110:襲撃
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夜が更けて、孤児院の一室で眠りについていたら地面がわずかに震動するのを感じ目が覚めた。
地震か?
それにしてはおかしな震動だが……。
睡眠に関してはアルフィーネとの共同生活や冒険者生活のおかげか、俺は短時間の睡眠で眠気が取れるため、大半の睡眠は浅い状態だった。
また、揺れた?
爆発したような音も聞こえたけど、これって地震じゃないよな?
気になって目を開けると、窓の外が明るく光るのが飛び込んでくる。
光源のない田舎の村が夜更けに明るいわけもなく、いやな予感にさいなまれた俺は寝床から飛び出すと窓との外を見た。
「火事かっ!?」
視線の先では民家が炎を上げて燃えており、村の中を煌々と照らし出していた。
燃える家を見ていた俺の視線に、山の近くの森の中から何かがきらめくのが見えた。
なんだあの光?
あんな場所に光る物なんてなかったよな?
煌めいた瞬間、光る物が射出され、孤児院に近い民家に当たると爆発して炎上していた。
こ、攻撃!? 誰かが村を襲ってる!?
爆発の衝撃で孤児院の窓が音を立てて割れる。
「フィーン兄ちゃん、なんか騒がしいよぉ……」
さきほどの爆発で子供たちも目が覚めたようで、ベッドから起き出してきていた。
「みんなをすぐに起こして、院長先生たちの部屋に集まっててくれるかい。俺は外の火事を消しに出てくるけど、院長先生たちがいいって言うまで大人しく待ってて」
「火事? 手伝わないと!」
成人間近の子が火事と知り手伝いを申し出てきた。
けれど、外にはこの村を襲っている正体不明の者たちがいる。
「ダメだ。誰かがここを襲ってて危ないから、大人しく院長先生たちのところで待っててくれ! 頼んだよっ!」
「あ、うん。分かった! フィーン兄ちゃんは大丈夫だよね?」
「ああ、俺は大丈夫だから。小さい子たちを頼む」
成人間近の子にそう告げると、すぐに近くに立て掛けてあったディーレを腰に差し、外套を羽織ると、炎があがる外へ駆け出した。
「フリック様!」
孤児院の外に出ると、ノエリアたちも事態に気付いていたようで、別棟から飛び出してきていた。
「ノエリア、スザーナさん、村が襲撃されてるみたいだ!」
「襲撃ですか!? 爆発したとは思ってましたが」
「山のふもとの森から攻撃してきてる。俺はそっちを叩くから、ノエリアは民家の火を消してもらっていいかい?」
ノエリアは燃える民家の様子を見て、小さく頷き返してくれた。
「なら、あたしはノエリアのお手伝いするわ。何にもない村だけど、数少ない友達が住んでる村を廃墟にするわけにもいかないからね」
騒動に気付いたシンツィアの骨の鳥が、孤児院の中からパタパタと飛び出してくるとノエリアの肩に止まった。
「ノエリア、ちょっと魔力借りるわよ」
肩に止まったシンツィアの骨の鳥が、詠唱を始めると地面が盛り上がり、土のゴーレムが数体生成された。
「ゴーレムですか? わたくしに護衛は……」
「救出用よ。救出。まだ民家に取り残されてるかもしれないでしょ。ゴーレムなら火の中でも問題なく行動できるし、視界も共有できるから使うの。危険個所の捜索肩代わりは使役魔法基礎中の基礎よ」
「なるほど、そういうことでしたか」
「フリックも危なそうならゴーレムをちゃんと使いなさいよー。じゃあ、あたしたちは火を消すから、ちゃっちゃっと村を襲う不埒な連中を懲らしめてきなさい」
シンツィアはそう言うと、ノエリアとともにゴーレムを引き連れて燃え上がる民家に向かった。
「分かってますって」
消火に向かうノエリアたちを見送っていると、傍らにいたスザーナさんが俺の袖を引っ張った。
「私は村人の避難を誘導させてもらいます。石造りの孤児院なら延焼することもないでしょうし、こちらへ村人の方々を収容させてもらおうかと」
「分かった。院長先生たちに頼めばきっと収容の手伝いをしてくれる」
「承知しま――」
スザーナが村人たちを誘導しようと駆け出そうとした瞬間、馬小屋からいつの間にか脱走していたディードゥルが彼女を咥えて駆け去っていく。
「ディードゥル、スザーナさんの護衛頼む」
駆け去るディードゥルは了承を示すいななきを返していた。
「さて、ディモル。相手は遠距離から攻撃してくる連中だから一気に空から近づくぞ」
「クェエエ!」
ディードゥルと一緒に馬小屋から出てきたディモルの背に乗ると、飛び上がらせて煌めいた場所があった森へ急行することにした。







