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111:襲撃者の正体

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 光が見えた地点に上空から近づいていくと、森の中で新たな煌めきが見えた。


 敵は遠距離からの攻撃をしてくると思い、すでに飛んでいるディモルを包むように空気壁(ウィンドバリア)を展開していた。


 煌めきのあと、飛来物避けに展開していた空気壁(ウィンドバリア)が一気にひび割れて効果を失う。



 一発で、こっちの空気壁(ウィンドバリア)の効果を剥ぎ取ってくるのか。


 魔法……って感じじゃなさそうだけど……。


 超高速で撃ち出された弓矢か?



 俺は新たに空気壁(ウィンドバリア)を詠唱しつつ、相手の攻撃手段がなんなのかを考えていた。


 けれど、相手はそんな時間を俺に与えてくれなかった。



 地上で連続した煌めきが発生すると、空気壁(ウィンドバリア)は割れ、飛翔体がディモルの身体を掠めて抜けていくと、音が遅れて聞こえてきた。



 音よりも速く飛ぶ矢なんてあるのかよっ!


 やばい、このままじゃディモルがいい的にされちまう。



「ディモル、ここじゃ狙われるだけだ。相手に狙いを絞らせないよう一気に地上付近まで急降下するぞ」


「クェエエ!」



 ディモルが返事をすると、地面に向けて一気に急降下する。


 相手はこちらの挙動を予想していなかったようで、飛んできた飛翔体が先ほどまでいた場所を通過していったのが見えた。


 地上スレスレにまで降りると、煌めきを発した場所に眼を凝らす。



 何者の姿もないんだが……。


 光っていたのは、あそこのはず。



 俺はこちらや村を攻撃したであろう敵の姿を視認できずにいた。


 相手の姿がないことを奇妙に思いながらも、煌めいた場所に向け確認のための火球(ファイアボール)を撃ち込んでみることにした。



「熱く燃えたる火の球となりて我が敵を焼き尽くせ、火球(ファイアボール)



 発動した火球(ファイアボール)が煌めきを発していた場所へ飛んでいくと、見覚えのある赤い光が木陰から見えた。



 あれって、アビスフォールや鉱山のアビスウォーカーが使ってた武器の光!?



 そう思った瞬間、俺の放った火球(ファイアボール)は目標地点に着弾することなく大爆発して周囲に暴風をまき散らしていた。



 あの光……あそこに潜んでいるのはアビスウォーカーってことか。


 なんで俺の村にアビスウォーカーがいるんだよ。


 村人たちは定期的に山に入って、アビスウォーカーが侵入してないか確認してるはずなのに。



 俺が見えない敵の存在に気付いたことで、ディモルの胸もとに例の赤い光が狙いをつけてきた。



「ディモル狙われてる! 俺が前に出るからお前は回避してくれ!」


「クェエエ!」



 俺はディモルから飛び降りると、再び火球(ファイアボール)の詠唱を始めていた。



「熱く燃えたる火の球となりて我が敵を焼き尽くせ、火球(ファイアボール)



 赤い光は急上昇したディモルを捉え切れず、光の筋だけを残し不発に終わる。


 その間に俺の放った火球(ファイアボール)は、敵が潜んでいると思われる場所に着弾して爆発をしていた。



「な、なんだよ。アレ!?」



 火球(ファイアボール)が効果を発揮した場所に、青白い光を纏った人の姿が浮かび上がっていく。


 ただ、四人いるうちの三人は人の形こそしているが、人というには巨体すぎた。



 四人が纏っていた青白い光がおさまると、そこには一つ目の化け物と白い衣服とマスクをつけた若い男が現れた。



「クソっ! さっきの炎の魔法のせいで外套の持つ光学迷彩の機能が一時的にダウンしたかっ! ジェノサイダー、あの男を迎え撃て! 抗体研究には肉片の一つさえ残っていれば大丈夫だからな。同胞の仇であるあいつを全力で叩き潰せ!」



 姿を現した若い男がこちらに敵意を示し喚くと、背後にいた一つ目の巨大な怪物がこちらに向けて動き出した。



 後ろのはアビスウォーカー!?


 にしては今まで見たのよりも巨大すぎるし、見た目も違い過ぎるが……。


 男はジェノサイダーとか言ってたけど、新種のアビスウォーカーってことじゃないよな。



 不気味な姿をして近づいてくる化け物に一抹の不安を覚えながらも、俺は腰からディーレを抜き放つ。



『お仕事の時間ですか? まだ、夜ですよ。ふぁぁああ』


「ディーレ、寝ぼけてる時間はないと思うぞ。見て見ろ、あいつら、なんか嫌な気配がしてる」



 眠っていたと思われるディーレが、眠そうな声で応えてきたので、相手の姿を確認させて眼を覚まさせる。



『っ!? こ、こわっ なんですかっ! あの化け物!?』


「村を襲ってきた連中だ! このまま放置すれば村が壊滅する。俺たちでアレを退治するんだ。やれるよな?」



 改めて構え直すと、俺の問いにディーレは応えた。



『りょ、了解です! マスターとなら、こわい怪物もよゆーです! ちなみに魔力全開で使っていいですか?』


「ああ、惜しんだらこっちが消されそうだしな。全力で行くぞ!」


「了解! ガンガン行きます!」



 ディーレが近寄ってくる怪物に向け牽制するための魔法の高速詠唱を始めると、俺も同時に身体強化魔法を詠唱し戦闘能力の増大を図っていた。


本日も更新を読んで頂きありがとうございます。


今週も平日毎日更新で王都編進めていこうと思いますのでよろしくお願いします<m(__)m>


コミカライズ版もニコニコ静画様で100万再生を達成し、コミックの方もたくさんの方が購入して頂けているようで原作者としてホッと安堵しているところです。


書籍版2巻も10日には店頭に並ぶと思いますので、コミックス①巻ともどとにお手に取ってももらえれば幸いです。


それでは今週もよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] あーあ、なんで光学迷彩あるのに最大戦力のところから闇討ちしないんだー 敵もアホかよー
[一言] 緊張感ある様な場面でもコメディに持っていくのな
感想一覧
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