーネの件がトラウマで、恋愛恐怖症っぽい感じかと。


友達としてならセーフだけど、その次は厳しそう。



ラフ画は後何個か公開できるので、ぼちぼち公開していきます。


アマゾン等ではもう予約できるので、発売日忘れそうな方はご予約等して頂ければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公様は幸福タイムの秒読みかな?ノエリアの魅了に意識してる時点で…アルフィーネが可哀想
[気になる点] 鯨の因子は何だったんです?
[一言] トラウマ克服とトラウマとの再会どっちが先かな〜?
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